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ファカルティズ・コラム

2015年03月05日

ビジネスリーダーは一流のキャッチャー?

とある「教えて系サイト」で、こんな質問ありました。
「キャッチャーに転向することになったのですが、リードの考え方がいまいちわかりません」
自分ならどう答えるだろうか?
そう考えたときに思いつきました。
「これは戦略立案や仕事全般、特にリーダーに必要なスキルを考えるメタファーとして使える」
キャッチャーの「リード」とは、まさに「リーダー」の仕事ですから。



言うまでもなく、キャッチャーが行う「リード」とは、「打者を打ち取る」のが目的です。
その目的のために、「どこにどんなボールを投げさせるかを決め、ピッチャーに指示する」のが、リードの具体的作業です。
となれば、当然「どうやってどこにどんなボールを投げさせるのかを決めるのか?」を考えなくてなりません。
そして、それを考えるためには、考える材料となる「情報」が必要です。
では、どのような情報が必要なのか。
基本的には以下の3項目と考えられます。
1. 投手と味方の守備陣に関すること
  ・投手の得意/不得意な球種・コース
  ・投手のレベル(コントロール・球速)と心理状態
  ・守備についている野手のレベルと心理状態
  ・以上と外部環境も踏まえた投手が投げたいボール
2. 打者と敵の攻撃陣に関すること
  ・敵チームの戦略の傾向(パントの多用度度など)
  ・ランナーがいれば、そのレベル(走力・盗塁成功率)
  ・打者の得意/不得意な球種・コース
  ・打者のレベル(打率・長打率・速力)と心理状態
  ・以上を踏まえた打者の狙い(球種・コース・打つ方向)
3. 試合の状況に関すること
  ・風向き、日差しの強さや気温など現在の天候
  ・球場の特徴や、グラウンドの荒れ具合
  ・ゲームのここまでの流れ
  ・現在の点差、アウトカウントや塁の埋まり具合
要するに「現状分析」です。
個々に見れば、1. は企業の戦略立案では「内部環境分析」ですし、2. は「競争環境分析」、3. は「マクロ環境分析」と、何も変わりません。
まず、この現状分析がしっかりできていないキャッチャーは三流。
「今どうなっているか」を正しく認識せずして、次の一手、つまり「何を投げさせるか」など考えられるわけもないからです。
ということは、この現状分析がきちっとできていないビジネスリーダーもまた、三流と言うことですね(笑)
しかし、どんなにしっかり現状分析ができていても、打者を打ち取れなかったら無意味です。
それはたとえ投手がミスったとしても、また狙い通りにゴロを打たせたのに、野手がエラーを  したとしても、それはやはりキャッチャーにも責任があるからです。
そんな「なんでだよ…」と味方のせいにするキャッチャーは二流どまり。
なぜならば、「投手のミスや野手のエラーを想定していなかった」ことに問題があるからです。
だからキャッチャーは、「もし○○になったら」と、さまざまな未来を想定しておかなくてはなりません。
「もしヒットエンドランをかけてきたら」
「もし内角に外れたら」
「もし風向きが突然変わったら」
これは野球に限らず、サッカーであろうが将棋があろうが、勝負事には共通です。
単に一球だけの結果を考えるのでなく、ゲーム全体の流れと現在の局面から、先の先を読む。
そして複数のオプション、たとえば「空振りを狙って内角へのカーブ」「ゲッツー狙いで外角低めに速いストレート」「様子見で内角高めのボール球」などを考える。
そしてそれらオプションを比較し、どれが成功確率が高いのかを瞬時に計算し、決める。
ここまでできて、やっと一流のキャッチャーと言えるでしょう。そして、
「もし競合が値下げしてきたら」
「もし再び円高に転じたら」
「もし市場のニーズが変わったら」
一流のビジネスリーダーなら、こうした様々な想定をしておかなくてはなりません。
さて、今回は「リード」に絞ってキャッチャーとビジネスリーダーの共通点を考えてきました。
しかし、キャッチャーの仕事はリードだけではありません。
そう、キャッチャーは「フィールドの監督」と称されるように「司令塔」の役割も担いますが、キャッチングやフィールディングという「守備」、そしてもちろんひとりの打者・走者として「攻撃」の役割も担っています。
では、ビジネスリーダーとしての「守備力」「攻撃力」とは何なのでしょうか。
ここから先は、あなたが「キャッチャー」メタファーで考えてみてください。

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