2012年07月27日
heartとmindを切り分ける
以前もお話ししましたが、私は月2回のペースで英語の勉強会に参加しています。
来年にはファシリテーションの国際カンファレンスで1セッション担当することを目指しているからです。(本当に出来るかどうかはこれからの努力次第ですが(笑))
昨夜もその勉強会に参加したのですが、今回のテーマは
“Talk from your heart and talk from your mind”
でした。
「ハートで語り、マインドで語る」
“heart”と”mind”の何が違うのだろう?
私もそう思いました。
しかしどちらも『心』と和訳できるこの言葉、全く違うニュアンスを持っており、そしてそれを使い分けることは英語でのコミュニケーション、いや、全てのコミュニケーションにおいて重要であることに気づかされたのです。
さて、この二つの言葉の違い。
ヒトコトで言えば、私たちは”mind”の意味を勘違いしているのです。
「ドンマイ(気にするな)」”Don’t mind.”のように、確かにmindには「感情・気持ち」のニュアンスもあります。
しかし一方で「どこか考えているお店あるの?」”Do you have any other restaurants in mind?”のように「思考」の意味もあります。
そして英語においては、heartとの比較においてはmindはこの「思考」のニュアンスが強いらしいのです。
つまりheartはそのまま『心』、そしてmindは『頭』に宿るものだと言えます。
“Talk from your heart and talk from your mind” は、
「心から自分の想いを語り、頭でしっかり考えて自分の意見を語る」という意味だったのです。
・・・ここで終わっては単なる英語の豆知識ですね(笑)
重要なのは、
「心から素直に自分の想いを語るべき場と、ロジカルに自分の考えを主張すべき場がある」ということです。
“heart”で対話(ダイアローグ)すべきなのか。
それとも”mind”で議論すべきなのか。
その見極めが(私も含めて)できていない人が多いのではないでしょうか。
たとえば誰かに悩みを相談されたとして、そこで「こうすればいいよ。なぜならば・・・」と的確なアドバイスを相手が求めているとは限りません。
相手の話に耳を傾け、共感してくれるること。そして「それでいいと思うよ」と背中をそっと押してくれることを求めているのかもしれません。
私は特にどうしてもロジカルに”mind”で考え、ロジカルに説得しようとしてしまう傾向があります(笑)
これが「向かない」場もかなりあるのは経験則で知っていたはずなのですが・・・
heartとmind、どちらが求められている場なのか。
これを見極めることはコミュニケーションにおいて大変重要です。
そしてもうひとつ。
場の見極めができたら、どのように語るかが次のポイントとなります。
“heart”の場であれば、あれこれ理屈をつけるよりも、いかに相手と自分の感情を大事にした表現をするかが求められます。
まずは素直に感情を出すこと。好きか嫌いか。主観バリバリの「想い」を大切にする。
そして相手の感情に配慮した表現も必要です。説教臭い言い方は控えた方が良いでしょう。
そして”mind”の場であれば、主観を廃し徹底的にロジカルに語ること。
起承転結よりPREPで、「なぜならば」と明確な論拠を2つ3つ提示し、それを事実・データで裏付ける。
ここでは好き/嫌いはタブー。努めて冷静に、冷静に。
さて、こうして”heart”と”mind”を使い分けることは重要なのですが、これはもうひとつの示唆を与えてくれます。
それは、「コミュニケーションにおいては、人格と意見は切り離して考える」こと。
“heart”はその人の人格、そして”mind”はその人の意見(考え)のベースです。
「あなたには賛同できない」と「あなたの意見には賛同できない」は全く違うのです。
前者は人格の否定にも繋がりかねない、危険なコミュニケーションを生みます。
会議など、議論の場においては”I don’t agree with you.”でなく、”I don’t agree to your opinion.”と述べるべきなのです。
日本人はこれが苦手です。
自分の考え(つまりmindですね)に反論されると、「コイツは気に入らないヤツだ」と考えがち。つまり人格と意見を切り離して考えることができません。
会議で激論を交わした後は口もきかない関係になったりします。
ところが外国人はこの「人格と意見を切り離す」ことが自然にできている人が多い。
私はこれは英語圏の文化だと思っていたのですが、どうも違うようです。
聞けば、「人格と意見を切り離すようにちゃんと教えられる」とのこと。
やはり子供の頃からディベートを教えるような教育システムの賜なのです。
であれば、わが国においてもこうした取り組みは行うべきでしょう。
政策や教育現場が動かないのであれば、少なくともその重要性を知る人が自分の部下や子供に教えるところから始めるべきではないでしょうか。
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