KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2013年04月05日

いつもカリカリしているあなたへ

今回はビジネススキルというより、汎用的な心の持ちようについて。


「せまいニッポン、そんなに急いでどこへ行く」
これは1973年の公募で総理大臣賞を取った交通標語です。
当時は『交通戦争』などという言葉もあったように、交通事故とその死亡者がたいへん多く、乱暴な運転を諫める意味でこれが採用されたようです。
ちなみに日本の自動車事故による死亡者は、やはりこの標語の時代、1970年代前半が1万数千人台と最も多く、現在は4千人台と激減しています。
これは剛性や信頼性など、技術の向上とやはりシートベルト義務化の恩恵が大きいわけですが、こうした標語を含む安全教育も影響しています。
ただ、交通事故だけでなく社会全体に目を移せば、まだまだこの標語には活躍してもらわなくてはならないように思います。
いや、今の時代だからこそ、「そんなに急ぐ必要があるんだっけ?」と自問する必要があるのかもしれません。



確かに現代はスピードが重要な時代です。
「強いヤツが弱いヤツを食うのではない。速いヤツがノロマなヤツを食うのだ」と言ったのはBMWの某社長ですが、企業も個人も「いかに他社(他者)に先んじるか」を志向するようになっています。
その背景には経済のグローバル化や地方の都市化、そしてネット環境の進展があるのは明らか。
また、今までは家や会社に戻らないとできなかったことが、ケータイ/スマホ/タブレット等と無線通信の組合せによるモバイル環境が整備されたことで、「急ぐことが可能になった」ことも大きいでしょう。


しかし、ちょっと考えてみてください。


本当に私たちは1分1秒を争う環境にいるのでしょうか?
たとえば1分遅れたことで、どれだけ大きなものを失うというのでしょう?
実際には、そんな場面はほとんど無いはずですし、余裕を持ってスタートすれば遅れることなどないケースの方が多いでしょう。
それなのに我先に電車から降りようとし、歩みの遅い人をノロマ扱いしてイライラしてしまう。
「自分のペース」を守りたいのはわかります。
しかし他者にも「自分のペース」があります。急ぎたくても(身体的な要因や荷物が多いなどで)急ぐことができない人もいます。
もちろんだからと言って、横に広がって通行の流れを滞らせたりするのは考えもの。
お互いに他者のペースや事情に寛容になることが肝心です。
月並みな言い方ではありますが、個々人が「もっと心に余裕を持つ」ことが今だからこそ求められていると思うのです。
『他者に非寛容な社会』ではこの国に未来はありません。
日本人の良さは他者へのきめ細かな気配りだったはずです。


ちょっと話が大きくなりました(笑)が、そもそも、急ぐあまり常にイライラ、カリカリしていては、他者とのコミュニケーションも上手くいくはずもありません。
仕事やプライベートにも間違いなく悪影響が出ます。
納期を守るのはビジネスの基本中の基本ではありますが、5分や10分の遅れに目くじらを立てる必要などないはずです。
だから今までよりほんの少しでもいいのです。
心の余裕を取り戻しませんか?


とは言え、当然「じゃあどうやって?」が問題になります。
「心の余裕 方法」で検索すると、食事療法からアロマでのリラックス方法まで色々出てきますが、私がオススメしたいのは、「お先にどうぞ」の習慣化です。
一番手軽で私がここ2年ほどやっているのが、
『エレベーターは必ず最後に降りる』
自分が降りるフロアに着いた時、他に降りる人がいるなら必ず「開」のボタンを押して「どうぞ」と先に降りてもらうのです。
こうして譲り、一番最後に降りてもその時間的ロスはどんなに長くても30秒。
30秒降りるのが遅くなって起こる問題など、たぶんこの世にはほとんどありません。
そればかりか、譲った相手からは会釈や感謝の言葉すらもらえます。
とても気分が良くなります。
そしてこれを続けていると、段々と心に余裕ができるようになります。
私は元来とても短気なのですが、(トシを取ったということもあるのかもしれませんが)あまりカリカリしなくなりました。
「今まで我先に電車やエレベーターを降りていたのはなんだったんだ??」とすら思います。
いかがでしょう。
あなたがもしいつもカリカリしていて、少しでもなんとかしたいと思うのなら、しばらくやってみませんか?
・・・ちなみに、英語では「お先にどうぞ」を “After you.” と言うそうです。
「あなたの後で」
いい響きですね。

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