KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

学びの体験記

2011年08月09日

本物に触れる

吉本恭子

 社会人として日々の生活に追われる私にとって、アートに触れる時間はとても貴重で大切なひとときです。学生のころから様々な国や地域を旅してきました。到底見尽つくせない膨大な美術品に圧倒された芸術の都パリ、クラシック音楽やオペラの生の音に震えた音楽の都ウィーン、現代アートやパブリックアートに心躍ったニューヨーク、芸術遺産の宝庫イタリア、混沌の中に神々の芸術が宿る国インド等々。
 旅で出会った驚きや感動を積み重ねていくうちに、自然にアートをもっと身近なものにしていきたい、日常生活に取り入れていきたいと思うようになり、普段から美術館や演奏会に通う日々を過ごしていました。そんな頃agora講座『アート深耕!芸術からはじまる新しい絆』に出会いました。ただ漠然と好きなものを見たり聴いたりする以上にアートについてもっと深く知りたい、関わっていきたいという気持ちが湧いてきていたのです。


 講座ではアートを日常生活に取り入れることを目的に、創作者の思い、美術館運営、丸の内のパブリックアート、古美術の魅力等を関わりの深い講師の方々による講義とフィールドワークを通じ、「本物」に触れることの大切さを実感しました。その後もagora講座と講座で出会った魅力的な方々とのお付き合いが続いています。
 それからも毎期、agoraのアート講座に参加しています。『オペラ深耕!』では、オペラの歴史・構成・劇場の魅力等を学びながら、現役のオペラ歌手やオペラ研究者のそれぞれの立場からの関わり方や思いを伺い、見どころ満載の総合芸術を観に劇場へ足を運びたくなりました。残念ながら、講座最終回に予定されていた来日オペラ公演が先の大震災の影響で中止となり、同時期に多くの舞台や演奏会が中止または延期になりました。安心して観劇や芸術に接することができる環境がどれほど大切なのかを改めて実感しました。
 『クラシック音楽を100倍楽しもう』では講師であるヴァイオリニスト千住真理子さんを通してクラシック音楽の素晴らしさ、奥深さとともに、全身全霊で理想の音を追究し、音楽・芸術を愛する方々の思いを知ることができました。講座後は「生の音」をもっと聴きたい、素晴しい音に出会いたい、という気持ちで一杯になりました。
 どの講座でも私は話を伺いながら大きな感動の渦に何度も飲み込まれました。素晴らしいもの・美しいものを創りたい・伝えたい・守りたい、という強い思いを幾度となく感じたのです。日々技を磨き、研究し、協力し、時間をかけ、困難のプロセスを経て誕生した「本物」は、後世に引き継がれていきます。芸術作品に限らず「本物」には力があります。そのメッセージを受け取り共有できる自分自身でいられるように、心をオープンにし真摯に向き合う時間や余裕を持ち続けたいと思っています。
 そんなアートや音楽の「力」を受け、前向きになれたり気づきを得たりしてきましたが、講座を経て、いいものを多くの人に伝えたい、アートに何らかの形で携わっていきたい、アーティストたちを応援していきたい、という気持ちが更に強くなってきています。クラシック講座の講義最終回のテーマは「みんなで作るコンサート・プログラム」でした。受講生の様々な楽しいアイデアに、ワクワクしながら千住さんとのコンサートをイメージしていました。
 今、講座で得たことを何かしらの形に活かせたらと、「三味線と三弦の演奏会」を企画しています。日本の伝統楽器である三味線と三味線の元と言われている中国の三弦が、時代と空間を越えて共演します。三味線は歌舞伎等で活躍中の若手演奏者を、三弦は台湾から演奏者を招聘します。手作り感のある温かい演奏会にしたいと思っています。秋の本番では私自身初めて体験する音をじっくり楽しみたいと思っています。ひとりでも多くの方と私自身のチャレンジを共有していただけたらと思っておりますので、ご興味がございましたら、制作ブログをご覧ください。(http://gyoran.exblog.jp)お問い合わせも大歓迎です。
 最後に、MCCの皆様、魅力的な講座を企画していただき大変感謝しています。一緒に受講した素敵な方々、沢山の視点や気づきをいただきました。どうもありがとうございました。繋がり、これからも大切にしていきたいです。

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