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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2009年11月14日

東京モーターショーの評価

2年に一回開催され、最新の技術や未来のモビリティに触れることの出来る『自動車の祭典』である東京モーターショーが、10月24日から11月4日の計12日間(一般公開日のみ)で開催されました。
フランクフルト/デトロイトと並ぶ、世界三大モーターショーのひとつですから、自動車ファンである私も前回に引き続き行ってきました。
私の感想は最後で述べるとして、さてその東京モーターショーですが、前回(2007年)と比べ参加企業数が241社から110社へ、来場者数が142万5800人から61万4400人とそれぞれ激減したことから、「昨年来の世界的不況による自動車産業全体の衰退」が多くのメディアで言われています。
また、上海モーターショーが東京より5日間も短い開催日で1500社の参加企業と60万人の来場者を集めたことから、「自動車産業における日本と中国の逆転(メーカーもユーザーも)現象」にも注目が集まっています。
米国ビックスリーの凋落で、トヨタが名実ともに世界No.1の自動車メーカーになったはずなのですが、この状況はなんとも情けないことです。
しかし、ここで考えていただきたいのです。
日本の自動車産業は、既に成熟産業(あえて悪く言うと『衰退産業』)なのでしょうか。

私は「そんなことない。安心して良い」という立場です。
日本の自動車産業のグローバル環境での競争力はまだまだ高いし、特に環境分野に関しては世界最先端を走っています。
実は、東京モーターショーの凋落を伝えるメディアの多くは伝えていませんが、最近の世界のモーターショーは以下のような状況なのです。
◆フランクフルト
 会期:11日間
 出展企業:750社
 来場者数:85万人
◆デトロイト
 会期:9日間
 出展企業:130社
 来場者数:65万人
◆上海
 会期:7日間
 出展企業:1500社
 来場者数:60万人
◆東京(2009)
 会期:12日間
 出展企業:110社
 来場者数:61万人
◆東京(2007)
 会期:16日間
 出展企業:241社
 来場者数:142万人
いかがでしょう。
こうして見ると、確かに東京は減少傾向ですが、他のモーターショーと比較してそんなに「ひどい」状況とは言えないのがおわかりでしょう。
上海とのみ比較したり、前回からの減少にのみ着目するのは、他の重要な視点を見落とすことになります。
うがった見方をすれば、“意図的に”見せる情報を選別しているとすら言えるでしょう。
このブログでも何回か言っているように、我々はこうした“意図的なデータの見せ方”にもっと疑問を持つべきです。
少なくとも、「他にこういうデータも見てみたい」と考えて、情報に踊らされずに自分の頭で考えることを意識すべきでしょう。

さて、情報の疑い方だけ語っていても仕方がないので、今回の東京モーターショーに対する私の感想もお話ししたいと思います。
私自身は、前回(2007年)より満足度は高かったように思います。
「金をかけられないため展示が地味」という評価もあるようですが、その分各社とも頭を使って工夫していたのが印象的でした。
特にトヨタブースでのライヴコンサートと、ホンダのメインステージは、「来て良かった!」と思えるものでした。
ブースに点在するトヨタ車の傍らに、ギターやヴァイオリンのプレイヤーが陣取り、一曲を一斉にプレイする様は、通常のコンサートでも見られない面白いパフォーマンスでした。
今回トヨタ車の目玉でもあったスバルとの共同開発車『FT-86 Concept』の横でハードなギターソロを決める女性ギタリストを目と鼻の先で見ることができるのですから。
ホンダのメインステージでは、新型車や今後の方向性(たとえば環境対応等)をドラマ仕立てで見せる、というよくあるパターンではなく、ホンダのアイデンティティである「ないものをつくる」をコンセプトに、歴史観までも感じさせるパフォーマンスを見せてくれました。
モーターショーのステージで泣きそうになったのは初めてです(笑)
メーカーからの提案という視点で見ると、CO2削減等環境対応に対する考え方が、今まではハイブリッドや電気自動車(EV)一辺倒から変わってきていると感じました。
特にマツダとダイハツが、エンジンの燃焼効率の向上や車体の軽量化という、地味ではあるが非常に現実味のある形で低燃費を指向しているのが印象的でした。
これらはほんの一例です。
日本の自動車メーカーはまだまだ元気であり、各社強い危機感を持って知恵を絞り、他社や他の業態との差別化を図ろうとしています。
確かに自動車産業の置かれた環境は厳しいと思いますが、私は「これならまだまだ日本の自動車産業は大丈夫」との感を強くした一日でした。

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