ファカルティズ・コラム
2007年12月20日
リスク管理が“甘い”とは?
毎年この時期に発表されている『今年の漢字』ですが、2007年は“偽”に決まりました。
今年頻発した食品偽装や、年金問題、薬害肝炎など、「隠す・偽る」ことを、これだけ責任ある企業やお役所がやっている、という事実が明らかになった年を反映した文字と言えるでしょう。
しかしながら、なぜこうした「隠す・偽る」ことが後を絶たないのでしょう。
松下電器やジャパネットたかたのように、隠さなかったことで却ってイメージが上がった企業すらあるのに、隠した企業が次々にバッシングを受けているさまを目の当たりにしているのに、なぜ隠し続けて結果的に同じ轍を踏んでいるのでしょう。
特に「偽装は現場が勝手にやった」という念書を、パート社員にまで書かせたケースに至っては、多くの方が「考え甘過ぎ。普通やらないだろうそんなこと」と思われたはずです。
「考えが甘い」
様々な不祥事は、こうした『リスク管理の甘さ』があるのは確かですが、その“甘さ”はどうしたらなくすことができるのでしょうか。
さて、リスクマネジメントにおいてまずやるべきことは、リスクの洗い出しです。
これがモレなくできていないから、想定外の状況、つまり「まさかそんなことが起こるとは!」となってしまうのです。
不祥事を起こしてしまった企業は、このリスクの洗い出しがモレなくできていなかったために、発覚してから慌てていると考えられます。
そしてなぜその洗い出しができていなかったかというと、まさに「考えの甘さ」がその要因です。
たぶん彼らはこう考えていたはずです。
「ウチはたぶんバレないだろう」
「ウチには問題はないだろう」
「パートなら泣き寝入りするだろう」
「この程度なら叩かれないだろう」
そう、この「~だろう」という考え方こそが、“甘さ”のあらわれなのです。
自動車の運転で、「だろう運転をやめよう」というのを聞いたことがありませんか?
「誰も飛び出してこないだろう」
「まさかあの車は右折しないだろう」
と甘い考えをしていると、事故になってしまうのです。
だから我々は、「かもしれない運転をしましょう」と教わるのです。
「誰か飛び出してくるかもしれない」
「あの車が急に右折してくるかもしれない」
と考えていれば、それに対して体と心の準備ができ、適切な回避行動がとれるのです。
これ、企業のリスクの洗い出しにも有効です。
「~だろう」と考えるのでなく、「~かもしれない」と考えると、様々なリスク要因が挙げられるはずです。
ことリスクの洗い出しについては、ポジティブかつ性善説に立った考え方はタブーです。
あえてネガティブかつ性悪説に立って、「~かもしれない」とあらゆる可能性を想定して洗い出さなければなりません。
洗い出したものすべてに対応するのは確かに難しいでしょう。
ですから、洗い出した後で、そのリスクが顕在化する確率を考えて優先順位をつけて対応策を考えていけばよいのです。
まずは「モレなく洗い出す」ことが第一歩です。
皆さんの仕事でもこれは応用できるはずです。
そして仕事だけでなく、プライベートにも。
「こういうことをしたら彼女が怒るかもしれない」
なにごともリスク管理は重要ですから(笑)
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