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ファカルティズ・コラム

2012年10月06日

「この人を支えてあげたい」と思わせるリーダーシップ

 「リーダーシップには様々なスタイルがある」
当たり前と言えば当たり前のことであり、私自身も職業柄知識として、そして経験則としてもわかってはいたのですが、今さらながら実感させられました。
ある打合せの後の飲み会で、仲間からある人の話を聞かされたからです。
その人を仮に『Aさん』と呼びましょう。
Aさんの周りには人が集まります。
若い人達からも慕われています。
彼を中心にイベントなど様々な企画が生まれ、その場でも彼は中心にいます。
紛うことなく、彼は『リーダー』です。
しかし、彼の周りに集まる人々は口を揃えて言うそうです。
「Aさんの将来が心配だ」と。
フォロワーからこう言われるリーダーって?(笑)

確かにリーダーには様々なタイプがあります。
■優秀で憧れの存在であり、「俺についてこい」と背中で引っ張るタイプ。
■面倒見が良く、人のやる気を引き出すのが抜群に上手いタイプ。
■寡黙だが権限を委譲し、しかし全責任は負うことで信頼を勝ち取るタイプ。
■アメとムチを使い分け、計算ずくで成果を出すタイプ。
世の中で「すごい」と言われているリーダーを何人か思い浮かべるだけで、このように様々なリーダーのタイプがあることがわかります。
最近では所謂「リーダー然」とした指示・命令を中心としたスタイルでなく、メンバーが動きやすいように支援することに徹し、コミュニケーションを重んじる『サーバント・リーダー』の必要性が語られるようになっています。
『ファシリタティブ・リーダー』などもほぼ同じ概念と言って良いでしょう。


しかし、これら様々なリーダーのスタイルには共通点があります。
それは多くの人から「この人のようになりたい」と思わせるということ。
では、Aさんは?
Aさんには大変申し訳ないのですが、「彼のようなリーダーになりたい」という人がそうそういるとは思えません。


そう考えたからこそ、私は今さらながら「様々な(未知の)スタイルがある」となかば衝撃を受けたのです。
しかし考えてみれば、このAさんのようなスタイルも間違いなく「アリ」です。
実際彼の周りに人は集まり、共同で成果を出し、チームのメンバーである若い人達は成長しているからです。
「Aさんの将来が心配だ」と言われようが、たとえ少々頼りなかろうが、彼はリーダーとして結果を出しているのです。
そう考えていたら、もうひとりの人物(仮にBさんとします)を思い出しました。
Bさんは私のファシリテーション講座の参加者だったのですが、お世辞にも上手なファシリテーターではありませんでした。
出てきた意見を整理するのも、また他者から意見を引き出すにも苦労しています。
しばしば議論が止まり、「どうしたらええんやろう」と途方に暮れる一幕も。
しかしなぜか話がまとまるのです。
議論のメンバーが助け船を出すことによって。
途中で少し停滞しても、みんながBさんに協力し、自分達で進め方を考え、議論を活性化させ、そして結論まで持って行くのです。
その光景は半ば感動的ですらありました。
同じメンバーで他の人がファシリテーターを務めた時より、良い議論を行い、そして良い結論を導き出せたのですから。
その時私は、「これもまた優秀なファシリテーターのひとつの形」と考えたのですが、Aさんのリーダーシップのスタイルと相通じるものがあるのではないでしょうか。
では、Aさんのリーダーシップ、そしてBさんのファシリテーションの共通点は何でしょう。
私は、それは『この人を支えてあげたい』と思わせる力だと考えます。
「この人は何か危なっかしいし、頼りない」
「でも、何かこの人を支えてあげたくなる」
「この人に協力したい。この人をオトコにしてあげたい」
なんと得な、ある意味楽なリーダーシップ・スタイルでしょう!(笑)


しかし、だからといって「誰でも真似が出来る」スタイルでないことも確かです。
では、この『壊れそうなお神輿型』リーダーシップ(すいません、今とっさに思いついただけです)の要件は何でしょう。
やはりなんと言っても『誠実さとオープンマインド』が絶対条件です。
嘘を言わない。取り繕わない。
裏表無く、まっすぐに人にも問題にも向かい合うその誠実さが、フォロワーに絶対的な安心感を与えます。
そしてわからないことは「わからない」、できないことは「できない」と言い、「だから力を貸してほしい」と胸を広げる。
そこには妙なプライドなど存在せず、変に格好をつけることもしない。
これで「まかせとけ!」という気にならない人の方が少ないでしょう。
この背景には『自らを知る』ことがあります。
自分の力量を知り、だからこそ人の力を束ねようとする。
その根底には「みんなで成果を出そう」という『強いコラボレーションへの意志』、そして「みんなのために」という『利他主義』も彼を支えているはずです。
一見頼りなさそうに見えて、なんという『強いリーダー』なのでしょう。


正直言って私には無理です(笑)

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