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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2010年06月18日

読むべき本の見つけ方

週に1~2回は丸の内の丸善をのぞきに行くのですが、ビジネス書のコーナーはいつも大賑わいです。
また、行くたびに新刊が出ており、平積みの本も毎回変わっているようです。
所謂『もしドラ』(「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」)やツイッター本のヒット、またビジネス本の書評ブログも大人気も後押しし、ビジネス本ブームとも言える状況です。
(しかしこの新刊ラッシュがパイ(読者)の奪い合いを激しくし、売れ残り→出版社の利益悪化という負のスパイラルとなっていることが、出版不況の大きな要因なんですよね)
さて、こうした状況を生み出している要因の一つに、「ヤバい。自分も勉強しなきゃ取り残される」という読者サイドの意識があります。
確かに勉強することは大切です。
特にこうした経済状況と雇用状況下では、以前のような「会社が守ってくれる」ことは期待できませんから、「自分の武器を持つ」ことで自衛する、または積極的に攻めに出ることが必要です。
そのためには本から得る知識やスキルが武器になるわけですね。
しかしそう考えると、「何を武器として持つべきか」が重要なのは明白。
自分に合った武器、つまり自分の置かれている状況、自分の志向、得意/不得意分野に照らし合わせた「自分の読むべき本」を読むべきでしょう。
ところが、残念ながら「手当たり次第に読む」人が少なからず存在します。
闇雲に本を読み、「勉強した気に」なってしまいます。
しかし本を読んで何かが変わらなければ、それは勉強したとは言えません。
「意識と行動の永続的変容」こそ学習なのですから。

そしてそうした「手当たりしだいに本を読む」方々が参考にしているのがAmazonのランキングであり書評ブログです。
参考にする程度であれば問題はありませんが、中にはそれらに依存している人もいます。
しかし私は、Amazonのランキングや書評ブログは「読むべき本を見つける最初の段階」ではあまりアテにしない方が良いと考えます。
売れてる本やパワーブロガーが褒めた本は、本当に「あなたの読むべき」本でしょうか?


ここで私は、声を大にして「みんなと同じ本を読んでも差別化できない」と言わせていただきます。
ランキング上位や他人のオススメの本を読むということは、「流行の後追い」に他なりません。
この時点で出遅れていることを自覚すべきです。
「置いて行かれないようになんとか付いていく」ことが精一杯であり、「追い抜く」「先頭を走る」ことはできないのです。
そして差別化とは「他者と異なる尖り方をする」ことが必要条件であることも意識すべきでしょう。
「みんなが読んでいる」ランキング上位の本で武装しようとすると、角が取れたマルになってしまって尖ることはできないのです。
それと、これはあまり大きな声では言えません(笑)が、書評系のパワーブロガー達の過去と現在のエントリーを比較すると、彼らが大量の本を読むことで大きく成長したようには残念ながら見えないのです。
もちろん「やはり文章のキレが2年前より鋭いな」という方もいらっしゃいますが。


さて、
「手当たりしだいにビジネス本を読むのをやめよう」
「ランキングや書評ブログに頼りすぎるのをやめよう」
これが私の主張ですが、「じゃあ、どうやって自分が読むべき本を見つければいいの?」に答えなければ、ただのイチャモンでしかありません。
またもや前置きが長くなりましたが、ここからは「読むべき本の見つけ方」について、2つの方法をご紹介しましょう。


1.twitterの活用
twitterで大人数(数百人以上)をフォローしている方はおわかりのように、タイムラインを大量の情報が通り過ぎていきます。
でもそんな新幹線の車窓から景色を見ているような状況でも、自然と目に付く情報があります。
「ピンとくる」瞬間ですね。
テキスト情報が「耳に引っかかった」わけですね。
そこからgoogleやWiki、Amazonを使って「それに関係する本」を探してみましょう。
目の前を通り過ぎる大量の情報の中から「ピンときた」情報は、実はあなたが潜在的に気になっている分野やテーマなのです。
だからそれこそが「アタマでなくカラダが読めと言っている本」を教えてくれます。
ただしこれは前述の通り「たくさんの人をフォローしている」方専用の見つけ方ですが。


2.本を書く
正確に言えば、「自分で本を書くことを想定し、本を完成させるために必要な本を探す」というやり方です。
「人に教えるのが一番勉強になる」とよく言いますよね。
だから教えるための講義資料を作るつもりで、自分で本を書いてみるのです。
もちろんそうした出来上がったものを本当に出版して印税生活、は難しいでしょう。
しかしここで重要なのはできた本(原稿)ではなく、それを書くプロセスです。
誰しも本を書きたい、つまり問題意識を持っているテーマはあるはずです。
それは「プロジェクトマネジメントのコツ」かもしれないし、「イオンエンジンのグローバルマーケットでの拡販」かもしれません。
さて、その具体的な進め方ですが、本を書く時にまずすべきなのが『目次作り』です。
自分の書きたい内容を各章のタイトルも考えながら箇条書きで整理してみましょう。
これ、実は「自分の知識の体系化」です。
アタマの中にある、あるテーマに関する膨大な情報を整理しているわけです。
いかがでしょう。もうこれだけで仕事にも直結し、かつ自身の能力強化にも繋がるような気がしてきませんか?
私も2冊ほどビジネス書を書いてきましたが、最初に出版社から言われるのが「目次案を作ってください」という依頼です。
書きたい内容はアタマの中にありますから、それを目次という形で整理・体系化する作業がいかに重要かは私もやってみてわかりました。これをやらないと流れもおかしくなりますし、同じ内容を複数の章で述べてしまうことにもなりかねないからです。
ああ、テーマは「読むべき本の見つけ方」でした。
申し訳ありません。話を戻します。
このように本を書くつもりで目次を作っていくと、ある章や節で「ああ、でもここはまだ自分には書けないな」ということに必ず気づきます。
これ、実は「ここを書くには足りない情報がある」ことが見えてきた瞬間です。
では、書くためにはどうすれば良いのでしょう?
はい、情報を集めれば良いわけです。
ではどうやってその情報を・・・本を読めばいいだけの話ですね。
ここからはAmazonの出番です(笑)
このように、目次作りはあなたが本当に読むべき本を教えてくれます。



繰り返しになりますが、「勉強したい」という意識は凄く大切です。
それすらも持っていない人が多いわけですから。
ただ、闇雲に本を読んで勉強しようとしても混乱するだけです。
「情報がほしい」「自身を変えるきっかけと刺激がほしい」だけなら、本を手当たりしだいに読むより、私はtwitterの方が効率的だと思います。
そして「本当に自分を差別化したい」のであれば、「自分が読むべき本を読む」ことがポイントです。
今回の2つの方法、試してみませんか?
どちらも「読むべき本を見つける」以外にも、「twitterでの効率的情報収集」や「アタマの整理」という一石二鳥も狙えるオススメの方法です。
そしてあなたの「オススメの本の見つけ方」があれば、私のtwitterアカウントに対してつぶやいてみてください。

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