学びの体験記
2011年10月11日
広がる興味、学ぶ楽しさ。
小長井 恵子
仕事に直結しない何かを勉強したく思っていた中、アゴラの講座「阿刀田高さんと読み解く【旧約・新約聖書とキリスト教】」を知り、受講しましたのは昨年の11月でした。このアゴラの門戸を叩いた事で私の興味がどんどん広がった1年となりました。
この講義を受講しましたのは、西洋の絵画、映画や書籍は聖書が下地にあるものが多く原典がわからないと理解ができないと思った事があったことが切掛けですが、「西洋の世界の背景を知り理解深める入門書として新・旧二つの聖書の特徴とあらましを、信仰を離れて解き明かしてみましょう」とのフレーズに魅かれたからでした。そして敷居が高い聖書に触れる良い機会となりました。
実際の講義では先生の著書である「旧約聖書・新約聖書を知っていますか?」を読んで、その感想を話すところから始まりました。受講者の皆様は職業もご経験も異なる方々でしたので同じ本を読んでも興味を持つ視点が異なりました。そのため先生、自分を含めた13人分の異なる視点で聖書を見る事が出来、一人では思い至らない気づきを頂けたものでした。また講義では1人1人が真摯にご自身の感想をお話しくださるのですが、皆さんの熱い語りに自分自身が引き込まれていくのを感じたのを思い出します。
この感想の中では幾つもの新しい視点をいただきました。聖書の内容は勿論の事ですが、イエスキリストとシーザーが同時代の人であった事、聖書がヘブライ語からギリシア語、ラテン語と訳されていった事。ラテン語が聖書の原点だと思っておりましたので大変な驚きでした。またサルトルの実存主義についても先生に分かりやすく解説いただき、キリスト教を理解しないと実存主義の何が凄いのかが分からない事が分かりました。本当に何も知らない自分が恥ずかしいのですが、知らなかった事を知る楽しさをいただきました。
絵画については講義初日に「アートバイブル」という本をご紹介いただきました。これまでは単純に絵画として見ていました作品の出典が聖書であった事がわかり、今までとは異なる視点で鑑賞する楽しみをいただきました。この夏休みにフランスに行った際、ルーブル美術館、オルセー美術館等で本の中の幾つかの作品を鑑賞する事ができ、美術館廻りの楽しさが広がった事が嬉しく思われました。絵画以外でも遠藤周作先生の「深い河」についてのお話、「アーサー王伝説」に含まれる「聖杯物語」、マキアベリの「君主論」など関連する本もご紹介いただき、これらについもて読んでみようと思いました。
この講義では皆さんの感想の中から聖書と対比して中国の古典の1つ「大学」の話が出てきました。熱く語られる「大学」との対比に興味を持ち、中国の古典も学びたいとの思いから今年の4月より田口先生の「人生の戦略書・孫子」を受講いたしました。
この講義の目的は孫子の戦略を学ぶのは勿論ですが、その戦略をいかに人生に落とし込むかというものでした。
「起立、礼、着席」で始まる講義は新鮮でした。ピリッとした空気の中始まる講義は、前回講義の感想と質問から入るのですが、熱い自己の振り返りがあり真摯な気持ちで望まないと失礼になる授業でした。孫子は何としても「勝つ」ことを前提にしている書である事をこの講義で初めて知りました。そして講義が進むにつれ、何れの時代も人間の本質というのは変わらない物だと実感し、それ故に古くから読み継がれている書だとの思いに至りました。
講義の中では、孫子の考えから見た桶狭間での戦いでの信長の動きや、ホーチミンによるベトナム戦争、また毛沢東も孫子を読んでいたとのお話も出てきましたが、それに対応する皆さんの感想も凄いものでした。皆さんの学ぼうという熱い姿勢、惜しみなく自分の意見を述べる姿勢に引き込まれ、授業が終わるとグッタリとなりましたが楽しいものでした。最終的に自分の人生に孫子を落とし込めたか今でもあやふやですが、「愉快に生きる」為の戦略書として講義を通じて通読したことは大きな財産となりました。
阿刀田先生、田口先生の講義で西洋、中国の古典を読み感じましたのは日本の古典を知らないという事でした。古典は読み継がれるから古典となりうることを実感しました事から日本の古典にも興味が広がって行きました。また、阿刀田先生の講義の中で聖書を読むうちにルネッサンスというものにも興味が出てきまして、その為にもキリスト教が始まる以前の古代ギリシアについても勉強したいとの意欲が湧いてきました。幸いにもこの10月に田口先生の講義で「東洋思想と日本文化」が、11月からは阿刀田先生の「古代ギリシア・ローマの知恵」が始まりますので、この機会に学ぶ事に致しました。熱い志を持って参加する皆さんとご一緒講義を受け、更に興味が広がって行く事を楽しみにしております。
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