KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2012年12月13日

ビジネスリーダーはスーパーマンにあらず

この時期、私の仕事は特定のスキルや階層を対象とした研修より、いわゆる『次世代リーダー育成』の研修が多くなります。
「我が社の様々な事業における次代の経営者を育成したい」
「オーナー企業である我が社の次の社長の補佐役を育成したい」
「我が社の変革してくれる活きの良い若手リーダーを育成したい」
研修テーマは同じでも、ニーズは様々です。
さて、みなさんは『ビジネスリーダー』に求められる能力・資質はなんだと思いますか?

「やっぱりグローバルな視野の広さや先を見通すインサイトが必要だよね」
「それとMBA的な戦略・マーケティング・財務の知識やスキル」
「でもリーダーとしては人間力が一番重要なんじゃないかなあ」
様々な意見がみなさんもおありでしょう。
時代に合わせて求められるものも変わりますし。
「俺に着いてこい」タイプより、今はメンバーが力を出しやすい環境を作る、いわゆるサーバント型リーダーの時代だ、という人もいます。
以前私もこのブログで『「この人を支えてあげたい」と思わせるリーダーシップ』について書きました。
ただ、これらはいずれも『リーダーシップ・スタイル』に関する分類です。
私たちには個性がある。
だからそれぞれの個性を活かすリーダーシップ・スタイルがある。
これは当然です。
しかしそれは何もビジネスの世界に限らない。スポーツのチームであろうが政治の世界であろうが共通の、『汎用的なリーダー像』の各種タイプ分けと言えるでしょう。
だからビジネスリーダーについて考える際には、もうひとつの切り口。
『ビジネスに特化したリーダー像』も併せて考える必要があります。
しかしなぜかこの論点なると、私たちはリーダーに多くのものを求めてしまいます。たとえば思考力ひとつを取っても、
◆戦略的・論理的な思考力
◆斬新なアイデアを出せる発想力
◆リスクとリターンを定量化し、適切なマネジメントを行う意志決定力
など、本当に贅沢な要求をします。
自分のことは棚に上げて(笑)
確かに「ものすごく頭の良い人」はいます。
しかし全てのリーダーがそんなスーパーマンである必然性は全くありません。
なぜならば、仕事はひとりでやるわけではないからです。
リーダーのお仕事である『経営』もまたしかり。
現パナソニックの創業者である松下幸之助の隣には高橋荒太郎が、そしてホンダの本田宗一郎には藤沢武夫という、いわゆる大番頭がいました。
また、ソニーには井深大と盛田昭夫という絶妙なコンビが。
このように、リーダーにも適材適所という概念は当てはまります。
職制上のヒエラルキーだけで、「AとBではAの方が上だから、Aがリーダー」とは言えないはずなのです。
ビジネスをざっくりしたバリューチェーンで考えると、
———————
① イノベーティブな発見と創造でビジネスのタネを産む
  ↓
② タネをマネタイズ(お金に換える)し、ビジネスモデルを確立する
  ↓
③ ビジネスモデルをマネジメントし、成果を上げる
———————
という3段階で考えることが出来ます。
この3段階をフレームにして先の創業者達を観ると、
<松下幸之助:①② 高橋荒太郎:③>
<本田宗一郎:①② 藤沢武夫 :③>
<井深大  :① 盛田昭夫 :②③>
という構造があることがわかります。
(ものすごくざっくり分類してますので、細かい突っ込みはご勘弁ください(笑))
であれば、
「自分は①~③のどれがやりたいのか/向いているのか」
「我が社は①~③のどの段階を担うリーダーを育成すべきなのか」
を考えるべきではないでしょうか。
ただ、「①だけ」では単なるアイデアマンや優秀な研究者のイメージですし、「③だけ」でも優秀なマネージャーとなってしまいます。
だから私はビジネスに不可欠な「ビジネスモデルへの深い理解と構築力」、つまり②はいずれにせよビジネスリーダーには必要な能力であると考えます。
よって①②をセットとして考えた『イノベーション重視型ビジネスリーダー』と②③をセットにした『マネジメント重視型ビジネスリーダー』を分けて考えるのが望ましいと思います。
さて、あなたはどちらのタイプのビジネスリーダーを目指しますか?

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