KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2022年10月26日

Z世代のネットリテラシーは意外と低い?

先日「Z世代のマーケティング」に関するオンラインセミナーに参加しました。
ご存じの通りZ世代とは、1995年以降に生まれたデジタルネイティブの世代であり、今後の消費を牽引していく存在として注目されています。
私もイノベーションについて研究する立場として、またコミュニケーション系の研修ではしばしば「Z世代がわからない」と相談される立場として、Z世代に関する情報や考え方にはできるだけアンテナを張るようにしています。
そのセミナーでは、パネルディスカッションの登壇者もZ世代か少し上の世代で構成されており、彼ら/彼女らの本音が聞ける良い機会となりました。
しかし、参加する中で私の中にひとつの「とんでもない」仮説が浮かんできたのです。
GenZ.jpg

それは…
「Z世代のネットリテラシーは意外に低い?」
という仮説でした。


先に述べたように、Z世代は「デジタルネイティプ」、つまり物心ついた頃からパソコンや携帯電話が身近にあり、インターネットも「当たり前に存在した」世代です。
ですからDX時代において、デジタルデバイスを使いこなすZ世代の動向は、他の世代のマーケティングを考える上でも参考になります。
また、SNSなど拡散力の高いネットツールを活用した発信力の高さもZ世代の特徴です。
テキストだけでなく動画も駆使して自分の想いや考えを抵抗なく発信し、その情報を取捨選択して吸収するのが、Z世代のコミュニティの特徴と言われています。
発信した内容に影響されやすいことも特徴で、Z世代が発信する内容にも注目が集まっています。
昨年の「TikTok売れ」という現象もそのひとつの象徴と言えますし、本セミナーでも「Z世代の中で話題になることが、他の世代に波及してムーブメントとなる」という知見も紹介されていました。
これらのことから、一般的にZ世代は「ネットリテラシーが高い」と考えられています。
情報の真偽を見極める力も高く、フェイクニュースやフィッシングサイトにも引っかからない。
また、SNSの使い分けにも長けており、「トレンド店はTikTok、作業カフェはTwitter、旅行先のお店はInstagram、お家カフェの方法はYouTube、店の営業時間はGoogleMap」といった声もZ世代から上がっています。
しかし、セミナーに参加する中で、私の中にモヤモヤが溜まっていきました。
そして自身もZ世代であるコンサルタントのヒトコトで、そのモヤモヤは形になっていきました。
それが「Z世代のネットリテラシーは意外に低い?」で、そのきっかけになったヒトコトが
「Z世代は広告を嫌う」
でした。
いや、これ自体は頷けるのです。
「これいいよ」といった「売り文句」を「押しつけ」と感じる。
それは自分でも発信しているので、「受け身」になってしまうことを嫌うから。
また、SNSで誰をフォローするかも自分で決めているので、「ほしい情報は自分で探す」ことを重視する。
なるほど、確かに(一見)リテラシーは高い(ように見える)。
だから企業はZ世代にリーチするために「広告っぽくない広告」に力を入れる。
それは著名Youtuberなどを使った「インフルエンサーマーケティング」であったり、TikTok他の動画共有サイトの「ほぼドラマ」のストーリー仕立てCMであったり。
それがリツイートされたりシェアされてバズればOK!




…いやそれ、結局「踊らされて」ません?!
ステマとは行かなくても、確かに押しつけではなくても、撒き餌に「釣られてる」わけでしょ?
それって本当に「自分で選んでる」と言えますか?
本当に「ネットリテラシーが高い」と言えますか?
しかし、ここまで書いてからふと思いました。
Z世代は「わかってて釣られてる」のかもしれない。
「押しつけが嫌い」と言うよりは、「自分が共感できない世界観の押しつけが嫌い」なだけかもしれない。
「あえてリツイート祭りに乗る」ように、トレンドを「創る」ことにはあまり興味がなく、誰かが創った「小さな波を大きくする」ことに意味を感じるのがZ世代なのかもしれません。
そしてそれこそが「Z世代のマーケティング的役割」と考えても良いのかもしれません。

メルマガ
登録

メルマガ
登録