ファカルティズ・コラム
2010年10月29日
出る杭の邪魔をしない社会
今年の個人的目標として『ソーシャル・キャピタル(社会関係資本)の拡充』を掲げている桑畑@慶應MCCです。
昨日その一環として、某女子高での公開授業&ワークショップに参加してきました。
ゲスト講師は夕学五十講にもご登壇いただいた藤原和博さん。
近著の『はじめて哲学する本』を題材に、職業について、また個性や才能について8つのグループに分かれて話し合い、最後には生徒さんたちが「長期的にどのような分野でクレジット(信任)を積み上げていくか」を発表しました。
トータル2時間半の公開授業でしたが、あっという間に時間が過ぎ、「もっと彼女たちの話を聞きたいし、こちらも話をしてあげたい」と感じながら終了しました。
単純に「女子高生とこんなに話せて楽しかった」という感想ももちろんある(笑)のですが、今回のワークショップで私が最も感じたのは、「日本の未来は思っている以上に明るい。しかしそのための課題も大きい」ということでした。
彼女たちの最後の発表では、「結婚して主婦のプロになる」といった昭和テイスト(本人談)の微笑ましいものもありましたが、みんな社会人として、そして職業人としてのしっかりとした自分なりの考えがあり、まずそれに驚かされました。
「笑いが健康に及ぼす効果について勉強・実践し、将来は『お笑い保健室』を開業したい」
「政治は非常に大事なので、自分が政治家になるかメディアの立場になるかは決めていないが、みんなが政治興味を持ってもらえるような仕事をしたい」
「ストリートチルドレンを支援する仕事が将来的にはやりたい」
これらはほんの一例ですが、その場のオトナ達も唸ってしまうような素晴らしい決意表明でした。
また、その内容以上に私が驚いたのはその実現のプロセスです。
多くの生徒達が、ある分野について単に「勉強する」で終わらせずに、「紛争地域を旅する」や「貧困地域に行く」などのような『現場に行き、自分の目と耳でしっかり見て、聞く』ことを宣言していたのです。
最近「若者が元気がない」とか「留学希望が激減」とか「昔は花形だった海外勤務に行きたがらない」とよく聞くわけですが、「それ(若者が外に出たがらない)はどこの国の話ですか?」と言いたくなりました。
また、彼女たちの多くが「~をしたいと思います」でなく「~をします」と語っていたのも印象的でした。
これについてはゲスト講師である藤原さんも「その言い方が大切。「やりたい」という希望でなく『やる』と宣言している。大丈夫、絶対実現するよ」とコメントされていました。
この『机上の空論でない現場主義』と『退路を断った行動宣言』によって、彼女たちの発表は単なる夢物語でなく、「いずれ訪れる事実」として眩いリアリティを放っていました。
では、あなたやあなたの部下はどうでしょう?
彼女たちのような『机上の空論でない現場主義』と『退路を断った行動宣言』ができていますか?
こうしてどれも素晴らしい発表だったのですが、私が特に感銘を受けたのは一緒のグループでもあった彼女の発表でした。
「私は舞台俳優として有名になる。有名になれば賛同者も集まりやすくなり、私が本当にやりたいこと(紛争地域やスラムの子供達へのこころの教育)ができるから」
なんという強い行動宣言でしょう。
特に普通であれば目的になってしまいそうな「有名になる」という行為が、彼女にとっては『本当の目的を達成するための手段に過ぎない』点に驚きませんか?
こんなこと、少なくとも私が高校生の時に言えるヤツは周りに誰もいませんでした。もちろん私も含めて。
twitterで現役大学生のツイートを見てても心から思うのですが、
確実に私たちの時代より今の若者の方が凄い。
「ゆとり世代は・・・」とか「打たれ弱い若者をどううまく使うか」なんてくだらない議論するヒマがあったら、どうやって意識の高い彼ら彼女たちを支援するかを考えるべきだと思うのです。
そう、私が「日本の未来は思っている以上に明るい。しかしそのための課題も大きい」と感じたのはまさにそれなのです。
自分の周りだけでなく今の社会をちゃんと見つめ、そして明確な自分のビジョンを持っている彼女たちのような若者を・・・
「どうやってもっと増やすのか」というイシューもあるでしょう。
「(起業や留学しやすいように)どう経済的に支援するのか」ももちろん大切です。
ただ、それ以前に私のような仕事、またこのブログの読者さんたちのようなビジネスパーソンを念頭に置くと。
「どうやって邪魔しない組織や社会にするか?」
をまず考えるべきだと思うのです。
「そんなのできっこないだろう」とか「10年早い」とか言われない組織文化や社会風土をつくること。
そのために「思考停止して経験則や古い概念だけで思考・判断することなく、現状と今後をしっかり見つめ、論理的に思考・判断できる人材を増やす」こと、「上下左右の壁を取り払い、建設的な議論ができる場と人材を増やす」こと。
このように私にもできることがあります。
あなたもご協力いただけませんか?
できることからで良いのです。
せめて『出る杭を邪魔しない』社会を作りましょう。
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2024年7月19日(金)18:30-20:30
不易流行の経営学を目指して
~稲盛経営哲学を出発点として~
劉 慶紅
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
日本経営倫理学会常任理事
稲盛経営哲学に学びながら、人間性を尊重し、利潤追求と社会貢献の統合をめざす経営学理論を構築する、新論が真論となり、不易流行の経営学として結実することを目指して。
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2024年7月23日(火)18:30-20:30
『VIVANT』とテレビ局社員
福澤 克雄
(株)TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部、演出家・映画監督
私にとっての道は、TBSにありました。『VIVANT』は、同じような夢を持つ若者たちの道標になってほしい、そんな思いも込めてチャレンジした作品です。日本のドラマ界、映画界を目指す皆様、夢はあるけど方法がわからない皆様の一助になればと願っております。
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