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ファカルティズ・コラム

2013年11月15日

「日本市場を軽視?」から考える市場論

日経BP Onlineに、気になる記事がありました。
[「PS4」本日発売!ただし日本は来年 - 世界の潮流とは全く異質になってしまった日本市場]
SONYの新型ゲーム機が北米で本日発売開始なのに、日本では来年2月と、最も遅く発売される背景について語っています。
私もこのトシになってもゲームは大好きで、休日にはムスメと『戦国BASARA』や『三国無双』などをプレイしていますから、他人事ではありません。
しかしそうした個人的感想だけでなく、本記事は私に『日本企業のマーケティング』について考えさせてくれました。



本記事では、PS4の発売が日本が最も遅いのは、
◆実は世界的には、据置型ゲームが主流であり、コンテンツも実写並みのCGを使った、アクションゲームが最も売れている。
◆ところが日本では、ゲームは完全にスマホ等の「空き時間で遊ぶ」ものが主流であり、「家庭でじっくり遊ぶ」据置型ゲームとそれ専用のコンテンツは売れなくなっている。
◆これは日本の急激な少子高齢化により、「家庭でじっくり遊ぶ」若年層の減少が原因。
という背景があると述べられています。
つまり日本は、据置型ゲームのメーカーとしては、もはや魅力が薄い市場であると。
よって、日本市場は「あとまわし」、あるいは「ないがしろ」にされているわけですね。


しかし、この『日本市場軽視』は、据置型ゲーム機だけの話ではありません。
他の例を挙げると、クルマが日本の道路事象に反してどんどん大型化しているのも、海外、特に巨大なマーケットである北米市場のニーズに合わせているからです。
たとえば、マツダのアテンザ(旧車名はカペラですね)は、初代は幅1580mmだったのが、最新型では1840mmと、なんと26cmも広がっています。
ホンダのアコードにしても、初代は1620mm、最新型は1849mmと、やはり23cmも拡大しています。
暴言ですが、狭い道路と駐車場が多い日本のニーズは、もはや軽自動車にお任せしているかのようです。
もちろんマーケティングは「市場ありき」であり、こうした傾向は仕方のないことではあります。
また、単に道路事情だけでクルマのサイズは決まるものではなく、デザインや居住性のニーズに応えた結果として、クルマの巨大化があるのも理解しています。


ただ、ゲームにしろクルマにしろ、こうして「今はっきりと見えている」ニーズ、つまり『顕在的ニーズ』に合わせているだけでは、イノベーションや市場創造に結びつかないとも思うのです。
実際、日本市場は世界的に見てもまだまだ大きく、そこでヒットすれば大きな売上に結びつきます。
たとえば、2012年の音楽ソフトの売上高は、日本が43億ドル、米国は41億ドルと、実は日本が世界最大のマーケットです。
(ちなみにお隣の韓国は約1.8億ドルと、日本の5%にも満たない小さな市場です。そりゃあK-POPの方々も日本で売れようとするのは当然ですよね)
また、クルマの販売台数も、中国、米国に続き第3位ですし、GDPから考えても、日本のマーケットは本来、ないがしろにできる市場ではありません。


たとえば、本当に「オトナが家でじっくり楽しむ」PS4のコンテンツは、「ニーズがない」のでしょうか?(あえて「遊ぶ」という表現を外してみました)
以前ニンテンドーDSで『脳トレ』や『英語漬け』など、純粋なゲームではないコンテンツがヒットしたように、据置型ゲームで同様のイノベーションを起こし、市場を創造するのは「無理ゲー」なのでしょうか。


そして、これまたゲームだけの話ではありません。
また、単に「日本市場をないがしろにするな」という話でもありません。
今すでにあるニーズだけに対応していては、イノベーションはありえません。
また、市場(顧客)に、「どんなモノやサービスがほしいですか?」と聞いても、返ってくるのはやはり『顕在的ニーズ』です。
顧客は自分の『潜在的ニーズ』など、わかるわけもないのですから。
(だからこそ『潜在的』なわけで(笑))


SONYは『ウォークマン』で、「外出先でも音楽を楽しみたい」という潜在的ニーズに。
ガンホーは『パズドラ』で、「スマホでも単なる暇つぶしじゃない面白いゲームを楽しみたい」という潜在的ニーズに。
P&Gは『レノアハピネス』で、「洗濯物でも自分好みの香を楽しみたい」という潜在的ニーズに。
秋元康は『AKB48』で「雲の上の存在であるアイドルを自分が育ててみたい」という潜在的ニーズに。
これら、単なるヒット商品でなく、「市場を創造した商品」は、潜在的ニーズを見つけたからこそ、イノベーションと言えます。


市場は、極論すればどこにでもあります。
確かに、顕在的ニーズのある既存市場「だけ」を考えれば、今や日本市場が魅力がない分野もあるでしょう。
しかし潜在的ニーズは?
また、同じように考えたとき、中国市場にはどのような潜在的ニーズが?
そして潜在的ニーズが見えてきたとしたら、それはどこ(地域/分野)の市場が一番大きい?
マーケッターとして、こうした「問い」は、常に行うべきでしょう。

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