KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2010年07月02日

ブレストがうまくいかない理由とその対処

「ブレーンストーミングって難しい」
ファシリテーションの研修などで時々こうした声を聞きます。
自由に発想を拡げて、様々なアイデアを出してほしい。
そして他人のアイデアに触発され、また新たなアイデアを発想してほしい。
斬新なアイデア、ひとりでは思いつけないアイデアを!
こうした場面でよく使われるのがブレーンストーミング、通称ブレストです。
でも、なかなかうまくいかない。
なぜか?
私は、それには段階別に大きく3つの理由があると考えています。

まず一番目の理由が、「ブレストのルールが守られていない」からでしょう。
ご存じの方も多いと思いますが、ブレストには守るべき4つのルールがあります。
「批判厳禁」「自由奔放」「質より量」「改善・複合歓迎」ですね。
どのアイデアが良いかはどうせ後で考えますから、一切の批判を禁じ、常識や経験則もいったんリセットしてとにかくたくさんのアイデアを出すことが重要です。
たくさん出れば、それだけ良いアイデアがその中にある確率が高まります。宝くじと同じ。
またたくさんのアイデアを出すことにより、それだけ触発が生まれる確率も高まります。
そして人のアイデアを少しイジって自分のアイデアとして出すのもアリだし、人のアイデアを組み合わせて自分のアイデアとして出すのもアリ。「誰の手柄」なんてことは考える必要はないのです。
これがブレストのルール。
まずこれをブレストの最初にしっかり説明し、守ってもらわないとブレストにはなりません。
しかし、これらのルールを守ればブレストがうまくいくとは限らないのが辛いところ。
なぜならば、「なんでもどうぞ」と言われて「はいそうですか。では○○なんてどうでしょう?」とポンポンとアイデアを出すほど人間は単純ではないからです。
「自由に好きなことを言え、と言われてもなあ。部長の前で言えないよこんなこと」
そう、いかに「ルールがあなたを守ってくれますよ」と言われても、「そう言われても100%信用できない」と考えてしまうのです。特に上司やイマイチ好きではない人がいた場合に。
これが二つ目の理由です。
だからファシリテーターは、何を言っても大丈夫な「本当に安全な場」を作らなくてはなりません。
だから人選も重要。上下のないフラットな関係の人を集めたり、斬新なアイデアを好む上の人を呼んだりするのも効果的です。
また、跳んだ発言の多い、所謂“変わり者”を呼んでおき、最初にその人に跳んだアイデアを出してもらって、それをファシリテーターが「面白い!そういうのを待ってたんですよ!」と少しオーバー目に褒めるのもひとつの手です。
そうすることで「本当になんでも言っていいんだ」と他の参加者が気づき、まさに自由な雰囲気がそこに生まれます。変わり者の発言を呼び水に使うわけですね。
変わり者がいなければ、ファシリテーターが「たとえばね・・・」とあえて跳んだアイデアを出してその役割を代行すれば良いのです。
意見を「口頭で発言」させずに、「書かせる」のもひとつのテクニックです。
ポストイットに書かせ、それをファシリテーターが回収して読み上げながら壁(やホワイトボードなど)に貼っていけば誰の意見かはわかりませんから、なんでも言いやすくなるわけですね。
ただ、このやり方では触発は生まれませんし、「改善・複合」もできませんから、もう一度書かせるなどの工夫が必要でしょう。
他にもあるはずです。とにかく「どうやったらここが安全な場だと思ってくれるか」を考えましょう。
さて、これでブレストはもううまく・・・いくとは限りません(笑)
ブレストのルールが守られ、何を言っても大丈夫だと皆がわかっているだけでポンポンとアイデアが出せる人は、そう多くはないからです。
『アイデアを思いつくスキル』には個人差があるからであり、これが三番目の理由です。
ブレストに慣れていなかったりすると、「うーん」と考え込んでしまうわけですね。
こうした時こそ、ファシリテーターの腕が問われます。
ここでは4つほどご紹介しましょう。
(1) 何らかの切り口で分けて考えさせる
 「なんでもどうぞ」では、「どこから考えればいいのか・・・」となってうまく考えられない場合があります。そういう時は、考える範囲を狭め、表やツリー図を書いて「ここから考えましょう」と提示してあげましょう。
 「社内だけで出来ることと社外の誰かと組んでできることに分けてみましょうか。まずは社内だけで~」などがその例です。
(2) 立場を変えて考えさせる
 我々はどうしても自分や自社の立場でモノを考えがちです。「では競合他社の営業マンになったつもりで~」とか「今度はこういうお客様の立場に立って~」など、他人になりきって考えさせるのも、今までにないアイデアが生まれやすくなります。
 時にはモノになりきってもいいのです。擬人化法、擬物化法とも言います。
(3) SCAMPER法で考えさせる。
 長くなるのでここでは詳細な説明は省略しますが、これはブレストの生みの親であるオズボーンの「発想のチェックリスト」をエバールが整理したもので、7つの視点で発想を支援するツールと言えます。
 たとえば“E”は「Eliminate(削る)」という視点で、「あえてどれかの機能を削ると?」とか「あえてこのお客さんを諦めると?」のように、普通ではやらない考え方を強制的にやらせることで、斬新な発想をさせようという手法です。
(4) 五感を使って考えさせる
 思考はアタマとコトバを使うのが普通ですが、それだけに頼らずに音やイメージなども総動員してみようという考えさせ方です。
 たとえば駅弁のアイデアを考えているのであれば、「どんな匂いがすると電車の旅に合いますか?」とか「電車の音から発想してみましょうか」「どんな風景が見えますか?そしてその風景に合うのはどんなお弁当でしょうか?」などがその例です。

他にもいろいろあるはずです。
どうやったら参加者達が考えやすくなるか、それを考えましょう。
ただ、あまりやりすぎると誘導的なファシリテーションになってしまいますので、テーマ、参加者、場の状況を見極めた上で使ってみてください。

では、あなたのブレストの成功を祈っています!

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