ファカルティズ・コラム
2010年06月25日
全世界が非論理的思考だった
最初にお詫びから。
「岡田監督、日本代表の皆さん、そしてサッカーファンの方々、以前のエントリーで『目標をベスト4にしたことで予選突破もなくなった』と言って申し訳ありませんでした!」
「世界を驚かせる」と言ったのは岡田監督ですが、私も本当に驚きました。
まあ、私以上にカメルーンやデンマークの監督、選手は驚いているでしょうが(笑)
さて、今大会で日本代表の活躍以上に驚いたのが、イタリアとフランスという前回の決勝を争った2チームの予選敗退でしょう。
それも両チームともグループ最下位とは・・・
ということで、今回は日本代表の快勝&予選リーグ突破の余韻が冷めぬうちに、この「日本の躍進と強豪の敗退」について少し考えてみようと思います。
なぜ日本は予想を覆し、格上と見られていたカメルーン、デンマークに勝利することができたのか。そしてイタリアとフランスはなぜ1勝もできなかったのか?
様々な情報を総合すると以下のような感じでしょうか。
◆中村俊輔を外し、本田と松井の突破力に期待した布陣に変更したことにより、日本の強みである俊敏性を活かしたサッカーができた。
◆先発を外された選手達も腐らず、サポートに徹したことで、チームの一体感が高まった。
◆それに対し、フランスは戦前からチームの不協和音が表面化し、一体感を欠いた。前回大会のジダンのような求心力も無かった。
◆イタリアは主力選手の故障が痛かったが、そもそも故障がちなベテランに頼らざるを得ないほど世帯交代が進んでいなかった。
◆日本はとにかく初戦に勝ったことで余裕を持って戦えるようになり、逆にフランスやイタリアは初戦を負け/引き分けたことで次戦へのプレッシャーが高まって実力が発揮できなくなっていった。つまり好循環と悪循環の差。
私はJリーグもほとんど観ない「にわかサッカーファン」ですから、専門的な分析は詳しい方にお任せします。
また、特に日本とフランスとの比較で語られる「チームプレイの差」についても、既に多くの方が解説していますから、ここでは触れないこととします。
しかし岡田監督の「サッカーがチームプレイであることを証明したかった」は、ちょっとカッコイイですね(笑)
では、私はこの事実を目の当たりにして何を考えたのか?
それは、
「そもそも、どこが勝っても不思議じゃないくらい力の差は小さくなっているのでは?」
ということです。
ちょっと考えてみてください。
日本代表が「過去最弱」と言われていたのはなぜでしょう?
それはたぶん、「直前のテストマッチで4戦全敗」「率いるのがオシムの代役の岡田監督」「中田・中村・小野・稲本という海外で活躍中のスター不在または力落ち」というのが根拠だったのでは?
もちろん実績、特にテストマッチという直前の実績は「強さ」を測るのには好都合です。
特に今までお互いに切磋琢磨してきた韓国代表とのテストマッチでの惨敗は、「だめだこりゃ」と思わせるには十分のデータです。
しかし、こうした「複数の観察事項(データ)から結論を出す」という『帰納的論理展開』で導き出されるのは、あくまでも推論であり仮説です。
仮説は仮説でしかなく、それが事実である保証はどこにもないのです。
「たぶん日本は弱いのだと思う」というレベルでしかありません。
それなのに私たちは、メディアで専門家達(および市井のサッカーに詳しいお茶の間評論家達)が述べるこの仮説を「正しいもの」と思い込んでいたのではないでしょうか。
「岡田監督だからダメ」という論調にしても、そこに「サッカーの指導者は外国人でなければ」という固定観念を「ルールに照らし合わせて結論を出す」という『演繹的論理展開』のルール(前提条件)として位置づけていたからではありませんか?
確かにオフト監督で「ワールドカップまであと一歩」、トルシエ監督で「ロシアを下してグループリーグ突破」という事実はあるものの、この程度のデータで「日本人が監督ではダメ」と言ってしまうのは、いささか早計では?
つまり、私たちが「今回の日本代表は過去最弱」と結論づけていたのは、「帰納的に導き出した仮説を事実だと思い込む」「演繹的論理展開の拠り所となる前提条件に、根拠がしっかりしていない一般論や俗説を使ってしまう」という、『非論理的思考を引き起こす罠』にすっぽりはまっていたからだと思うのです。
さらに、「スター不在」という点に関しても、中村・稲本を除いても海外リーグ経験組は決して少なくはありません。
中田や中村が相次いで海外移籍し、活躍した時はそれが物珍しかったために大きく報道されていただけで、現代表の松井や長谷部も中田や中村に劣らない活躍をしているのです。
つまりこれに関しては、「情報不足」が招いた固定観念と言えるでしょう。
さて、こうして考えていくと、いかに私たちが日本代表に対して抱いていた「過去最弱」という評価が、非論理的だったかがおわかりいただけるはずです。
これは同様に、イタリアやフランスに抱いていた「予選突破は確実」という評価も非論理的な評価だったということです。
「イタリアやフランスが負けるわけがない」
たぶん両国民や全世界のサッカーファン、そしてイタリアとフランス代表もそう思っていたことでしょう。
そしてカメルーンやオランダ、デンマークの代表達は、「日本が強いわけがない」と舐めていたのでしょう。
だからこそ日本は予選を突破できたとも言えます。
その意味では、私たちも含め、「全世界が非論理的思考」をしていたことも、日本代表の勝因のひとつなのかもしれません。
私は日本が勝てたのは「タマタマ」だと思っています。
そしてイタリアやフランスが勝てなかったのも「タマタマ」だと。
さらに、躍進めざましく今回も期待されていたアフリカ勢がガーナを除き敗退したのも。
それだけサッカーの実力は伯仲しており、一発勝負のワールドカップでは、番狂わせもしばしば起こりうると思うのです。
しかし朝3時から起きていると眠いです(笑)
これからファシリテーションの講座なのに・・・
眠気覚ましのドリンクを飲んで頑張ります。
最後まで集中力を切らさずに走り続けた、日本代表に恥ずかしい講義はできませんから。
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