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アゴラの集い:ちょっとした好奇心で集う仲間の場

2012年04月10日

O.N

昨年11月から今年2月にかけて、『阿刀田高さんと読み解く【古代ギリシャ・ローマの知恵】』に参加しました。素敵な方々との出会いがあり、新しい言葉への出会いもある。まさに、”アゴラ “という場そのものでした。
“西洋社会の文化や思考・行動原理の基底には、キリスト教の精神と並んで「古代ギリシャ・ローマの知恵」があると言われています。(中略)長年に亘って、西洋古典・教養の啓蒙的な紹介者として活躍してきた阿刀田さんに導かれながら、古代ギリシャ・ローマの豊かな人間性と深淵な思想について思いを巡らせます。”
・・・というこの講座の紹介に釣られるように受講を申し込みました。
ギリシャ・ローマは、高校時代の世界史で学んで以来。興味はあるものの旅行に訪れたこともなく、また演劇なども殆ど観たことがない私。ただ、著名な阿刀田高先生のお話しを直接伺えることで、普段のサラリーマン生活では味わうことのできない何かに出会えるかもしれないという期待からの申し込みでした。


初回、少しばかりの緊張感を持って集まった私たちに阿刀田先生は、「折角の時間を費やして参加するのだから、皆さんの生活のどこかにクリエイティブなものを生み出してほしい」とメッセージ下さいました。また、「この講座への取り組みは各人それぞれのペースで濃淡を付けてくれればいい」とも。大人の講座はこうでなければいけません。
毎回課題図書が提示され、感想・質問など適度な宿題が出されます。事前に提出された質問には、阿刀田先生が一つ一つ丁寧に答えて下さいます。ギリシャ・ローマに直接関わらないような質問に対しても、その質問を幅広く捉えて下さいます。他の受講者の方々の質問が互いに刺激しあい、新しい言葉の発見もありました。
セレンディピティ、演劇における”三一致の法則”、古典があるのはいいことだ、等々。
私が特に印象に残ったのは「古典があるのはいいことだ」で、趣旨は次の通りです。
何か新しい発想が求められた際に、次のように三つの方向で考えを膨らませるとよい。(1)古典に沿って考える、(2)その対抗軸を考える、(3)これらとは別に第三の軸を考える。ここでいう古典は、民族の歴史としても、組織や個々人自らの経験としても通じる概念だと云えます。
アレクサンドリア大王、ハンニバル、カエサルらは何を信じ何を目的としていたのだろうか、どういう幼少生活を送りどういう教育を受けてきたのだろうか。阿刀田先生からは学説にご本人の推論を踏まえてお話し頂き、受講生が感じた大胆な仮説も含めて皆でイメージを高めることができました。神話と歴史の繋がりを意識し、また最も古くから残る演劇のひとつオイディプス王をビデオ観劇しその普遍性を確認しました。阿刀田先生が神話をどのように文学作品に活かしたのかなど興味深い話しもありました。
さて、この3ヶ月、土曜日午後の3時間×6回を振り返ると、先生や受講生の皆さんの知的好奇心に触れる、何とも楽しい心豊かな時間でした。客先へ向かう電車の中では課題とされた図書に線を引きながらむさぼるように読み、受講前週の土曜日はパソコンに向かってレポートを書く。学生時代はいい加減な学生でしたが、あの頃の教養課程も真面目に受けておけば楽しかっただろうにと反省もしました。
事務局の方々は私どもの興味が繋がるように気配り下さり、私淑し次はどんな言葉に出会えるだろうかとお会いするのが楽しみになる先生がいらっしゃる。ここに集う受講生はというと、30代から定年を迎えた60代の方まで老若男女(推定平均年齢50歳強?)。それぞれに何らか好奇心を持ち、演劇好きでギリシャを幾度も訪れているような方、キリスト教に造詣が深い方、文学・歴史を久しぶりに学ぶことに嬉々としている方、小学校の校長先生、毎回遠くから駆けつける経営者、お孫さんもいらっしゃる主婦の方、英仏語を自由に操る方、阿刀田先生のファン、歴史や哲学を語る方、サラリーマン・・・。別に仕事の話しをするわけではないですが、ここに来れば共通の興味で重なる部分が少しあり、ちょっと心が落ち着くような、そういう場でした。ちょっとしたサービスを提供してくれる方がいて、自主的に催されるビデオ上映会に残る方、語らう方。参加の仕方は自由、距離感も自由。時々企画される懇親会。
ある意味教会の日曜学校の集いに似ているのかもしれません。ゴルフ好きが週末毎に集う楽しさに似ているのかもしれません。
仕事もそこそこ、家庭もそこそこ。趣味や地域の集いに何かちょっと参加してみたかった。だからと云ってそこに没頭できるほどの時間も無いし、自ら周りを巻込んで新しいことを一から立ち上げるほどの元気もない。
同じような興味を持つ方々とちょっとした接点を持つ場があり、そこで学んだことを、それぞれが持つ自分の世界で少しクリエイティブに生かすことができる。
アゴラは私たちのためにこういう集いの場をこれからも産み出してくれると期待しています。

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