KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

2014年12月09日

『リーダーのための仕事哲学』参加レポート[Session6]

森 旭彦

Session5のレポートはこちらから

最終課題は、仕事哲学の「コラージュ」

「リーダーのための仕事哲学」もついに最終回となった。最終回の課題はとてもユニークだ。なんでも、自分の仕事哲学をコラージュ作品にして持っていくというものである。
コラージュはパワーポイントとネット上の画像等をつかって作っても良いし、アナログな方法として、本当に「切り貼り」をして制作してもいいとのこと。私は前者を選んだ。

コラージュをつくるにあたって、今までの講座のことを振り返っていった。この講座に参加している人たちは、今回を含めても、人生でたった6回しか会っていない。しかし、いつの間にかみんな本当に打ち解けているし、互いにとても信頼し合っている。この非日常の講座で過ごす時間は、日常の職場等で過ごす時間よりは短いが、密度がとても高いのだ。

一方で、この講座の外側の、職場や仕事での人間関係を見てみると、ずいぶん長い付き合いになるものの、今だにどんなことを信念として仕事をしているかを知らない人が多いことに気がつく。
この日常での人間関係の違和感に気づけたことは、たとえ非日常の講座の中であったとしても、私にとっては非常に大きなことだったと思う。
非日常の時間とはいえ、この講座も私達の日常の中にあるものだ。非日常のこの講座でできたことは、日常の世界でもできる可能性は十分にあるのではないだろうか。
そんなことを思いながら、コラージュを作っていくと、自分大好き感が全開のこんな作品になってしまった(笑)。20141209_01.jpg

一体何なのだと思われてしまうが、私の仕事哲学というのは、やはり自分のアイデアや独創性を、文章の力で伝えたいというところが大きいのだと痛感したということが背景としてある。
ライターをしていれば、当然文章は上達する。時にそれは技術として、ビジネスチャンスを生む。
しかし、文芸はやはり美術によって支えられている。ビジネスとしてのしがらみの中で、いつの間にか本当の意味での美術性を忘れてしまっていたのではないかという危機感が私にはあった。それがおそらく、この赤色で表されて…いると信じたい(笑)。
そうした自分の美術性を取り戻そうという気持ちから、こうした作品になってしまったのだった。

抽象的な絵で、仕事哲学の深部に到達する

慶應MCCに着くと、そこにはメンバー全員の作品が貼りだされていた。話を聞いてみたい作品を取って、机に持っていき、作者と語り合うという講評会が今回の趣向だ。
「これから自分はどんな仕事哲学を大切にしてマネジメントをしていくのかを考えてほしいと思います。仕事哲学は普段、ついつい文言化されるものですが、哲学は深いものです。言葉にした瞬間に表面的なものになってしまうものです。そこで、コラージュという手法を使って抽象的な絵にしてみることで、言葉では足りない、より深い部分まで表現してみようというのが今回の課題の意図です。これからいろいろな人の哲学についてお話を聞いてみてください。よどみなく伝えることができる人というのは、哲学がよく練られている証拠です」
と、安藤さんは語る。いつものことながら、この講座の工夫には妥協しているところが一切ない。ひとつひとつの課題から、自分にとって切実な何かを持ち帰ることができる。

20141209_02.jpg
私もいろいろな人の作品を見て、話を聞いて回った。たとえば、いつもニコニコとしている、まさに「理想の上司」といった感じのMさんがいる。この人は、前回のロールプレイングでも一緒になった。どうしたわけか、「この人に頼まれたら、断れないな」と思わせてしまう人だ。私が部下役をしていた時も「この仕事が終わったら、次はこのポストでがんばってもらいたい」といった感じで、モチベーションを上げるのが上手いなと感じた。

Mさんが大切にしているのは「利他の心」。自分のために突っ走るのではなく、周囲のステークホルダーを利することでゴールに向かおうという哲学を表現されていた。私とはある意味で正反対だった。その時、ふと、自分に欠けているものに気づかされた。
この講評会は、自分の仕事哲学を互いに語り合うことで、客観性をプラスしてゆくという学びがあるのだった。

次のステージは「日常」

最後は全員で輪になって、全員に対して自分の仕事哲学をプレゼンし、隣の人からフィードバックをもらい、そして安藤さんからも一言をもらい、隣の人から修了証を手渡される、ということを全員分繰り返してゆく。
20141209_03.jpg
そして最後には安藤さんから「これからも、いい生き方、そしていい”活き方”をしてください」という言葉があった。
この言葉の受け取り方は人それぞれかもしれない。私は、自分の個性の活かし方そのものが自分の生き方に直結することだと感じていた。

この講座全体を振り返ってみる。
最初は「本当にリーダーシップが学べるのであれば、それはどんな講座なのだろうか?」という興味関心で引き受けた仕事だった。それに対する答えは、このレポートでたくさん言葉にしてきたけれど、ひとつ言えるのはリーダーシップというものは技術的なものではないということ。つまり、本を読んだりして自分のスキルをアップすることで獲得できるようなものでは当然ないということだ。
この講座の中では、ディスカッションやディベード、ロールプレイングを通していろいろな人と話し、「この人はすごく先見の銘があるなあ」と感じたり「この人のリーダーシップには敵わないな」と感じたりすることが、人の数だけある。全員が、それぞれのステージで、何らかのリーダーシップを発揮して、今ここにいるのだ。それを互いに語り合い、時にはぶつけあうことで、より優れたものにしてゆく。参加者全員にその機会があることが、この講座の最大の価値だろう。

最初に書いたことの繰り返しだが、非日常の時間とはいえ、この講座も私たちの日常の中にあるものだ。
この講座の中で見つけた仕事哲学やリーダー像は、きっと、日常のステージの中でも生き生きと、私たちの中で活き続けるだろう。
20141209_04.jpg
(終わり)

プログラム詳細:リーダーのための仕事哲学(現:人と組織を動かすリーダー哲学)』  講師:安藤浩之

森 旭彦(もり・あきひこ)
ライター
京都生まれ。主にサイエンス、アート、ビジネスに関連したもの、その交差点にある世界を捉え表現することに興味があり、ライティングを通して書籍、Web等で創作に携わる。
尾原史和著『逆行』(ミシマ社刊)、成毛眞著『面白い本』『もっと面白い本』(岩波書店)、阿部裕志・信岡良亮著『僕たちは島で、未来をみることにした』(木楽舎)ほか、東京大学理学部『リガクル』などで多数の研究者取材を行っている。

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