KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2013年08月13日

【ほうやのロンドン便り】多民族国家ロンドン~意外に知らないイスラム教の生活

保谷範子

multiculturalismと言われるロンドン。私が住んでいるフラットでも、支配人はいわゆる白人、ポーターはアフリカ系黒人、日本人のわが家の両隣りはアラブ系ファミリーと白人カップル、階下はイタリア人のファミリーにアジア系の女性がnanny(ベビーシッター兼お手伝い)として住み込み…と一目瞭然です。
したがって宗教もさまざまで、ちょうどこの1カ月は、イスラム教徒(ムスリム)にとって1年で最も大切と言われるラマダンの時期でした。
ラマダンなんて、耳にしたことはあっても、いったいどんな生活を送っているのか…不思議なことだらけですが、わが家の近くにロンドンで最大のモスクがあり、イスラム教の人々の生活を垣間見ることができています。


ロンドン中央モスクラマダンと言えば断食ですが、断食と言っても一日中食べないのではなく、陽が昇っている間は飲食ともいっさい口にしてはいけないということ。ですから、陽が沈むとたくさんのムスリムがワラワラと外に出てきてきます。
夏のこの時期、ロンドンの日没は夜10時頃。イスラム教以外の人は夕食を終え、そろそろ寝支度をしようかという頃に彼らの活動が始まります。イスラムの正装である白いガラベーヤをまとった男性、黒いヒジャーブに身を包んだ女性たちが一斉にモスクに集まり、お祈りの後、レストラン、カフェへと散っていきます。その人数、活気は迫力があり、日本にいるとあまり意識しませんが、世界人口の約20%がイスラム教徒であることを肌で感じます。いつもは静かな近所の通りに、浅黒い肌に白い衣装をまとった大勢の人たちが現れたときは、何ごとかと驚きました。
さらに、ムスリムの多いアラブの国々の人はオイルマネーの金持ちが増えていることもあってか、移動のために超高級ヨーロッパ車が連なることも多く、これもまた壮観。いまの世界の経済力を表している光景かもしれません。
また、この期間はテレビでも毎日「ラマダンの生活」を紹介する5分番組が流れています。ラマダンの過ごし方や、終わった後の楽しみ(主にショッピング)など、イスラム教以外の人たちも楽しめる内容です。
ハラル食品専門店これによると、ラマダン期間は、日没~日の出の間に1日の食事を摂ることが定められています。真夏のいま、日没は遅く、朝5時頃には明るくなり始めるため、夕食数時間後には朝ごはんを食べることもあり、一晩中ほとんど寝ないそうです。
そんなわけで、この1カ月、特に週末ともなると、夜中になっても眠れないほどの派手な音楽が鳴り響き、水タバコの香りが漂い、さすがにちょっと迷惑だなあと感じざるをえませんでした。
当然ながら、この期間のムスリムは睡眠時間が短くなるため、昼間はボーッとしてしまうようです。あなたの部下や運転手がムスリムの場合には気遣ってあげましょう…といった記事を目にしたことがあります。でも、警官やバイク便など、緊張を強いられたり時間に厳しい仕事に携わるムスリムも当然いるわけで、いつも通りにきびきびと仕事をしている様子がテレビで紹介されていました。
ラマダンが最終日に近づくにつれて、さらににぎやかになるのかと思いきや、ラマダンの後半は故郷に戻って家族と一緒に過ごす人が多いようで、当初の勢いに比べ静かになってきました。そういえば、旅行会社の店頭には”ラマダン時期の航空券特別オファー”の広告がずっとありましたから!
にぎやかなラマダンを終え、普段通りのリズムに戻ったころ、今度は数週間単位の休暇を取ってロンドンを離れる人が増えてきました。近所でも窓がずっと閉まっている家が目立ち、いつもより少し静かに感じる8月のロンドンです。

メルマガ
登録

メルマガ
登録