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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2011年12月15日

量が質を生む

前回のエントリーから2週間も空いてしまいました。
おかげさまで忙しくさせていただいており、肉体的精神的にキツい日々が続いていました。
とはいえ、今週も土曜日まで研修のお仕事をいただいていますが、なんとかブログをかけるくらいの余裕はできました。
しかし毎日長文のブログが書ける人はすごいなあ、としみじみ思います。
余談はこのくらいにして本題に入りましょう。
今回は前回の『イノベーションと進化論』の流れで、ブレインストーミングなどでよく言われる『量が質を生む』ということについて考えてみたいと思います。

私は前回のエントリーで、「進化の本質は『変化の意志』などではなく、『多産による多様性』です」と言いました。そして「ビジネスにおいても『多産』がキーワードであり、それこそがイノベーションなのです」と結論づけました。
ビジネスにおける『多産』とは、「絶えず新しい取り組みを生み続けること」と翻訳できるでしょう。
そしてその前提条件となるのが「数多くのアイデアを出すこと」だと思うのです。
「いやあ、アイデアの量よりやはり質だろう」とお考えの方もいるかもしれません。
しかし、いったいどうすればその『斬新かつ質の高いアイデア』が生まれるのでしょうか。
人材育成? 情報やナレッジ共有の仕組み作り?
確かにそうした組織的な取り組みも必要でしょう。
しかし「会社が何もやってくれないから新しいアイデアを思いつけない」ではいかにも情けない話です。
では、個人でできることは?
私は、それこそが「時間をかけてでも一人一人が数多くのアイデアを出す」だと考えています。


以前あるクリエイターの方が、TVのインタビューにこう答えていました。
「クリエイターにとって最も必要な資質は『忍耐力』ですね」
そう、「凄い! なんでこんなこと考えつくんだろう?」と世間から思われているような人々も、決して簡単に斬新なアイデアを次々に出せるわけではないのです。
クリエイターと呼ばれる人も、そして私たちも、最初に考えつくようなアイデアは「誰でも思いつくような」ものが出てきます。
そこで「もういいや」と満足してしまうか、それとも「今日中に500個のアイデアを出す」と決めたら七転八倒してでも500個のアイデアを出すか…そこが私たち凡人とクリエイターを分ける境界線です。
クリエイター達は、それこそ「500個のアイデアを出して使い物になるのは1個あるかどうか」という世界で戦っているのです。
もちろん私たちが日々の仕事で500個のアイデアを出す必要があるケースは希でしょう。
しかしたとえば問題の原因分析を行う時、あなたは何個の仮説を立てていますか?
せいぜい2~3個、多い人でも5~6個、人によっては「原因はたぶん○○に決まってる」とひとつしか考えていないのが実態ではないでしょうか。
そしてその2~3個の中に真の原因が無かったら?
もう一度最初から考え直しですか?
それとも「まあこれも原因のひとつではあるだろう」と強引に解決策を考えますか?
これでは明らかな手抜きです。
数多くの原因を可能性を否定せずに洗い出すからこそ、その中に真の原因がある確率が高まります。
宝くじを1枚しか買わないのと100枚買うのと、どちらが「当たり」が期待できますか?
考えるまでもありませんね。
問題の原因分析だけではありません。
実現すべき課題の解決策や新商品のアイデアなど、本当に『斬新なアイデア』が欲しいのなら、まずは「たくさんのアイデアを出す」ことが求められます。
先ほども言ったように、最初に考えつくようなアイデアは誰でも思いつくようなアイデアです。
そこで「まあこんなものだろう」と手を抜かずに、せめて20個くらいは脳みそに汗をかきながら考えましょう。
後半になるに従って、段々と斬新なアイデアが出るようになるはずです。


「あの人は発想が豊かだ」という表現がありますが、これは決して「いいアイデアを出せる」ことを言い表した言葉ではありません。
『豊作』という言葉からもわかるように、“豊か”とは「十分にたくさんある」ことを意味する言葉です。
まさにこれは“質”ではなく“量”の話であり、つまり『発想が豊か』とは「たくさんのアイデアを出せる」ことを表現した言葉なのです。
『量が質を生む』
まずは手抜きをせず、出すべき答のハードルを定量的に(たとえば1時間で50個とか)設定することから始めてみませんか?

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