KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2007年11月22日

“Tempered Radical”を創りたい

前回のエントリーでは、『KYからAKYへ』というタイトルで、以下の提言(というほど大げさなモノではありませんが)をさせていただきました。
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KYでないこと、つまり「空気を読んだ発言」がすべて良いわけではない。
時には、「空気を読んだ上でその空気を乱す」ことも必要。
会議で皆が「それでいいじゃん」となっている時に、「やっぱりオカシイよ」と言うこと。
教室でイジメが広がりつつある時に、「やめようよこんなこと」と言うこと。
こうしたAKY(あえて空気読まない)であることが求められるシーンも多いはず。
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今年のペガサス・カンファレンス(組織変革・システム思考関連の国際会議)に参加した、日本ファシリテーション協会のおふたりからのご報告によると、今年のカンファレンスでは“Tempered Radical”が中心的なキーワードとして挙げられていたとのこと。
“Tempered Radical(私は“調和的過激派”と和訳しました)”とは、スクラップ&ビルドで組織を変えるのではなく、組織の方向性に合った小さな変革を成功させ、それを積み重ね、周囲に広げていくことで、最終的に大きな変革を成し遂げようとするリーダー像を表現したキーワードだと言えます。
さて、この“Tempered Radical”であるための要件こそ、AKYだと思いませんか?


組織の中にいて、「ここのままじゃいけない」と思っていても、問題意識を感じていなさそうな上司や同僚を見ると、「まあ俺ひとりが騒いでも何も変わらないし」と思ってしまう。
そして空気を読んで、今まで通りに粛々と仕事をこなすのみ。
せいぜい飲み屋で「ウチの課長がさあ」と同期で愚痴を言い合う程度で、何かを変えるための具体的行動は起こさない。
これでは何も変わりません。
誰かが変えてくれるのを待っているだけでは、結局は同罪なのです。
だからまずはAKYです。
「あえて空気読まない」(実のところはちゃんと読んだ上での「あえて」なのですが)で、まずは自分自身の仕事の進め方やコミュニケーションの取り方を変える。
そうして小さな成功体験を積み重ね、周りの人々が真似をしたり、アドバイスを求めてくるようになると、同じ成功体験を持つ同志が増える。
そのネットワークが広がることで、徐々に組織全体も変わっていく。
変革のきっかけになった最初のひとりこそ、“Tempered Radical”です。
時間はかかるかもしれませんが、これが現実的な組織変革のステップのはずです。
もちろん社長に直訴、という手もありますが、ハードルの高さは“Tempered Radical”の比ではないはずです。
つまり、誰でも“Tempered Radical”になれるのです。
途中で諦めずに、少しずつでも自分を変えていく継続する力さえあれば。
そして、講師という私の仕事は、“Tempered Radical”を創ることだと思うのです。
研修やセミナーのアンケートでは、「大切なスキルだと思うが、今の職場では使えない(使っても抵抗される)」「まず上司に受けてほしい研修だった」という感想をよくいただきます。
しかし、あえて言わせていただくと、こうした感想は責任逃れと同義です。
周りが抵抗しても、重要なスキルならなぜ使わないのでしょう?
周りから浮きたくないから? 上司に睨まれたくないから?
気持ちはわかります。
私も昔、研修のアンケートで同様のことを書いた記憶があります。
でも、それでは何も変わらないことに気づいたのです。
生意気と言われました。「正しいことが良いこととは限らないぞ」とも言われました。
今振り返ると、私は“Tempered Radical”になろうとしたのだと思います。
その時の自分のやり方が良かったとは思いませんが、それでも私は“Tempered Radical”を増やすことで、企業や社会に貢献したいのです。
しかし私も、「とにかく平穏無事なら良い」「周りがどうなろうと知ったことではない」「人のために何かを変えようとは思わない」という人まで、「“Tempered Radical”になれ」と説得するつもりはありません。
しかし、私の研修・セミナーを受けた方には、何かひとつでも知識やスキルを持ち帰ってほしい。そしてそれを実践し、少なくとも自分にとってプラスの方向で活かしてほしい。
そうしてまずは自分(の意識と行動)が変われば、周りも少しは変わる「かも」しれない。
別に肩肘張って、「よし、“Tempered Radical”になるぞ」と思わなくても結構です。
自分は意識していなくても、結果的に自分の行動で組織が少しでも変われば、それは立派な“Tempered Radical”なのですから。

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