KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

学びの体験記

2008年08月19日

慶應MCC講座受講とそれから

藤田日出生
東洋電機株式会社 機器事業部 開発部長

 昨年、「MOT―技術マネジメントと経営戦略の融合」を受講しました。
以前は経営戦略については深く考えたこともありませんでしたし、慶應MCCのことも、当社の現社長からの薦めで始めて知りました。「技術マネジメント」の言葉に技術屋としての興味がそそられましたが、受講するまでは受身の姿勢でした。また、多くの方が自費受講であることにも驚かされました。今まで経験したことのないケースメソッドにも、その中での受講者の積極的な姿勢にも、別世界に来ているようでした。ケースメソッドに慣れてくるに従い、そのテーマが当社の抱えている課題とほとんどが一致し、探していた解決策が見つかるような気がして、自然にその世界に入り込んでいきました。


 今村先生の「新規事業創出の技術マネジメント」のセッションでのことが思い出されます。先生の著書「ガツンと事業をつくれ!―花王で学んだ研究開発精神」を読んで、感じたことや意見、質問を先生に提出する課題がありました。その時に提出した文章を読み返すと、その本の中で最も印象に残っている言葉として次の二つの文章をあげています。

  1. 「イノベーションを狙った商品開発をする文化やDNAと研究開発、技術開発を大切に育んでいけば、無限の可能性を秘めているのである。」
    そんな文化が当社にあるのかな?自分には?との問いかけと共に、創業60年にもなる当社には、先輩から受け継がれたDNAが、きっとあるはずだ、自分の中にも、それを文化まで高めて行く使命が自分にあるのではとの想いがこみ上げていました。
  2. 「結局、一人の研究者の商品にかける思いとそれを持ち続ける力が、革新的商品の開発を実現し、大きな競争力をもたらす源泉なのである」
    プロジェクトXの世界ですね、本当にそう思います。思いを持ち続け諦めてはいけないことが、受講後のそれからの一年の間に少なからず体験しています。

 上記の言葉が印象に残ったのは、その当時、お客様から得た情報(特に困っている内容)の中から新規事業に結びつくような研究開発テーマを抱えていたからです。そのテーマについて詳しくお話することはできませんが、社会的に非常に話題になっていた問題で、少しでも早く商品化できれば、社会にも貢献が出来るものです。
 開発部内での検討、顧問の大学の先生のアドバイス等もあり、技術的には実現の可能性が十分にあると考えていたものですから、先生の著書を読みながら、気分的には非常に高揚していたことを思い出します。
 研究開発内容が、当社の各事業部に関連する技術があり、それぞれの得意分野を受け持ち、商品化が可能と考えていました。この開発を進める上でのアドバイスを今村先生にお願いしたところ、下記のアドバイスを頂きました。

  1. 言いだしっぺに必要関連部門と関係技術者、予算を与え、全権限を委譲して開発させるのみ。(ミドルアップダウンマネジメント)
  2. 但し、経営トップはビジネスが成功する潜在顧客が新しい価値を持つ新製品であると認める開発目標をより具体的に明示する。 定期的に開発の進捗、問題、対応を議論し開発を推進させる。
  3. 必要な知識と資産を持っていなければ外部技術資産の活用を積極的に実施する。

 それから一年が経過しました。
 今村先生のアドバイスの順番にその結果を報告します。

  1. 社内で今年の春に発足した、事業構造再構築プロジェクトの最終報告に、上記の研究開発テーマを新規製品の開拓分野の最優先テーマとする様、提言がされました。研究開発企画を作成し、本格的に研究開発を行なう準備をしています。ミドルアップダウンマネジメントの体制で臨めそうです。
  2. 経営トップ、現社長は慶應MCCの非常に熱心な受講生の一人です。心配していません。本年度から全社開発会議のリーダーを自ら務めています。
  3. 知財戦略について外部コンサルタントの力を借りてアドバイスをもらっています。先行特許の調査はほぼ完了し、出願内容について弁理士さんと打ち合わせを行なっている段階です。技術的な資産の活用は顧問の大学の先生他、今回の研究開発テーマにより専門的なアドバイス、理論解析をおこなって頂ける先生に巡り会えています。

 そしてこれから、
 今までも、紆余曲折があり、一時は諦めかけた時期もありましたが、社内の担当、協力会社、お客様、その他 関連する方々のおかげでやっとここまで来ました。商品化まではなお一層の困難もあると思いますが、やるべきことをやって、その後は今までのように「ハップンスタンス」で乗り切っていこうと思っています。

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