ファカルティズ・コラム
2008年09月19日
師匠と反面教師
人として成長したい(知識やスキル、マインドなどを高めたい)時、我々はしばしば『師匠』と『反面教師』を設定します。
前者では、たとえば身近な仕事のできる先輩や上司を見つけ、「この人のようになりたい」という意識で仕事の進め方を真似たり、教えを請うたりします。
別に仕事だけの話ではありません。
思想や哲学、そしてライフスタイルやファッションでも、「あの人のようになりたい」と模倣することは誰でもやったことがあるはずです。
そして後者で代表的なのは、親や上司に怒りや失望を感じ、「この人のようにはなるまい」と、意図的にその人と違うやり方や道を選ぶことでしょう。
こうして師匠や反面教師を設定するのは、確かに合理的です。
自分の成長した姿を漠然としか描くことができなければ、そこにたどり着くまでの時間が見えないため、モチベーションを持続させるのは難しく、またたどり着くための具体的な解決策を考えるのも難しいでしょう。
ところが師匠(人材開発で言うところのロールモデルですね)というはっきりしたゴールがそこにあれば、頑張ればどのくらいでそこにたどり着くかが計算できます。また師匠の具体的な行動や考え方は既に提示された具体的解決策ですし、反面教師がやることを意図的に避けるのもまた同じです。
ですから、うまく師匠と反面教師を設定できれば、非常に効率的に自分を高めることができるのです。
しかし、これにはリスクもあります。
たとえば師匠だと思った人が、仕事はデキてもかなり強引で、多くの人から反感を買っていたらどうでしょう。
師匠の一挙手一投足を真似ることで、あなたも多くの人から反感を買うかもしれません。
また、反面教師からは本当に何も学ぶことはないのでしょうか。
「この人は鈍くさくてダメだな。こうならないようにしなくちゃ」と思っても、「この仕事はこの人しかいない」という特技を持っている場合もあるはずです。
もうおわかりでしょう。
『師匠』『反面教師』とは人を表す名詞ですが、対象となる人のまるごとを師匠や反面教師と考えてはいけないのです。
その人まるごとを師匠として信奉したり、反面教師として嫌ってしまっては、本来どんな人にも必ずある欠点や長所が目に入らなくなってしまいます。
『師匠』『反面教師』と思った時点で眼が曇ってしまうのです。
「この人のここがサスガだからそこを真似しよう」
「この人のこの行動は考え物だから自分はやらないようにしよう」
こうして部分に分けて考え、そして真似るのが、賢い師匠と反面教師の活用と言えるでしょう。
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