ファカルティズ・コラム
2006年12月26日
「のだめカンタービレ」に感謝
フジテレビの所謂月9ドラマ、『のだめカンタービレ』が昨日最終回を迎えました。
このドラマ、個人的に人生で最もハマった作品となりました。毎回家族で爆笑し、そして感動して泣きました。来年度新規開講ブログラムの教材作りに集中しなければいけないのですが、爽快感と喪失感で少し放心状態です(笑)
未見の方のために簡単にどんなドラマかを説明すると・・・
ある音楽大学を舞台に、指揮者を目指す天才で完璧主義のイケメン学生(千秋真一)と、ゴミ溜めのような部屋に暮らす変態天才ピアニスト(野田恵)の、師弟とも恋愛とも違う微妙な関係を軸に、個性的な学生達との友情や葛藤をクラシックの名曲に乗せて描く、大ヒットマンガを原作とした青春音楽コメディ。
うーん。でもこれではこのドラマの面白さを1%も説明できていませんね。
視聴率20%越えを連発したわけでもありませんので、月9としては「大成功!」というわけではないでしょう。しかし10月の放映開始を境に、巷のクラシックコンサートのチケットの売上は伸び、ドラマで演奏された名曲を集めたCDは歴代クラシックアルバムの売上記録を塗り替え、ついには楽譜(特にピアノ譜)まで品薄に・・・と、なかばブームともいえる状況が生まれています。かくいう我が家もすっかり「のだめブーム」で、原作はドラマ化以前から全巻揃えて愛読していましたが、ドラマが始まってからはクラシックの名盤CDやピアノ譜等の購入にウン万円を費やす始末(笑)。
そしてドラマを観た後には、ネットで同好の士達と感動を分かち合っていました。
では、なぜこのドラマがここまで多くの人の心をとらえ、そして経済効果まで生み出したのでしょうか。
もちろん人それぞれポイントは異なるのでしょうが、我が家に限定して考えてみると、『家族のコミュニケーション・ツール』として最高の作品であったと言えます。
元々我が家は「私:学生時代から映画制作とバンド活動に明け暮れ、現在も作曲が趣味。」「妻:学生時代はドラマのエキストラ。現在はコーラスサークルで活動」「娘:ミュージカルで舞台経験」というように、音楽や演劇という共通点があったこともあり、
「(配役未公開時に)黒木クンはどの役者さんが演じるべきか」
「ベートーヴェンの7番はクライバー指揮のものが名盤らしい」
「上野樹里の表情の変化はすごい。神か?」
「あそこで使われてた曲は・・・そうそうブラームスのハンガリー舞曲5番だ!」
という会話で盛り上がることができました。
ですが、これはたぶん我が家に限ったことではなかったように思います。
このドラマには、一般的な「恋愛・友情・挫折・葛藤」という要素の他に「音楽」があり、それもクラシックの演奏家の卵達という、あまり一般的に知られていない世界が舞台です。それをかなり丁寧に描写しながらコメディタッチで描いていますので、「深い世界の間口を広げた」ことで多くの視聴者がその世界に入り、そしてその中で自然と教え合ったりという情報の交換・共有のコミュニティが、ネットを中心に形成されたことが大きかったと考えます。
・・・職業病ともいえる、野暮な分析はここまでとしておきましょう。
もちろん、こうしたコミュニティが形成されるためには、ドラマそのものの質の高さが必要条件ですから、原作者をはじめとしたスタッフ、そしてキャスト達には深い敬意と感謝を表したいと思います。
本当に最高の楽しいドラマをありがとうございました。
そして願わくば続編を!
(原作での次の舞台であるパリ編は、かなりハードルが高いのはわかっていますが(笑))
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劉 慶紅
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
日本経営倫理学会常任理事
稲盛経営哲学に学びながら、人間性を尊重し、利潤追求と社会貢献の統合をめざす経営学理論を構築する、新論が真論となり、不易流行の経営学として結実することを目指して。
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福澤 克雄
(株)TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部、演出家・映画監督
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