2014年01月14日
【ほうやのロンドン便り】気軽に旅するヨーロッパ~LCCがお隣りの国をより身近に
保谷範子
「ロンドンからイタリア ミラノまで20ポンド(約3400円)」
イギリスからイタリアは国外旅行となるのに、こんなに安く行けちゃうの?と、思わずポチッとクリック(購入)したくなるような価格。
“空飛ぶバス”とまで言われるLCC(Low Cost Carrier:格安航空会社)のウェブサイトにはすぐにでも旅したくなるような魅力的な価格の航空券が並んでいます。
EU統合以来、国を越えての人の往来がそれまでより一段と活発になったと言われるヨーロッパ。それに拍車をかけているのが、1990年代にスタートし、イギリスから火がついたLCC各社の熾烈な乗客争奪競争だと言われています。
ロンドンに住んでいると空港へのアクセスも良く、LCCを利用すれば、ヨーロッパの各都市は身近に、国内旅行のような感覚で気軽に旅をすることができます。
私もこれまでにもう何度もLCCを利用してヨーロッパ各地を旅しました。
慣れてしまえば快適なLCCの旅ですが、魅力的な価格の裏にはワケがあり、LCC利用のための作法とも言うべきいくつかの関門があります。この”お作法”を知らずして乗り込もうとすると、思わぬところで追加料金がかかったりして、安さが魅力のLCC利用メリットが半減してしまうので要注意です。
・予約はネットで
まずは、ネット予約が基本。これは、もちろん人件費削減のためであり、予約変更(ほとんどが変更できないチケットとして販売されていますが)や問い合わせなどでコールセンターへ電話をすると、通常よりも高い電話代を請求される場合があります。
・印刷した航空券をお忘れなく
搭乗当日は航空券を印刷のうえ持参します。忘れると追加料金を徴収される会社もあり、追加料金のほうが安く購入した航空券より高い代金を請求される場合もあります。
先日、フランスのある空港内のレンタカーショップでは、搭乗券を印刷持参するのを忘れた人を対象に「搭乗券を15ユーロでプリントアウトします」というサービスをしていました。ただ印刷をするだけで15ユーロ(約2,000円)は目が飛び出る高さですが、LCCにその何倍もの追加料金を払うことを考えれば安いもの。そのレンタカーショップの痒い所に手が届くというか、消費者の痛いところについたビジネスにはあっぱれと思わずにはいられませんでした。
・手荷物はコンパクトに
機内持ち込み手荷物は厳格に1個のみ。重量、大きさも制限があり、それを越えている場合には、搭乗直前であっても容赦なく追加料金を請求されます。もちろん、預け荷物には数、重量に応じて費用がかかります。
・自由席は定時運行への早道!?
自由席のLCCもあり、窓側に座りたい、同乗者と並んで座りたいなどの希望がある場合には搭乗ゲートで並ぶ必要があります。席に希望がなくとも、手荷物を納めるロッカーに限りがあることも多く、遅く搭乗すると機内持ち込みするはずの荷物を預けなければならない=追加料金がかかる事態も起こります。
このため、自然と予定時間よりもかなり前に乗客が集まり、スムーズな定時運行に一役買うという面もあるようです。
・機内サービスは必要最小限
機内は良く言えばシンプル、悪く言えば殺風景。映画や音楽サービスがないのはもちろんのこと、座席前によくある機内誌などが入っているポケットやテーブル、シートのリクライニング機能までない航空会社もあります。食事や飲み物は必要や好みに応じてメニューから注文し、その場で料金を支払うしくみ。ヨーロッパ圏内は短時間の飛行がほとんどのため、食事や飲み物が必要ではない場合も多く、好みに応じて選べるというのは合理的と言えます。
…などなど、LCC各社のコスト削減の合理化はあげればきりはなく、優雅な欧州旅行とは程遠い空の旅かもしれませんが、この徹底した合理化のおかげで、気軽に近くの国々へと出かけることができるというのも事実です。
ヨーロッパのハブとして、ロンドンにはヒースロー空港を含め国際空港が5つもあり、いずれもロンドン中心から約1時間圏内に位置し、ヒースロー空港以外はLCC発着を中心に稼働しています。これらは、人や物の流通を活発にするために国や都市をあげて政策的に行っているものです。
先日、ロンドンに20年近く住んでいる方から、「ロンドンの食事はまずいというのが代名詞のようだったけれども、ここ数年で格段に美味しくなっている。これもEU統合以来、人々の往来が盛んになったのと関係すると思う。」という話を聞きました。
人や物の交流は、文化の底上げも図ります。気軽な”足”として、隣りの国へ出かけることを容易にしてくれたLCCはいまや文化交流の立役者なのかもしれません。
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