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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2010年07月23日

パーソナルブランディングをフレームーワークで考える

『パーソナルブランディング』という言葉を最近よく耳にするようになりました。
企業や商品などと同様に、「個人としてもブランドを確立しよう」ということです。
具体的に言えば、「この人がいてくれないと」と仕事やプライベートにおける関係者に思ってもらえるようになることでしょう
そう考えると、「要は自身のコアコンピタンスを活かして差別化するってことだから、別に新しくも何ともないのでは?」と思われるかもしれません。
私も最初はそう考えました。
しかし、ビジネスにおけるブランディングのフレームワークを思い出した時、これは差別化の次に位置付くものであることがわかったのです。
「そうか、パーソナルブランディングとは、個人の長期的プロモーション戦略なんだ」
自分のコアコンピタンスを認識し、それをさらに磨いて他者と差別化できたとしても、家にこもって待っているだけで「ぜひこの仕事をあなたに頼みたい」という依頼が来るはずもありません。
「私はこんなに他の人にないモノを、あなたの役に立てるモノを持っていますよ!」
ということを知ってもらわなければならないのです。
これ、要するに個人のプロモーションですよね?

さて、企業がプロモーション戦略を検討する際、消費者の購買行動を時系列で5分割した『AIDMA』というフレームワークがよく使われます。
[Attention(消費者の注意を引いて)]→[Interest(興味を持たせて)]→[Desire(欲しいと思わせて)]→[Memory(忘れないようにさせて)]→[Action(買わせる)]という5つのプロセスそれぞれで異なるプロモーション施策を打つべし、という考え方です。
#インターネットの普及に伴って「AIDMAは時代遅れ」ということで『AISAS』もよく使われるようになりましたが、今回のテーマとは外れるためここでは触れないこととします。
実際企業のCMも、このフレームワークに即した形で内容を変えるケースが多く見られます。
発売前にわざと商品名などを隠して刺激的な内容のみをチラ見せするティーザー(じらし)広告などは、完全に[Attention]が目的です。
また、商品名連呼のCMなどは[Memory]に特化していると言えるでしょう。
ただ、このAIDMAはあくまでも消費者がある商品を1度は買うまでのプロセスですから、「短期的に商品を大量に売る」ためには使えても、「何度も続けて買ってもらう」「この商品のファンになってもらう」という『顧客との長期的関係』の構築には向きません。
この『顧客との長期的関係』の構築こそ、ブランドの確立、つまりブランディングです。
つまりビジネスでよく使われるブランド戦略とは、「顧客との長期的関係を構築するためのプロモーション戦略」なのです。
そして『長期的プロモーション戦略=ブランド戦略』のフレームワークとして、AIDMAを応用したのが『AMTUL』です。
たとえば「ビールはこれ以外は飲む気になれない」と思ってもらうまでのプロセスを、[Aware(存在を知ってもらって)]→[Memory(憶えてもらって)]→[Trial(一度は飲んでもらって)]→[Usage(何度も買ってもらって)]→[Lyalty(これしかないと思ってもらう)]という5つのプロセスでブランド確立の施策を変えていくわけです。
こうして顧客との長期的関係を築き、囲い込んでいく。
これがプランディングの本質です。
であれば、このフレームワークは個人にも、つまりパーソナルブランディングにも活用できるはずです。
「あなたのファンです」と言ってもらえるように。
「この仕事はあなたしか適任者はいない」と言ってもらえるように。
ブランディングの本質は企業・商品も個人も同じです。
とにもかくにもまずはA(認知)とM(記憶)。
自分の存在を知ってもらい、名前を覚えてもわないと始まらないのです。
名刺とその渡し方の工夫、初対面でどう好印象を持たせるか、そうしたことを考えてみましょう。パーソナルブランディングで最も愚かなことは「目立たないようにする」ことです(笑)
ただ、このプロセスをスタートさせる前に実はやるべきことがあります。
それは「顧客を明確に定義すること」です。
商品のブランディングであれば「ターゲットドメインの明確化」であり、パーソナルブランディングであれば、「自分は誰から『あなたがいないと困る』と言わせたいのか」をあらかじめ決めておかなければならないのです。
次にT(試用)です。
あなたがフリーランスであれば、最悪ボランティアでも仕方ないと割り切って名前だけでない自分の仕事ぶりを直接知ってもらいましょう。
あなたが組織人であれば、指示・依頼が無くても自身の強みが活かせる仕事をやってみて、たとえば「ちょっとこういう資料作ってみたんですけど、役に立ちませんか?」と上司や取引先に渡してみましょう。
ここで重要なのは「直接相手に知らしめる」ことです。
つまり「私にはこれこれこんな実績があります」という、相手の知らない過去の事実をひけらかすだけでは効果はありません。
そしてU(常用)、最後がL(信奉)です。
フリーランスにしろ組織人にしろ、試用で気に入ってもらえたら「こいつ意外と使えるな」となり、「次はこれを頼むよ」というリピートオーダーが期待できます。
また、その繰り返しで評価を上げ続ければ、強固な信頼を獲得できます。
さあ、これでパーソナルブランディングは完成です。
こう考えると、パーソナルブランディングのキモは『とにかく一度は仕事させて貰い、そこで「こいつやるな」と思わせる』こと。そして『リピートの仕事で試用よりさらによい成果を残す』ことでしょう。
確かに簡単ではありません。
特に『リピートの度にバージョンアップ』はなかなか大変です。
しかしこれができなければパーソナルブランディングなど無理ということです。
私は研修やセミナーのコンテンツや伝え方を毎回少しずつ変えるのですが、これは全て改善、つまりバージョンアップを意図しています。
研修の事務局の方から、「またバージョンアップしましたね!」と言われると心の中でガッツポーズを作っています(笑)
少しずつブランディングできているのかもしれません。
が、企業にしろ個人にしろ「これでブランディング完成」と思ったらオシマイです。(さきほどの言葉と矛盾しますが)
気を抜いてバージョンアップを怠れば、顧客に、そして自分を徴用して欲しい相手に飽きられてしまいます。
「こいつもこれ以上は期待できないな」と思われたら、仕事(商品)の質は落ちていなくても、ブランド価値は低下してしまうのです。
そう考えるとブランディングとは恐ろしいものです。
終わりのないマラソンなのかもしれません。
しかしこのマラソンから脱落するわけにもいきません。
快調に走って(一度はプランドを確立)いたのに、いつのまにやら消えてしまった人が『一発屋』と呼ばれるのですから。

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