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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2018年06月27日

「算数」と「数学」の違いとは

このブログで何回か行ってきた「類義語トレーニング」。
「恋」と「愛」、「改善」と「改良」、「面談」と「面接」など、私たちは様々な類義語を使い分けています。
類義語とは、「意味はほぼ同じでニュアンスが異なる」言葉のこと。
では、そのニュアンスの違いとは?
それを類義語辞典など使わずに、自分の頭で考えてみる。
そうして思考・コミュニケーションの最重要部品である「言葉」に敏感になることは、思考力・コミュニケーション力を高めることに繋がるからです。
そして本日のお題。
さて、「算数」と「数学」の違いとは?
すぐ続きを見るのでなく、まずはあなた自身の答を考えましょう。
あ、「小学生が学ぶのが算数で、中学生以上が数学」という誰でも思いつく定義以外でお願いしますね(笑)
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さて、いかがでしょうか。
ネットで調べると、様々な人が様々な定義をしています。
たとえば…
◆ 算数は計算するためのやり方を教えるということであり、数学はそれを学問として研究するもの
◆ 算数では正しい結果を得ることに価値がおかれ、数学では結果そのものよりも、どうやってその結果に達したかのプロセスに価値がおかれます
◆ 「数学」では計算の正確性というよりはむしろ、答えに行き着くまでの過程、すなわち「論理の正確性」が求められる
といった具合です。
では、私なりの「算数」と「数学」の違いを。
◇ 算数は「論理」を学び、数学では「理論」を学ぶ
具体例でお話ししましょう。
——————————-
Xさんの家族とYさんの家族が集まって、8人でホームパーティを開きました。
Xさんの家族はサンドイッチをそれぞれ2個ずつ、Yさんの家族はおにぎりをそれぞれ4個ずつ持ってきました。
サンドイッチとおにぎりの数を足すと26個でした。
XさんとYさん、それぞれ何人家族でしょうか。
——————————-
大人である私たちは、当然こう解こうとします。
X+Y=8
2X+4Y=26
はい、中学校の「数学」で最初に習う、シンプルな連立方程式ですね。
移項して「Y=8-X」ですから、「2X+4(8-X)=26」で、そこから「2X-4X=26-32」。
そして「2X=6」なので「Xさんは3人家族でYさんは5人家族」となります。
では、「算数」で解こうとしたらどうなるのか。
たとえばこういう解き方ができます。
・全員がXさん一家だとしたら、食べ物は16個。
・全員がYさん一家の場合は、食べ物は32個となり、その差は6個。
・Yさん一家はXさん一家より2個多く持ってくるので、Yさん一家がひとり減る毎に2個食べ物は減る。
・差が6個ということは、6÷2でYさん一家が3人減れば26個になる。
・よってYさん一家は5人家族で、Xさん一家は3人家族。
面倒くさいですね(笑)
方程式という「道具」を使えば、もっと短時間で解けるのに!
これでなんとなくおわかりいただけたでしょうか。
「算数」は、与えられた情報から、まず前提条件を明確にする必要があります。
そしてそこから「~だとすると、○○になる」と考えを進め、そこからさらに「だとすると…」と、まさに「筋道を立てて考える」ことで答にたどり着く。
「筋道を立てた考え方」を考える、これこそ「論理」を学ぶことです。
それに対して「数学」は、簡単に解くための「方程式という道具の使い方」、つまり「理論」を学ぶものなのです。
ちょっと補足しておきます。
「理論」は「論じられる理(ことわり)」であり、「論理」は「理(ことわり)に基づいて論じること」と解釈できます。
そして「理(ことわり)」とは何らかの法則を意味しますから、ここから「理論とは、言葉によって説明できる何らかの法則性、つまりある分野における知識体系を意味する」と定義することができます。
それを踏まえて「理(ことわり)に基づいて論じること」を考えると、「論理とは、何らかの法則性に基づいて論じたり考えたりすること、つまり筋の通った説明や思考の「やり方」を意味する」と定義できます。
だから英訳すると「理論=Theory(セオリー)」、「論理=logic(ロジック)」なわけです。
話を戻すと、ここから「数学は理論(方程式や関数などの知識体系)を学ぶもの」であり、「算数は論理(筋道を立てた説明や考え方)を学ぶもの」、というのが私の考えです。


もちろん、私の考えが唯一の正解だとは考えていません。
しかし…ここで文科省の学習指導要領を見てみましょう。
————————————–
<算数>
算数的活動を通して,数量や図形についての基礎的・基本的な知識及び技能を身に付け,日常の事象について見通しをもち筋道を立てて考え,表現する能力を育てるとともに,算数的活動の楽しさや数理的な処理のよさに気付き,進んで生活や学習に活用しようとする態度を育てる。
————————————–
————————————–
<数学>
数学的活動を通して,数量や図形などに関する基礎的な概念や原理・法則についての理解を深め,数学的な表現や処理の仕方を習得し,事象を数理的に考察し表現する能力を高めるとともに,数学的活動の楽しさや数学のよさを実感し,それらを活用して考えたり判断したりしようとする態度を育てる。
————————————–
私の定義って、悪くないと思いませんか? (^^;;;
…というのは半分冗談ですが、重要なのは定義の正しさではありません。
最初に述べたように、言葉の定義を考えることそのもの、そして「その考えるプロセス」が重要なのです。
「そういえばこれって…」と疑問を持ち、何らかの考え方を使って諦めずに考え抜く。
そのひとつの「教材」が、この類義語トレーニングなのです。

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