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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2014年02月21日

「幻想」からの脱出

面白い記事を見つけました。
『「昔はよかった」は本当か? 戦前の日本人のマナーがひどかった!』(ダ・ヴィンチNEWS)
「昔は良かった」
「最近の若い連中は」
しかし、日本人のマナーは昔の方が酷かったし、虐待も頻繁に行われていた。
確かに失われたものもあるでしょうが、今の世の中、昔と比べて「悪くなった」とは言えないのです。
具体的データを挙げると、少年による凶悪犯罪の検挙者数も、近年のピークである平成9年(2,430名)より、昭和35年(8,212名)の方が3倍以上も多いのです。(ちなみに、少年(20歳未満)全体の人数は、平成9年と昭和35年ではさほど変わっていません)
私たちは、過去を美化する傾向にあり、どうしてもこうした『「昔は良かった」幻想』にとらわれてしまいます。
しかし、こうした「幻想」。
他にもたくさんあると思いませんか?



最近のニュースで言えば、某作曲家のゴーストライター問題。
「現代のベートーヴェン」ともてはやされていたのに、実は作曲なんかしていなかった。
私も彼の曲(と言われていたもの)は以前聴いたことがありますが、私の好きなマーラーやバッハから拝借したようなメロディと構成が気になり、感動できませんでした。
しかし世は絶賛の嵐。
そして今回の騒動で明らかになったのは、私たちが『「○○なのにすごい」幻想』の虜であるということです。
これは今回の件に限りません。
障がいがあったり、また親から捨てられたなど、理不尽な境遇にある方が行う何かは、その実際の成果の何倍も何十倍も増幅されて賞賛されます。
これはある意味、そうした方々に対しても失礼です。
そんな『「○○なのにすごい」幻想』へのアンチテーゼとして、とても良い動画がありましたので、それをご紹介させてください。
『Team Canada Sochi 2014 Commercial』
内容はあえて解説しません。
あなたの目で確かめ、最後に出てくる言葉、”It’s not what’s missing. It’s what’s there.”(重要なのは「ないこと」ではない。「あること」だ。)の意味を噛みしめてください。


ところで、私が最近気になっているのが、『コミュニティ幻想』です。
仲間が大事なのはわかります。
しかし、何かのコミュニティに属し、誰かと繋がっていないと不安になるのは、これが原因だと思うのです。
コミュニティとはオフィシャルな組織ではありませんし、そもそも流動的なものですから、自分を含めた誰かがそこから抜けようが、そこになんの問題もありません。
また、なんでもかんでも「仲間と一緒に」と考えていては、「自分ひとりでやり抜く」ことができなくなってしまいます。
特に社会問題に対する意識が高かったり、また起業を目指している方々に、この『コミュニティ幻想』にとらわれている方が多いように思います。
ちなみに、そうした方々は、「とにかくポジティブに考えよう」という『ポジティブ幻想』の虜も多いようです。
人生、時には徹底的にネガティブに考えることでしか見えてこないこともあります。
リスクマネジメントの基本ですね。


食の分野では、『「手作りが一番」幻想』や『「中国産は危ない」幻想』。
いまだに、「市販のマヨネーズは保存料が入っているから腐らない」などと言っている人がいますが、JAS規格でマヨネーズには保存料は入れてはいけないことになっています。
「いや、手作りのマヨネーズはすぐ腐る」
と反論する人もいますが、それは単に衛生管理の徹底されたマヨネーズ工場に比べ、自宅のキッチンが雑菌だらけで、加えて雑菌が繁殖する水分が付着しやすいことが原因です。
また、「中国産は危ない」というのも全く根拠が無く、輸入食品における検査での不良率は、実は中国産は他国より低いのです。
以前の「毒入り餃子事件」の印象が残っているからでしょうが、日本の大手商社や小売業が輸入しているものなら、なんの心配もいらないと言って良いでしょう。


まだまだ『悪の巨大組織幻想』や『利他主義幻想』、そして『「話せばわかる」幻想』や『オンリーワン幻想』など、突っ込みを入れたい幻想はたくさんありますが、長くなりますので、本日はこれくらいにしておきましょう。


さて、私がみなさんに言いたいのは・・・
「自分の周囲の空気を疑え」
「脊髄反射的に感情で判断せず、理性的に考えろ」
この2つです。
幻想とは空気です。
「みんな言ってるから」と考えた時点で、あなたは幻想世界の住人です。
一度何らかの幻想にとらわれてしまったら、自分一人ではなかなかそこから脱出できません。
できれば、上記2つのポイントを意識し、幻想にとらわれないように心がけましょう。
そして「自分はどんな幻想にとらわれているだろうか?」と客観視し、そこからの脱出を試みてください。
自戒を込めて・・・
(私も様々な幻想の虜でしょうから)

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