2012年09月26日
IAF ASIAカンファレンス参加レポート
8月末に参加した中国は深センで開催されたファシリテーションの国際カンファレンス。
現地から速報でレポートしたものの、まとめを報告していませんでしたので、今さらですが正式なレポートをお送りします。
<カンファレンス概要>
◆ファシリテーションに関する情報交換、ネットワーキング、年次大会、研究、および国際的ファシリテーター資格(CPF)の認定等を行う国際的なファシリテーターの団体であるIAF(International Association of Facilitators)のアジア地区で行われているカンファレンス。
◆毎年アジア各国持ち回りで開催され、ここ数年は台湾→韓国→インドの後、本年は中国(深セン)で開催された。ちなみに来年は日本、再来年はマレーシア(シンガポール共催)が予定されている。
◆今回の参加者は15カ国から総勢約90名。主催国の中国が当然多いが、それに次ぐのは23名の日本で、 アジア各国の他、北米やオーストラリア、ヨーロッパからの参加者も。
◆カンファレンスは基本的に3日間。1日目は国際的に活躍するプロのファシリテーターのワークショップが行われるプレ・カンファレンス、2・3日目は参加者がワークショップを主催するメイン・カンファレンスという構成。
◆ワークショップ以外でも、オープニング・セレモニーやBird Of Featherと呼ばれる全体セッション、そして1・2日目の夜に開催されるパーティなど、全てがネットワーキングと情報交換の場として設定されている。
<参加セッションと所感>
8/28:プレ・カンファレンス
1. Gamification of Facilitation
・ゲームの手法や要素を取り入れ、現実の会議や教育等におけるファシリテーションをいかにして成功させるかを、実際にいくつもの手法を体験することで学ぶワークショップ。
・ブレーンストーミングのアイデアに点数を付けながら対話し、その絞り込みや新たなアイデアの創造を行う『35メソッド』、ESPカードを使いながら自身のメンタルモデルを浮き彫りにしていく手法などを体験し、最後はゲームプランニングのポイントとステップを学んだ後、現実の会議を改善するためのゲーム性の高いワークを自分たちで設計した。
・アイスブレークでゲーム性を取り入れることは珍しくなく、また戦略ゲームのように教育分野では元々ゲーミフィケーションは用いられていたが、現実の会議にも取り入れることができるのはひとつの発見だった。
8/29:メイン・カンファレンス
1. Opening Ceremony
・基調講演などはなく、主催者の簡単な挨拶の後行われたカンファレンス参加者全員によるワークショップ。
・ランダムに参加者がグループ分けされた後、自分達でグループ名を決め、スポンジの積み木を使って今回のカンファレンスを形にし、各グループから発表する。
・自分が参加したグループはファシリテーション、そして本カンファレンスを世界を繋ぐ『橋』に見立てて積み木を組み立てたが、このワークはカンファレンス全体のチームビルディングとして非常に上手く機能しており、ワークショップにおけるアイスブレークとしても活用できると感じた。
2. The language of collaborative outcomes
・あるテーマに対するスタンスを線上の「立ち位置」で表現させ、時に立場を逆にしながらディベートも交えて相互理解と解決策の探索を行うワークショップ。
・あえて極端な立場を「演じる」ことでイシューを客観視し、相互理解に繋げ、さらにそこから現実的な落としどころを探る手法は様々な活用ができると感じた。
・さらに、今回は時間の関係で1軸のみを使用したが、本来は2軸を用いてマトリクスで各自の立ち位置を可視化・実感させるとのことで、この「身体感覚でのポジショニングの明確化」もワークショップで活用できそう。
3. Bird Of Feather
・昼食後の全体セッションで用いられたOSTライクな多人数でのワークショップで、参加者が自由に『これからみんなと話し合いたいこと』を掲げ、その賛同者を募って自然にグループを作り、ダイアローグを行う。
・これも参加者間のネットワーキングを促進する仕掛けだが、事業開発ワークショップ等のグループテーマ決めなどにも活用可能な手法と考える。
4. Using graphic metaphors
・英語の同時通訳が付く中国語のワークショップで、現実の対象を他の何かに置き換え(見立て)、その置き換えたものを「絵にする」ことでイメージを膨らませ、現実の状況と照らし合わせるという手法を学んだ。
・自身の得意分野としてもメタファーを使った思考・議論は活用しているが、そこに言葉だけでなくイメージを取り込むという手法は、さらに思考・議論の活性化に繋がることを実感した。
・言語情報に視覚情報が加わることにより、色・形・大きさ・位置などが意味を持つ。さらに個人の経験がそこに加わり、匂いや音などの五感が刺激され、思い出なども思考の材料として加味されるため、現実を現実のまま思考・議論したのでは出てこない意見やアイデアが期待できる。
<全体を通しての考察>
◆ファシリテーションのトレンド
・オープニングの全体セッションから各ワークショツプまで、共通していたのは上図の要素だった。
・ダイアローグを必須のプロセスとして用い、そこに「体を使う」「言葉だけでなく描き、組み立てることでイメージを形にする」「現実のテーマを別の何かに置き換えて思考を活性化させる」ための様々な手法を組み合わせる。
・これらを用いることでゲーム性が生まれ、より楽しく、主体的にテーマに取り組める。
・これらはファシリテーションが重要である教育・学習領域にも応用可能なトレンドと言えるため、今後初等教育から社会人教育に至るまで、積極的に取り入れていくべきと考える。
◆参加者との交流を通して
・正直全て英語でのコミュニケーションは疲れたが、さすがファシリテーターの集まりなので、講師・参加者全員が自分のつたない英語でも辛抱強く聴き、説明してくれ、その姿勢とコミュニケーションスキルは見習いたいと感じた。
・帰国後ゲーミフィケーションの講師からは資料等、フォローのメールをいただいた。参加者でも何人か友人が出来たので、今後も交流を続けていきたい。
報告は以上です。
さあ、来年は日本での開催です。
私も企画から参加しており、今度はインストラクター/ファシリテーターの立場でぜひ1セッションを担当したいと考えています。
これを読んで興味を持たれた方は、ぜひご参加ください。
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