2016年05月09日
「怒り」が道具だとするなら
7月の参院選に向けて、本日ひとつの政党が旗揚げされました。
党名は「国民怒りの声」だそうです。
政策やコンセプトでなく、「感情」を党名に冠した政党は珍しいですね。
個人的には、感情をベースとした姿勢と政策は危険だと思うのですが。
特に「怒り」というネガティブな感情においては。
さて、このニュースに接し、私は政治だけでなく別のことも考えていました。
それは最近流行(ちょっと旬は過ぎたように思いますが)のアドラー心理学。
その中でもよく取り上げられる、アドラーのこの言葉です。
「怒りとは、出し入れ可能な道具である」
怒りは感情の一種、それもネガティブな感情です。
しかしアドラーは、それを「道具」だと言った。それも「出し入れ可能」だと。
アドラーの主張をシンプルに言うと、以下のようになります。
◆「怒り」は、自分に有利な状況をつくりたい時に湧き上がる。
(誰かの言動に「なんだと!?」となるような)
→だから目的をかなえるための手段=「道具」。
◆しかし別の事態が起これば、怒りはすぐに引っ込めることができる。
(突然の電話とか)
→だから「出し入れ可能」。
なるほど。わからなくはない。
だからこの言葉の真のメッセージは、「怒り以外を使って、自分に有利な状況をつくるように心がけよう」ということです。
確かに。
その方が、お互いに嫌な思いをすることなくコミュニケーションができる。
しかし、ここで「アドラーさんさすがっす! 勉強になります!」で終わったら、やはりそれも思考停止。
「でも…」とあえて反論を試みたり、「とすると…」とさらに思考を拡げ、深めることが肝心です。
では、あなたならこの後、どう考えますか?
以下に私の思考プロセスをご紹介しますが、あなたもぜひ、自分のアタマで考えてみてください。
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私は、まず「道具」という言葉の定義から考えてみました。
アドラーの使った、「道具=目的達成の手段」という定義に、異論はありません。
しかし道具には、それを使う目的だけでなく、それを使わない場合と比較して、優位性が存在する必要があります。もし優位性がないのであれば、道具を使う意味がないからです。
道具を使った方が「速い」とか「楽だ」。これはコストが減らせるということであり、要するに「効率」がいいから道具を使うわけですね。
また、道具を使った方が「正確にできる」とか「きれい」というのは、「効果」があるからです。
道具は、この「効率」か「効果」、あるいは両方が、道具を使わない場合より優れていなければなりません。
とすると、怒りという道具を使った方が効果的、あるいは効率的に自分に有利な状況を作れる場合には、積極的に使った方がいいのかもしれません。
いやいや、でもそれだと自分は良くても相手が困ります。
WIN-WINのため、あるいは今後のことも考えれば、怒りという道具を安直に使うのが得策とは言えません。
であれば、怒り以外にこの「自分に有利な状況を作る」という目的に使える、それも怒り以上に効果的・効率的な道具はないのでしょうか?
具体例で考えてみましょう。
部下がミスをした。二度とミスをさせないように(そして、それによって自分が迷惑を被らないように)したい。
そこで「気をつけろ!」と怒りという道具を使わずに、二度とミスをさせないという目的を達成するには、どんな道具を使えばよいのか?
それも怒り以上に効果的・効率的に。
◆なぜ、ミスをしたのかを教える、あるいは考えさせる。
◆ミスによる影響を教える、あるいは考えさせる。
はい、やはりある事態の原因や影響を考えるのは重要ですね。
このように、「原因/影響分析」も立派な道具であることがわかります。
しかし、ここでまた考えました。
「怒り以外の感情は、道具として使えないのだろうか?」
怒りが道具であるなら、他の感情も道具になり得るかも、そして怒り以上に効果的・効率的な道具が存在するかも、という問いです。
「喜怒哀楽」だけでなく、期待感や危機感、高揚感や恐怖心など、私たちには様々な感情があります。
前述の「部下に二度とミスをさせない」というケースで、「怒り」以外、自分の感情で道具として有効なものはあるのでしょうか?
そしてその感情は、どうやったら道具として使いこなせるようになるのでしょうか?
ここから先は、ぜひご自分で考えてみてください。
まあ、部下のミスを目の当たりにして「喜び」や「期待感」というポジティブな感情を感じるのはなかなか難しいと思いますが、全く不可能ではないと思います。
重要なのは、「思考停止せずに考え続ける」ことです。
そのための素材は私たちの周りにたくさん転がっています。
「怒り」に近いネガティブな感情に、「嫌悪感」や「憎しみ」があります。
「ヘイトスピーチ」とは、まさにこうした感情に根ざしており、避けるべきであると私も思います。
しかし、「反ヘイト」を掲げる人の多くが、「ヘイトスピーチへの嫌悪感や憎しみ」を隠そうともしないのはなぜなのでしょうか?
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