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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2023年01月02日

One for all, All for one

皆さんあけましておめでとうございます。
あっという間の2022年が終わり、2023年が来てしまいました(笑)
2022年も相変わらずコロナに翻弄された年でしたが、少しずつコロナに振り回されない社会になってきたのは喜ばしいことです。
またサッカーのワールドカップでは、日本がドイツやスペインに勝つという(申し訳ないのですが)思いもよらぬ躍進を遂げ、腱鞘炎になるほど手のひら返しをしたのは私だけではないでしょう。
さて、2023年最初のエントリーでは、同じワールドカップでもラグビーにおいて浸透したこの言葉を取り上げてみたいと思います。
それは「One for all, All for one」。
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ラグビーにおけるチームワークのポイントを表すためによく使われる言葉ですが、実はこれを「一人はみんなのために、みんなは一人のために」と訳すのは間違っているそうです。
本来の意味は「一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために」だそうです。確かにこちらの方が「みんなは一人のために」のような「状況が思い浮かべにくい」感覚はありません。
意訳するなら「目的を全員で共有し、それに向かって全員が支え合う」。
「One for all, All for one」とは、ラグビーだけではない全てのチームスポーツの、そして私たちの『仕事』におけるチームワークの本質を語る言葉だと言えるでしょう。
当たり前ですが、仕事はひとりではできません。組織に属している人間はもちろんのこと、フリーランスで仕事をしている人も、その仕事の依頼元や別のフリーランスの誰かなどと一緒に仕事をし、協力し合いながら成果を出しています。「One for all, All for one」の精神はやはり重要です。
しかしながら現実を見てみましょう。あなたが取り組んでいる『仕事』において、本当に「ひとつの目的のためにみんなが支え合う」状況が実現できていますか?
 「変更点はもうちょっと早く連絡してほしかった」
 「優先順位が違うんだよなあ」
 「若いからこその意見がほしいのに…」
等々、あなたが支え合って仕事に取り組む部下や同僚、上司、そして他部門や協力会社のメンバー、あるいは顧客に対して「言いたいこと」が山ほどあるのではありませんか?
そしてそんな様々な人々も、あなたに対して言いたいことはあるはずです。
しかしここで注意すべきは、「言いたいこと=言うべきこと」ではない、ということです。
実際、「言いたいこと」が「言う必要の無いこと」であったり「言わない方が良いこと」であるケースも多く、「言わなきゃ良かった」とか「ヒトコト多かった」と後悔した経験は誰しもあるはずです。
では自分が今「言いたいこと」が「言うべきこと」か否か、はどう判断すれば良いでしょう。
私は、その判断にはステップがあると考えています。


1. 単なるストレス発散ではないか?
たとえば納期を過ぎてから資料を提出してきた部下に「遅いんだよ!」と言うのは、指導ではなく単なるストレス発散です。
イライラしながら待っていたのであれば、ヒトコト言ってやりたいのは理解できます。
しかしそれで部下が萎縮してしまったり、あなたとの距離を取るようになれば、何の意味もありません。
その場の感情に流されない、まずこれが最初のハードルです。
2. ポジティブな効果が期待できるか?
先の例で、部下もわかっていて「すいません…」と持ってきたとしたら、そこで「遅いんだよ!」と言ったとして何かプラスがあるでしょうか。
仕事において相手に対して何かを伝える場合、そこには必ず「目的」があるはずです。
目的とは、相手が自分の望む行動を取ること。たとえば「納期を守る」や「提案を承認する」「言われた通りにやる」などです。
自分がこれを言うことで、相手が自分の望む行動を取るようになるのか、この自問自答に自信を持って「Yes」と答えられないとしたら、それは「言うべきこと」とは言えません。
この2つのハードルを越えられた「言いたいこと」が「言うべきこと」です。
そして「言うべきこと」をきちんと伝える。
これが『フィードバック』です。そして「フィードバックし合う」ことができるチーム/組織こそ「風通しが良い」チーム/組織であり、高いパフォーマンスを発揮し、その結果高い成果を出すことができる、「One for all, All for one」が実現するのです。
とは言え、「言って相手が怒ったらどうしよう…」とか、人間関係の悪化を心配するのは当たり前ですし、「本当にここを指摘すべきか?」とその内容に自信が無いこともあるでしょう。
そう、「言うべきこと」が明らかになったとしても、その後「それをどう伝えるか」が新たなハードルとなります。
この「伝え方」については、このプログでも何度も取り上げてきましたので、右上の検索窓で「伝え方」や「説明」などで検索してみください。
ポイントは「わかりやすい論理性の高さ」と「共感性の高さ」です。
2023年、皆さんが「言うべきこと」を適切な伝え方でフィードバックする。
その結果メンバーのパフォーマンスが上がったり、あなたがやりたいことができる。そしてそれがあなたや組織の成果となって実を結ぶ。
それが実現することを祈ってたいます。

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