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ファカルティズ・コラム

2007年08月29日

「中国産リスク」の考察

「中国産は危ない」
最近よく耳にします。
◇米国で中国産ペットフードにより、ペットの死亡が相次いだ。
◇中国産ウナギから大腸菌が検出され、11社に輸出禁止処置が通達された。
◇パナマでは中国産風邪薬により100人以上が死亡した。
◇中国産練り歯磨きからも致死量の毒物が発見された。
こうしたニュースが相次いでいることにより、全世界的に中国産の農作物・工業製品の安全性に対する疑問の声が上がっています。
ついには嘘が誠か、「北朝鮮が韓国に『中国産は怖いから韓国の薬品をくれ』と言ってきた」という話まで出てきました。
我が国も例外ではなく、中国産というだけで敬遠する消費者が増えてきているようです。
「やはりあの国は信用できない」
「マナーも含めて民度の低い国だ」
私の周囲からも、しばしばこうした声が聞こえてきます。
しかしちょっと待ってください。
もう少し冷静に考えてみませんか?


まず問いたいのが、「中国に対する悪感情が固定観念となっていませんか?」ということです。
確かに国としての取り組みや、中国人のメンタリティ(風土といってもいいでしょう)は今回の様々な問題と無関係ではありません。
しかし、今中国産バッシングを行っている我々やメディアに、“以前の反日ムーブメントの意趣返し”が全くないと言えるでしょうか。
たとえばこれが米国製品だったとしたら、特定企業に対するバッシングにはなっても、「これだからアメリカは信用できない」という論理展開にはならないのではないでしょうか。
ですから、まずその固定観念を外すこと、つまり過去のデータから「中国だから」という風に安易に因果関係で結びつけ、思考停止にならないことが必要だと思うのです。
次に私が言いたいのは、「一事が万事と考えないでほしい」ということです。
確かに中国の企業・生産者で「儲かればよい」「自分が食べるものではないから」というモラルの欠片もない輩がいるのは事実でしょう。ですが、だからといって全ての企業や生産者がそうだと決めつけるのもまた間違っているはずです。
中国企業でも安全に配慮している企業・生産者はたくさんいます。というかそちらの方が多数派でしょう。また、それを輸入・加工する日本企業でも、品質管理をしっかり行っているところはくつもあります。
たとえば、吉野家は鰻丼を提供するために、中国で綿密な調査を行い、中国・日本政府より厳しい独自の安全基準を設定し、今でも定期的に現地でチェックを行うとともに、消費者への想定問答集も作成しています。
また、過去に原料として使用した中国産野菜の残留農薬による、商品の販売自粛という苦い経験を持つニチレイも、全ての原料の農薬や肥料の情報を管理する仕組みを確立し、安全を確保しています。
こうしたトレーサビリティ(生産履歴の管理)と情報公開の体制を整えれば、安全と安心を担保することは可能なのです。
ですから我々消費者としては、単純に中国産だからという理由でひとくくりにして排除することなく、信頼できる企業と商品を見極め、選択することが大事なのです。
そして最後に、「メディアの情報量に騙されないように」と言わせていただきます。
確かに最近中国産商品の問題を指摘したニュースが多いです。
しかし個々のニュースを読めば、それらは今始まったことではないとわかるはずですし、数ヶ月前に発覚したことが「今」報道されていたりします。
これは別に今回の件だけではありません。
たとえば以前自動車メーカーのリコール隠しが話題になった時、連日のように製造不良に起因した事故が報道されていました。たとえば車両火災などです。
でも、今こうした車両火災のニュースが報道されることはほとんどありません。
ところが消防庁のデータでは、車両火災は当時も今もほとんど同じ件数であり、なんと40分に一台の車が燃えているのだそうです。
メディアというものは、ある事件が起きればそれに類する事件をことさら取り上げる傾向があります。
我々はこの当たり前の事実をもう一度思い出し、メディアの誘導に乗ることなく自分の頭で考え、安易なバッシングに走らずに賢く商品を選ぶべきだと思うのです。

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