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ファカルティズ・コラム

2014年05月01日

『コミュ力』の正体

最近では、コミュニケーション能力のことを『コミュ力』と略すことがあります。
特に若い人の間で、「やっぱ就活はコミュ力が大事だよなあ」のような使われ方をします。
しかしこの言葉、本当にコミュニケーション能力と同義なのでしょうか?
どうも使われ方を見て(聞いて)いると、その文脈から『コミュ力』とは単純にコミュニケーション能力の略語ではないように思うのです。
では、この『コミュ力』とは何なのか。
そしてそれを高め、発揮するためには何に気をつければよいのか。
本日はそれを考えてみようと思います。



そもそも「コミュニケーション」とは、情報や感情の「やりとり」を意味します。
つまり「双方向性」が前提であり、一方通行の説明や指示はその中に含まれるものの、「コミュニケーションができる」とは、「ちゃんと聞いて理解し、ちゃんと伝えて理解させることができる」ことを意味するわけです。
ですから、コミュニケーション能力は情報や感情の「受信能力」と「発信能力」に分けて考えることができるわけですが、本日はこうした「よくある切り口」でなく、別の切り口で考えてみたいと思います。


さて、私は以前『「話し合い」を4つに分けて定義する』というエントリーで、双方向のやりとりを「雑談/対話/議論/論争」の4つに分けました。
これをコミュニケーション能力を考える切り口として使うと、コミュニケーション能力とは、以下の4つの能力の集合体と考えることができます。


1. 雑談力
→やり取りを通して、相手との「関係を構築する」力。
→あらかじめ論点を決めず、話し、聞くというキャッチボールを続けられることが重要。
2. 対話力
→やり取りを通して、相手と情報や感情を「共有する」力。
→明確な論点に対して、論理的に伝え、相手の話を正しく理解することが求められる。
3. 議論力
→やり取りを通して、問題解決や企画などの場で、「ともに答を見つけ出す」力。
→対話力に加え、話し合いの流れや論点の構造を整理したり、的確な質問をするなど、ファシリテーション・スキルも必要となる。
4. 論破力
→相手を「言い負かす」力。
→論理的に主張し、時には情に訴えるとともに、相手の話のアラを見つける力も重要。


さて、こうしてコミュニケーション能力を4つに分けて考えると、なんとなく『コミュ力』なるものの正体が見えてきませんか?
そう、若い人の使う『コミュ力』という言葉においては、「雑談力」が最重要のスキルであり、次いで「対話力」、「議論力」は「あった方がいい」レベル、そして「論破力」は不要なのです。
感覚的に定量化すると、4つの力の含有率(%)は「60:30:10:0」でしょうか。
確かに就活生にとっては、会話のキャッチボールを通して面接官との関係を構築する「雑談力」が最重要スキルです。
これがないと、自分の良さをアピールしたり、相手の言うことを正しく理解することで、情報を共有する「対話力」も活かすことができません。
また、会社説明会(という名の評価の場)でグループディカッションがあれば、議論力も必要となりますが、これには対話力が含まれますので、ファシリテーターを務めるのでなければ、対話力まででも、なんとか無難にこなすことは可能です。
論破力は…まあ使う必要はありませんよね(笑)
しかし、これが社会人になると、経験を経るに従って、この割合は変わってきます。
たとえば新入社員であっても、配属されて半年も経てば、議論力の重要性が上がり、先の含有率は「50:25:20:5」くらいになるかもしれません。
そして業種や職種にも依るでしょうが、部長クラスだと「20:5:30:45」あたりかも(笑)
(本当はあまり笑い事ではありませんが)


つまり、『コミュニケーション能力』でなく『コミュ力』という言い方をするとき、一般的にそれは「雑談力+対話力」を意味し、アカデミックに考えれば、「立場や状況に応じてコミュニケーション能力の4要素から不要なものを除いた力」と言えるのです。
これが『コミュ力』の正体です。
ま、私なりの解釈ですが。


では、最後に簡単ではありますが、一般論としての『コミュ力』の最重要構成要素である、「雑談力」を高めるための私なりのポイントを解説しておきましょう。


◆目的をはき違えない
先に述べたように、雑談の目的は相手との関係構築です。
自分の優秀さをアピールするためでも、また上下関係を確認するためでもありません。
これを忘れてしまうと、一方的に話してしまったりで、相手にウザがられてしまいます。
◆「話す:聞く=3:7」で
関係構築においては、「相手に気持ちよく話しをさせる」ことが重要です。
時間的な割合では、自分の話は3で相手の話は7くらい、つまり「聞く」割合を多くしましょう。
自分の話をする場合でも、相手の話に上手く「乗る」方が、相手の話しを引き出しやすくなります。
◆相手の話に乗る努力を
聞く時間が7割であればよいわけではありません。聞く姿勢も大事です。
無理する必要はありませんが、少なくとも相づちを打ち、「ちゃんと聞いてますよ」という姿勢を見せましょう。
できれば前のめりで、腕組みはNGです。
そして「へえ」とか「なるほど!」「面白いですね」などに加え、「それから?」のような質問も交えて、「教えて」という姿勢を見せましょう。
それで機嫌が悪くなる人はほとんどいません。
ですから、できれば「でも」「いや」のような否定の相づちは避けましょう。(もちろん言わなければならないときもありますが)
特に、相手が話している最中には絶対ダメです。
◆幅広い知識はあった方が良い
今やネットで調べれば大概のことはわかるとは言え、雑談の場面でいちいちスマホで調べるわけにはいきません。
となれば相手の話に乗るためには、やはり幅広い知識は必要です。
少なくとも旬なニュースくらいは眼を通しておきたいものですし、そのためにも様々なことに興味を持つようにしましょう。
ただ、「知ったかぶり」では怪我をしますから、無理をする必要はありません。
知らないことは「教えて」でいいのです。


さて、いかがでしょうか。
どちらかと言えば若い方向けのエントリーになりましたが、年齢や立場に関わらず関係構築は大切です。
あなたなりの雑談力、そしてコミュ力について考えてみてください。

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