ファカルティズ・コラム
2018年10月23日
「シャルパンティエ効果」を活用する
実演販売士。
流暢かつ軽妙なトークで店頭販売を行うプロフェッショナルです。
最近ではテレビショッピングでも活躍し、またそのカリスマとも呼ばれる方が番組で特集されることもあります。
販売のプロである同時に、説明のプロとも言えるでしょう。
さて、実演販売士のルーキーが、ある日水道の蛇口に取り付ける「節水アタッチメント」の説明でこういう説明をしたとしましょう。
「このアタッチメントを平均的なご家庭で朝夕の調理と食器洗いなどに使用した場合、1日あたり平均4.5リットル、1年間に換算すると、なんと1,640リットルもの節水になります!」
…この説明はいただけませんね。
いかに軽妙な口調だったとしても、お客さんはこう感じるでしょう。
「1,640リットルって言われても、なんかピンとこないわねえ」
この説明のどこに問題があったのか。
そう、どんなに事実に基づき、そして具体的な数字で説明しても、相手がその数値にピンとこなかったら意味がないのです。
「1,640リットル」と聞いて、なんとなく「かなり多い」というのはわかっても、その多さが「実感できない」という人がほとんどでしょう。
さて、野菜ジュースのCMで、こんな表現をしていたらどうでしょう。
「ビタミンCが、なんと1.8グラムも入ってます!」
この表現で、「そんなにたくさんのビタミンCが!」と感じ、「体によさそうだから買おうかな」なる人はほとんどいないでしょう。
それどころか、「たった1.8グラム?」と感じる人の方が多いはず。
では、こちらの表現だったらどうでしょう。
「ビタミンCが、なんとレモン100個分も入ってます!」
これなら、多くの人が「そんなにたくさん!」と感じるはずです。そして「体に良さそうだから買おうかな」となる人も出てくるでしょう。
単に数字が示されるだけでなく、それが自分がイメージしやすい単位に置き換えられると、私たちはその意味を実感しやすくなります。
これを「シャルパンティエ効果」と言います。
どんなにそれがすごい数字だったとしても、そのすごさが実感できなければ、数字で説明する意味がありません。
「オーストラリアの山火事で、約4,600平方キロメートルが焼失しました」と言われてもピンときませんが、「オーストラリアの山火事で、東京と神奈川を合わせたのと同じ面積が焼失しました」と言われると、「そんな広大な土地が!」となるのも、同じシャルパンティエ効果です。
「東京ドーム○○個分」も良く聞く表現ですよね。
実際には東京都や東京ドームの面積など知らない人がほとんどです。
しかし重要なのは「すごく広い感じがする」ことであり、広さを実感してもらうのが説明において重要ならば、このシャルパンティエ効果は活用しない手は無いと言えるでしょう。
このシャルパンティエ効果、先の野菜ジュースの例でおわかりの通り、商品の宣伝文句にはよく使われています。「しじみ2000個分のオルニチン」なども同じですね。
だから先の実演販売士も、こう言えば良かったのです。
「このアタッチメントを平均的なご家庭で朝夕の調理と食器洗いなどに使用した場合、1日あたり平均4.5リットル、1年間に換算すると、なんとお風呂1週間分の節水になります!」
では、これを私たちが仕事で活用するとしたら?
たとえば「コスト削減に繋がる仕組み」や「顧客数を増やすアイデア」を社内で提案する
場面では、どのように応用すればいいか、それを考えてみてください。
たとえば、こういう言い方はどうでしょう。
「コスト削減効果は、当社の人件費50人分に相当します」
「顧客数のアップは、東京ドームの収容人数の10倍にもなります」
また問題を過小評価する人に対して「これは、わが社の主力商品1ヶ月分の利益をどぶに捨てているのと同じです」といった使い方もできますね。
ビジネスでシャルパンティエ効果を使うのであれば、やはり「金額」「人数」「時間」に換算すると、「ピンとくる」伝え方ができる場合が多いでしょう。
ぜひ、説得力を上げる手段の一つとして活用してみてください。
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~稲盛経営哲学を出発点として~
劉 慶紅
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
日本経営倫理学会常任理事
稲盛経営哲学に学びながら、人間性を尊重し、利潤追求と社会貢献の統合をめざす経営学理論を構築する、新論が真論となり、不易流行の経営学として結実することを目指して。
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福澤 克雄
(株)TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部、演出家・映画監督
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