KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

学びの体験記

2007年08月14日

“おいしい一杯”を目指して

安田一弘
株式会社フェローテック 事業推進部 新事業開発課 課長代理

久しく遠ざかっていたトライアスロンのレースに参加するため、自転車購入資金をこつこつと貯めていたのですが、気がついてみると、その資金を慶應MCCのプログラム参加費へ充てている自分がいました。
「スポーツ」と「学び」を考えた場合に、以前の私は「スポーツ」を選んでいたのですが、最近では「学び」を選択することが多くなっています。ここでは、私が「学び」の場へ足を運ぶようになった理由と、学びの場で感じたことを、お伝えしたいと思います。


ことの発端は、
「あなたの専門分野は何ですか」
と職場で技術顧問をされていた大学の先生から、質問を受けたことでした。この時、そう言われてみると、自分は特にこれといった専門分野を持ち合わせていないなあ、ということにあらためて気づかされました。このことが、その後「学び」の場に足を踏み入れていくことになるきっかけとなったのです。
その頃、職場では営業部門に所属しておりましたので、お取引を頂いている企業の様々な部門の方と接する機会が多くありました。購買部門の方、品質保証部門の方、開発部門の方というように様々な部門のプロの方々と長時間に及ぶ議論をこなしていかなければなりませんでした。
知っている、わかっている、経験を積んでいるということだけでは、議論を望ましい方向にもっていくことは難しく、様々なシーンで、基礎知識を高めたいという思いを抱くようになっていた時期であり、商品を販売・拡販するにあたって、マーケティングの知識を習得したいという気持ちが、芽生えていた時期でもありました。
そこで私は、行動を起こし、仕事を進める中で、知識を高めておきたいと感じた基礎の部分については、週末の時間を使って、大学の通信課程で学び、そこでの卒論はマーケティングについて取り組むこととしました。
そして卒論指導を頂いていた高橋郁夫先生が講師となっておられる「マーケティング情報から顧客を読み解く」の門をたたいたのです。
マーケティングを学ぶ中で、イノベーションに興味を引かれた私は、研究テーマをイノベーションに絞りこみました。
卒論では、先行研究者によるイノベーション研究を分析対象別に政府、企業そしてユーザーと大きく3つに類型化して、イノベーションがどのようなものであるか理論研究をおこないました。そして既存研究から導出された知見を用いて、特定の市場におけるイノベーションの事例分析を行って、ユーザーから支持を集めた商品がどのようなものであったかを明らかにし、他の市場にも、応用可能な普遍性の高い商品コンセプトを導き出すことに取り組みました。
このようにイノベーションについて取り組んだことから、「イノベーション」が取り上げられていて、大学院のテキストが使われている「MOT-技術マネジメントと経営戦略の融合」のプログラムには、どうしても参加して、学んだ理論を実際のケースで確かめてみたいと考えるようになり、冒頭でお伝えしたように自転車の購入をあきらめて、プログラムへの参加を決意したのでした。
私が上記2つのプログラムに参加して感じたことは、次の3つの点です。

  1. 書籍に目を通すだけでは得られない「気づき」を得ることができた
  2. 同じ問題意識を持った様々な業界の方と交流を持つことができた
  3. とにかく講義・討議が楽しく、きちんと専門知識を得ることができた

「マーケティング情報から顧客を読み解く」の講義は、講師の先生からのレクチャーと演習課題に基づく全体ディスカッションから構成され、「MOT-技術マネジメントと経営戦略の融合」の講義では、講師の先生の講演と実際のケースを元にした討論形式であるケースメソッド(個人の予習→グループディスカッション→クラスディスカッション)から構成されていました。
自分で考え、他の参加者の意見を聞き、講義を受けることで、書籍に目を通しただけでは、見えてこなかったことが見えてきて、「気づき」を感じることができました。
講義の中では、自分の導き出した考えを発表し、他の参加者と討議する機会が与えられたのですが、様々な業種の方々から出される意見は、とても新鮮で、 「こういった発想をするのか」、「こういった角度からものを捉えるのか」、「この点に着目したんだ」と感心させられることしきりで、他の業界の方々の意見・発想にふれることができたという点も貴重な経験となりました。プログラムに参加することにより、同じ問題意識を持った方々と知り合うことができ、プログラムが終了してからも交流を持たせてもらっていることには、とても感謝しております。
 
これまで、仕事に接する中で、興味を抱いた分野について学んできました。引き続き、こういった取り組みを続けていきたいと思っています。
まだ私は、「あたなの専門分野は何ですか」と問われてもはっきりと自分の専門分野を答えられる域には達していません。ですが、学んだ事を常に実践で活用できるよう、学び続けて、自分の専門の領域を確立していきたいと考えています。
最後に、今回は、先送りしてしまったトライアスロンへの取り組みも、続けていきたいと思っています。アイアンマンレースを完走した時と、取り組んでいた学習が一段落した時の“達成感”には、共通するものがありました。それぞれ、ゴール後の“おいしい一杯”の味は忘れることができません。このゴール後の”おいしい一杯”を目指して、「学び」だけでなく、「仕事」に「スポーツ」にと積極的に取り組んでいきたいと思っています。

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