夕学レポート
2006年05月30日
「サッカーで地域の問題を解決する」 村林裕さん
「FC東京は、東京に根ざしたうえで、世界を目指すことを目標にしています」村林さんの講演はFC東京の大きなビジョンから始まりました。あまりに有名な「Jリーグ百年構想」は、1960年代、川渕さん達当時の日本の代表選手団がドイツを訪れた際に、国内の至るところに存在する美しい芝生のグラウンドとそこに集う草の根サッカーファンが楽しそうにボールを追いかける姿に驚嘆したことに端を発すると言います。山の頂を高くするためには、底辺の裾野を出来る限り幅広くしよう。そのための長期ビジョンが「Jリーグ百年構想」です。
とはいえ、大きな夢やビジョンは、人を惹きつける魅力があることは確かですが、それを実現するための実現可能な具体的活動プランや仕組み・組織が伴わなければ、絵に描いた餅に終わります。日本のサッカー界には、構想家と同時にそれを実現するための実務部隊に希有な人材が揃っていたことは間違いないでしょう。村林さんは、紛れもなくその一人です。
東京ガスのサッカー部を母体に生まれたFC東京ですが、現在、東京ガスの株式保有比率はわずか3.5%とのこと。代わって325社に及ぶ多くの企業が株主となって、経営を支えているのが大きな特徴だそうです。また、チーム名が「FC東京」でニックネームを持たないこともユニークな点です。村林さん曰く「最初から世界を視野に入れていた。世界で有名になるには誰もが知っている“東京”を前面に出す方がずっといい」その志や良しというべきでしょう。
一方で、「東京に根ざす」ための地道な戦略・活動にもたいへん熱心であることがよく分かりました。チケッティング、座席設定、ファンサービス、快適なスタジアムづくり、ファンクラブ、それぞれの課題に関して、従来のやり方や常識にとらわれずに、独自の仕組みを模索しようという意識が強くあります。それらが功を奏し、観客動員数はもちろんのこと、年商も30億円を超え、利益もしっかりと出して、堅実な経営を実現しているようです。
また、村林さんは、地域密着のあり方にも、東京独自の切り口があるのではないかと考えているそうです。多くの社会問題を抱える東京という街に、サッカーというスポーツを通したソリューション型の貢献をすることで、信頼を獲得したいと繰り返しおっしゃっていました。「知的障害者のためのサッカー教室」「中学校の運動部の指導者支援」「市民スポーツボランティアの組織化」など、まだ規模を小さいものの地域住民の問題を解決するための取り組みを積極的に推進しています。
大きな夢を、長期的にスパンで描き、進歩のための現実的なステップも着実に進める。日本のサッカー界の方に共有化されている戦略的な視点を改めて感じた次第です。
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