KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

学びの体験記

2007年04月10日

学ぶことが自分に「武器」を与える

馬場保仁
株式会社セガ スポーツデザイン研究開発部 企画セクション ディレクター

このたび、編集長より原稿の依頼を受けまして、何をテーマにして書かせていただこうか考えました。
「学ぶ」ということ
「仕事と学び」について
「情熱と行動力」の相関
この3つをキーワードにして考えて話を展開させていただこうと思います。


わたくしは、学生時代「時間がない」と思い込んでいました。皆さんもそうだと思いますが、社会人になるとそれとは比べものにならないくらい、「本当に時間がない」状態になったと思います。確かに、学生時代に比べれば物理的に時間はありません。ですが、時間は「使い方」と「ひねり出し方」次第では、案外「ある」ものです。
そして、その時間を使って自分の滋養となるための様々な「学び」を体験、企画したりするわけです。
では、なんのために「学ぶ」のか?少なくとも、わたしはなぜ学ばねばならないと思っているのか?を書かせていただきますと、もちろん1つは新しいことを知ることは楽しい!という純然たる「好奇心」からくるものです。
書籍を読み耽るのも「学び」でしょうし、自分の身体を動かしてスポーツなどをすることも十分「学び」だと思います。もちろん、学校など学ぶことのできる環境に出かけ、他者から教授されることもそうだと思います。
結局は、「自分の意思」で何か新しいものを知ろう、体験しようと考えることがそれにあたると思います。
「知識」や「知恵」を得ることは「学び」かもしれないが、身体を動かすだけでなんでそれが「学び」なんだ?と思われるかもしれません。たとえば、「スポーツ」ということでわたくしが好きな、「野球」を例にあげますと、ピッチャーマウンドはなぜ、あのように小高く盛り上がっているのでしょうか?実際に平面とマウンドから投げ比べてみればわかります。明らかに傾斜がある方が投げやすいのです。前にステップする脚がより前方にステップしやすい上に、ボールに角度もつけられます。
自分でやってみることで発見することがあり、且つ、そこから実際の歴史や経緯を紐解いてみようと思えば、「知識」もおのずと学ぶことになるわけです。「芋づる式好奇心」というのは大切なことだと思います。そこで面倒くさがることは機会損失だと思って間違いないと思います。もちろん、わたしも心折れそうになることは、ままあるのですけれど。
結局、「学ぶ」という行為は、それを意識・無意識問わず何かを試みて、新しい知見を得たことに「気づく」かどうか?だと思います。必死になって「学ぶ」姿勢をとる必要があるかといえば、決してそんなことはないと思います。皆さんの周囲でも「なんで、あの人はあんなにいろんなことやる時間があるんだろう?」という方がいらっしゃると思います。そういう方は、意識していろんなことをやってるわけではないと思います。ただ単に、「面白いから」とか「気が向いたから」という理由でしかないと思います。結局、自分で行動して「楽しい」と思える人間は、ほっといてもどんなところでも「学んで」いくのです。
もちろん、意識する方が「学ぶ」機会が増えると思います。ただ、そのためには、何か「目標」を自分なりに設定することが大切ではないでしょうか?そうでないと少なくとも「継続」することが困難になってしまいます。
では、「目標」としてどのようなことを設定するとよいでしょうか?社会人を中心に考えますと、やはり、何か仕事とリンクしているとわかりやすいと思います。わたしが良く使う言葉としては、
『仕事をする上で自分が「歯車」になるように成長しよう!』
というものがあります。
「歯車」といいますと、ともすれば、ネガティヴにとらえられがちですが、決してそうではありません。どういうイメージかと申しますと、仕事は1人ではできません。常に誰かに助けていただく可能性があるでしょうし、チームで仕事をすることも多いでしょう。わたくしなどは、ゲーム開発に携わっておりますので、いつもかなりの人数でチームを組んで仕事をすることになります。チームは、大勢のスタッフが有機的に絡み合い、相互扶助していかなくては良い結果は得られません。つまり、「歯車」がからむように誰もが互いの「役割」を果たさなくてはいけないのです。わたしは、最近ではディレクター(=チームリーダー)という形でプロジェクトを統括することが多いのですが、わたしも、チームという有機的組織からみれば1つの「歯車」でしかないわけです。ただ、「責任」と「経験」「知識」から、「歯車」の「歯」の数が多いのだと思います。
だからこそ、他の「歯車=人」とたくさん噛むことができるわけです。つまり、この「歯」の少ない人は自分の「責任」でできる仕事もそれに比して少なくなると思います。ですから、この「歯」の数を増やせばおのずと、仕事内容がかわってくると思います。では、どうやったら「歯」の数を増やすことができるのか?
コツコツと仕事をして「経験」を積むことはもちろんですが、それをいや増すのが「学び」だと思います。
新人さんが入社してきたときに、いつも最初に言っている言葉に、
『自分を知ることと、そして、自分の「武器」を早く何か1つ持ってください』
というものがありますが、これは、新人さんでなくても、誰に対してでも言えることだと思います。では、その「武器」を身につけるのに必要なものはなんでしょうか?それは、「情熱」だと思います。「好きこそものの上手なれ」とは良く言ったもので、やはり、好んでやることは成長が早いですし、壁にぶつかってもそれをのりこえていけます。だれでも少なからず「好きな」趣味をお持ちだと思います。もちろん、趣味の世界のことを、仕事に直結させるのは簡単ではありません。ですが、それですら、できる人はできてしまいます。なぜなら、俗にいうところの「発想の引き出しが多い」人は、「発想の関連付け」が上手だからです。
「発想の閃き」というものは、ゼロから想起されることはなく、養老孟司氏の「唯脳論」ではないですが、自分の脳の中から、自分の「経験」の中から産み出されることがほとんどです。自分の知る、「知見A」と「知見B」を組み合わせることで発火して、発想することが多いと思います。ただし、天才と呼ばれる人ほど、常人が
「え!?そのAとBを組み合わせるの!?」
というような組み合わせを考え付くのだと思います。
ですから、趣味のことですら、仕事に関することと、組み合わせることが可能なのです。「仕事」においても、そのもの自身が好きであれば、または、好きでなくてもモチベーション高く臨むことができれば、おのずと色々なものが頭に入ってきやすくなるでしょうし「気づき」も増えると思います。
そして、なによりも積極的にいろいろなことを試みるようになると思います。つまり、気持ちが入っていれば、行動力はおのずと高まる、ということです。おいおい、最後は精神論かよ?と思われるかもしれませんね。でも、もし、同じ能力の2人がいたら、最後にその差をつけるのは、間違いなく「思いいれ」などの「気持ち」です。しかも、どうせやらなくてはいけないことであれば「楽しく」やった方がいいですよね?
故 中内功氏の座右の銘、

「ねあか のびのび へこたれず」

は、まさに、これをあらわしているのではないでしょうか?
いつも、元気で明るく、前向きに頑張ろう!もちろん辛いときはあるけど、へこたれずにやっていこう!ということだと思います。へこたれないための「自信」をつけていくためにも「学ぶ」ことをやめず、常に新しい武器を身にまとう努力を続けることが自分を高めていくことにつながるのではないかと思います。今回、この文章を書かせていただきながら、自省して自分にも言い聞かせることで、今後頑張っていこうと思います。

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