ファカルティズ・コラム
2021年11月01日
若者の政治参加を促すには
皆さん、選挙には行きましたか?
私も昨日投票に行きましたが、投票率は前回の衆院選は上回ったものの、個人的に予想した60%には届きませんでした。
とは言え、実数としては前回からの増加は約230万人ですから、少しずつでも有権者の意識は変わりつつあると言えるのでしないでしょうか。
ちなみに投票率については、時事通信の「戦後3番目の低水準か」というツイートに対して「投票した有権者数は前回選挙より約230万人増加って書くと印象変わるよね」というリプライが付き、さらにそれに「マスコミがパーセンテージで語るときは実数を見ろ、数で語るときはパーセンテージを見ろ、というやつだ……」というリプライが付いていたのには笑いました。
しかしその件だけでなく、低投票率についてはマスメディアの罪も大きいと思うのです。
上図は前回の衆院選における年齢別投票状況ですが、19歳から34歳までの、いわゆる若者層の投票率が低いのが一目瞭然です。
だからこそ様々な人や団体が若者の投票、つまり政治参加を促す活動を行っていたわけですが、まだまだその努力は実を結んでいません。
では、なぜ若者たちは選挙に行かないのか。
大阪大学の吉川教授が2018年に行った調査と、「明るい選挙推進協会」が前回の衆院選後に行った調査から見えてくるのは、「投票率と学歴との相関関係」です。
大学/大学院の在学/卒業生に比べ、中学/高校の卒業生は、明らかに投票に行っていないのです。
子どもと親の学歴が相関関係にあることを考えると、「親が高学歴のある程度裕福な家庭に育つ」ことが、政治参加の意識を高める結果となっています。
しかしそれは反対に「最も公的支援が必要な人ほど政治への参加意識が低い」という、なかば本末転倒の状況となっていることを表しています。
以下の図はBuzzFeed JapanとYahooニュースが共同で行ったアンケートの結果です。
選挙に行かないと決めている人の「行かない理由」は
(1)投票したい候補者・政党がない
(2)投票しても何も変わらないと思う
(3)忙しくて時間がない
(4)政治は自分の生活に関係がないと感じる
が上位で、これも「最も公的支援が必要な人ほど政治への参加意識が低い」とフィットする結果となっています。
ここで話を戻しましょう。
私が「低投票率についてはマスメディアの罪も大きい」と言うのは、マスメディアがこの(1)~(4)の理由を「違うんだよ」と言っていないことにあると考えるからです。
(3)については不在者投票があるのですから、その周知にもっと力を注ぐべきです。
(とは言え、この「時間がない」は単なる言い訳である人も多いと思いますが)
(1)(2)(4)に至っては、単に「もっと若い人が投票して世の中を変えないと」とか「君たちの未来のために」というきれい事の抽象論しかメディアから聞こえてこないのが問題です。
学歴の高くない若者が「自分ごと」としてとらえられる具体例がなければ、投票所に足を向けることには繋がりません。
さらに言うと、マスメディアが意図的に政治家のイメージを低く貶めているのも問題です。
政治家が取り上げられるのは、選挙以外では失言に不祥事と、なかば「叩ける部分を探して報道する」のが常態化しています。
確かにとんでもない政治家はいます。
しかし、メディアでは名前が出てこなくても、業界やある層の人々のために裏で一生懸命に働いている政治家も、それ以上に多いのです。
「政治家なんてろくなものじゃない」と子どもの頃から親やメディアにすり込まれた人に、いくら「君たちの未来のために」と言っても鼻で笑われるだけです。
だから必要なのは、そうした「知名度の低いちゃんとした政治家」に光を当てることです。
「ブラタモリ」や「昆虫すごいぜ!」のようなNHKの番組だけでなく、「博士ちゃん」や「プレバト」のような知的エンタメも人気ですから、バラエティ仕立てでちゃんとした政治にスポットを当て、そうした政治家が若者にも関係の深い分野で実績を残していることを紹介する。政党の偏りなくやれば良いし、放送倫理もクリアできるのではないでしょうか。
若者のテレビ離れが懸念されるのであれば、YoutubeやTikTokなども活用すれば良いのです。視聴率が…という心配はわかりますが、マスメディは「公器」であり、重要なのは視聴率より「国民の政治参加」のはずです。
もちろんこれで一気に若者の政治参加が進むとは思いません。
しかし、今から始めないと、いつまでたっても「政治なんて関係ない」と感じる人が増えるだけだと思うのです。
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福澤 克雄
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