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ファカルティズ・コラム

2013年07月11日

「ビジネスセンスが有る」人の思考習慣

本日は、前回のエントリー『”センス”の磨き方』の続編です。
前回は、
「センスの有る無しは、論理の引き出しの数で決まる」
「センスを磨く最善のトレーニングは『対話』だ」
ということを述べたわけですが、少々抽象的であったと反省しています(笑)
そこで今回は、具体的かつ私たちビジネスパーソンに最も身近な例として、
「ビジネスセンスは、どうやったら磨くことができるか?」
という問いを立て、それに答えてみようと思います。


さて、皆さんの周りを見渡してみると、「この人はビジネスセンスがあるなあ」と感じられる人もいれば、「本当にコイツにはビジネスセンスというものがない・・・」とぼやかずにはおれない人もいるはずです。
では、この『ビジネスセンスの有る無し』を分けているものは何なのでしょうか。
やはり”センス”なのだから、生まれ持った才能の有無で決まってしまうのでしょうか。


決してそんなことはありません(笑)



ビジネスセンスが「有る」人と「無い」人。
それを分けているのは、端的に言えば『仮説を立てる習慣の有る無し』です。
様々な情報に接した時、様々な仮説を立てる、つまり「ああじゃないか?」「こうじゃないか?」と、常に思いを巡らせるのが癖になっている人が、ビジネスセンスが有る人です。
そして、そうした習慣(癖)が無い人が、ビジネスセンスが無い人。


もちろん、本来センスなるものを、有/無とデジタルに判別するのはいささか乱暴です。
よってここでは、ビジネスセンスを『D』『C』『B』『A』『S』の5段階に分けて、思考習慣の違いを具体的に説明してみます。


まず、ビジネスセンスが『Dランク』の人とは・・・
経済や経営、消費トレンドなど、ビジネスに関わる情報に全く関心がない人。
新聞は惰性で取っていても、テレビ欄とスポーツ・芸能の記事しか読まないタイプです。テレビはドラマとバラエティだけ、ネットのニュースサイトにもアクセスしません。
はっきり言って、本プログの読者にはいないタイプです(笑)
思考習慣などというレベルではありませんね。


次に『Cランク』の人ですが、このタイプはビジネスに関わる情報には新聞・テレビ・ネット等で触れてはいても・・・
「へー」で終わる人です。
「へー、この会社がこんな事始めたのか」
「へー、今はこんなのが流行ってんのか」
こうして感心したり、怒ったり喜んだりするだけで、何も考えません。
せいぜい、職場で話のネタに使う程度。
こういう人が、一般的に言うところの『ビジネスセンスが無い人』です。
そしておそらく、全てのビジネスパーソンの過半数がこのタイプ。
このまま「仮説を立てる習慣がない」状態が続けば、間違いなく「言われたことをやるだけ」の組織の歯車で終わります。
私の研修やセミナーではさすがに少数派ですが、それでも残念ながらこのタイプにはたまに出くわします。


そして『Bランク』。
ここからいよいよ「仮説を立てる習慣がある」タイプになりますが、その中でも「もっと頑張りましょう」の人々であり、正直言って私の研修・セミナーで最も多いタイプです。
さて、このタイプは情報に触れた時にちゃんと考え、そして仮説を立てます。
「なぜ今、これが流行っているんだろう?」
 →「消費者の優先順位が変化しているのかも?」
「なぜこの会社はこんなことを始めたんだろう?」
 →「ターゲットをシフトした方が、長期的に有利と読んだからでは?」
「へー」と単に感心して終わるのでなく、その情報の背景に思いを馳せます。
ある状況/事象の『原因』や、活動/行為の『理由』を考え、自分なりの仮説を立てることができます。
こうした『過去の仮説』を立てるのが意識せずともできる、つまり習慣になっている人は、まずまずビジネスセンスが有ると言えるでしょう。
しかし、まだまだ上がいるのです。


これが『Aランク』の人になると、上記のような『過去の仮説』を考えた後、それを元に『未来の仮説』も立てています。
「とすると、次に流行るのはこういうものかも?」
「とすると、次はあの会社がこういうことを始めるのでは?」
『原因/理由』という背景から、「とするとこの後は・・・」と、『結果』や『影響』という先を読む、つまり「予測する」癖が付いているのです。
原因や理由という過去の仮説、そして結果や影響という未来の仮説が「当たるかどうか」は、さほど重要ではありません。
重要なのは、仮説を立てるという行為そのもの。
様々な情報から、因果関係などのロジックを組み立てるという頭の使い方をするかどうかです。
こうして常に様々なロジックを組み立てていれば・・・
そう、センスを高める条件である「論理(ロジック)の引き出しを増やす」ことができるわけです。
ビジネスセンスであれば、それは情報に接した際に「過去の仮説を立て、それを元に未来の仮説を立てる」ことを続けていけば、誰でも高めることができます。
『ビジネスセンスが有る人』とは、それが無意識的にできている、あるいは教えられてできるようになった人なのです。


では、ビジネスセンスが『Sランク』の人とは、どういうタイプなのでしょう。
それは、「○○の原因は××かも?」などの過去の仮説、そして「とすると今後△△という影響が出るかも?」などの未来の仮説を立てた後、
「であれば、我が社としては□□をやるべきでは?」
という『創造的仮説』を立てられる人だと私は考えます。
つまり、様々な情報を「他人事にせず、自分事にして考えられる」タイプこそ、真の意味で「情報を役立てられる」人であり、ビジネスセンスが『Sランク』の人なのです。


さて、あなたのビジネスセンスは何ランクでしょうか?
それを自己認識すれば、自ずと今後どうやってそのセンスを高めていくかが見えてくるはずです。
私は心から、多くのビジネスパーソンが『仮説を立てる思考習慣』を身につけ、ビジネスセンスを高めていってほしいと願っています。
それこそがアベノミクス頼みという、情けない日本企業を変革していく草の根の力になると信じているからです。

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