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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

ファカルティズ・コラム

2008年01月11日

「考えさせ方」を考える

皆さん、あけましておめでとうございます。(といってももう松の内も過ぎましたが)
今年もこのブログにおつきあいいただければ幸いです。
私は新年早々から、企業研修に丸の内での公開セミナーと、正月ボケもあっという間に吹っ飛んでしまいましたが、その公開セミナー(目に見えるロジカルシンキング)の懇親会で受講生の方とお話しした内容について、今日は書かせていただきます。
その方曰く、「部下への考えさせ方について、今まで仕えた上司には2通りのタイプがいた」そうです。
(1)事細かに仕事の指示を行い、あまり部下に考えさせないタイプ
(2)テーマのみ与えて、あとは部下に考えさせるタイプ
皆さん、この2タイプではどちらが望ましいと思われますか?
そして部下をお持ちの方であれば、自分はどちらのタイプだと思われますか?


2択の問いをしておいて申し訳ありませんが、私はこの2タイプ、どちらも「望ましいとは言えない」と思います。
「どちらも両極端過ぎる」からです。
事細かに指示をしていれば、確かに部下は楽ですし、仕事のミスも少なくかつ早いでしょう。
しかしこれを続けていると、部下は段々と自分の頭で考えなくなりますし、またいつでも“待ち”の姿勢で仕事をするようになってしまいます。
つまり(1)のタイプでは、部下を育てることはできませんし、結果的に上司はいつまでたっても楽になりません。
また、「自分で考えろ」と突き放すだけでは、一部の優秀な人間以外はミスを連発したり、非効率的に仕事をしてしまいます。部下によってはかなりのストレスを感じてしまい、メンタル面で問題を抱えてしまうことにもなりかねません。
つまり(2)のタイプでは、部下の育成を考えた親心が却って裏目に出てしまう場合があり、ハイリスクハイリターンと言えます。
そこで私は、「切り口を与えて考えさせる」「お手本を示して考えさせる」のが望ましいと考えます。
以前研修の受講生から、「部下に『なぜ?』を聞いても、答が返ってこない」と相談されたことがありました。「できるだけ自分で考えてもらおうと、いろいろ問いかけをしているんですが」とも、その方は言われてました。
その時の私のアドバイスが、「切り口を与えて問いかけたらいかがでしょう?」でした。
問題の原因を「なぜ?」と問いかけることは、このブログでも再三言ってきたように、とても大切です。
ただ、単に「なぜ?」と問いかけただけでは、考える範囲が広すぎて、うまく考えられない人が多いのです。イシューが定まっていないのですね。
たとえば、「じゃあ内部要因と外部要因に分けて考えてみようか。まず内部要因としては何が考えられる?」と問いかけてみたらどうでしょう。
考える範囲が絞られて、ずいぶんと考えやすくなるはずです。
これが「切り口を与えて考えさせる」ということです。
「なぜこれをやるべきか考えてごらん」と言う時に、併せて「効果と効率の側面に分けて考えると?」というのもあるでしょう。
2つめの「お手本を示して考えさせる」に関しては、実践されている方も多いでしょう。
「たとえば○○といったことも考えられるだろ?」というやり方です。
しかし、そこで答の一つを上司が提示してしまうと、部下はそれに縛られてしまいます。
「答はそれか」となってしまい、それを上回る答を探すことができなくなってしまうのです。
ですから、デキる上司は「良い答」を提示しません。
「たとえばね・・・」と言いながら、わざと非現実的だったり、とんでもなかったりする答を例示します。「まあこれはありえないけどな」などとオチをつけながら。
そうすると部下も気楽に考えられるようになります。
また、他のやり方としては、全く別のテーマを使ってお手本を示すのも良いでしょう。
たとえばある商品について考えさせる時に、別の商品を例にとってお手本を示すというのは、答を提示せずに考え方だけを提示する良いやり方です。
これについては、メタファー(見立て)を使ってお手本を示すのもオススメです。
たとえば組織上の問題を考えさせる時に、「たとえばサッカーのチームで考えるとさ、○○っていうのもそうかな」と言ってあげるだけで、すんなり自分なりの答が出せたりします。
このメタファーについては、またいずれお話ししようと思います。
さて、新年最初のエントリーは、「考えさせ方」について考えてみました。
仕事での部下との接し方だけでなく、プライベート、特にお子さんの教育についても仕える部分だと思いますので、参考にしていただけたら幸いです。
では、今年もよろしくお願いします!

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