KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2007年04月18日

「交渉とは問題解決である」 田村次朗さん

田村次朗先生が「交渉学」と出会ったのは、20年前、米国のハーバードロースクールに留学していた時だったそうです。
「法律家になるために必要な知識を学ぶ場」であると思っていたロースクールが、「法律家になったあとに必要な知識を学ぶ場」であったことに驚くと同時に、なったあとに社会で生き残るために必要な能力のひとつに「Negotiation(交渉)」があり、それを体系的に学ぶ授業が、ロースクールの中で一番の人気講座になっていることにアカデミーショックを憶えたと言います。
帰国後、SFCや法学部で教鞭をとる一方で、交渉学が、法律家のみならず、グローバリゼーションの渦中に生きる全てのビジネスパースンに必要な知識であるという想いを強くされました。
そんな問題意識を具現化する場として、慶應MCCが開設した2001年から「交渉学」プログラムを引き受けていただき、以降足かけ7年に渡って多くの実務家に「交渉学」を教えてきました。
開設当時のMCCは、「交渉学」を含めてプログラムが、たった3つしかないという時代でした。
現在、年間70以上プログラムを開催できるまでになった慶應MCCの歴史は、田村先生の「交渉学」普及の道程と重なっており、ある種の感慨を抱きながらお話を聞いておりました。


「交渉学とは、問題解決のためのスキルである」
田村先生はそう喝破します。
米国の弁護士が、社会で生き残るためには、何よりもクライアントの問題を解決することが求められる。そのためのスキルとして「交渉学」がある、という原体験に根ざした信念があるからです。
この言葉を聞いたとき、かつて私が企業内研修の営業をやっていた時代に、とある営業マン研修で聞いた言葉を思い出しました。
「営業とは、問題解決者である」
営業という文字は、技術者、コンサルタント、知財担当者etc、異なる組織・集団を代表して相手先との接点マネジメントを担う全てコンタクトパースンに置き換えることができます。
つまり、「交渉」とは、相互の異なった問題を、同時に解決するための合意点を創出するためのプロセスである、ということです。
田村先生によれば、「交渉学」は、下記の3つのポイントを押さえることだそうです。
1.論理
交渉は、論理的に成り立つことが重要。雰囲気、感情、根拠のない期待に惑わされてはならない。
2.準備
なによりも準備が大事。ただし時間をかけ過ぎても駄目。
【状況把握―ミッションの理解―目標の設定-代替案の構築-柔軟な選択肢の用意】という5ステップを理解しておくこと。
3.協働
双方の満足を、客観的、持続的、公益的に満たす解決策づくりための協働作業と認識せよ。
これを「賢明な合意」という。近江商人が言う「三方良し」も同じこと。
また、交渉にあたって「これに気をつけろ!」という5つの態度も紹介していただきました。
1.「落としどころ」探しをあせるな
「落としどころ」を急ぐと、小さな解決策で満足しがち。まずは最高目標を目指そう。
2.「合意をしない」という選択肢もあることを忘れるな
互いの問題が解決できないのなら「合意しない」ほうがよいこともある。だからこそ、合意しない場合の代替案(BATNA)を持っていないといけない。
BATNA(Best Alternative to a Negotiated Agreement)は、交渉にあたって絶対に必要な要素である。
3.負の感情を増殖させるな
見せかけの強気や戦闘モードは相手に伝染する。冷静に問題にフォーカスすること。
4.安易な約束はリスクになると心得よ
安易な約束は相手の信頼を失うきっかけになる。「約束」のマネジメントが重要である。
5.交渉はテクニックではない
表層的なテクニックに頼るな。策士が策に溺れることになる。大きなミッションや目標をベースに戦略を立てること。
更には、よりよい交渉戦略を立てるためのアドバンス的な視点として、4つの着眼点も説明してくれました。
1.ミッションからスタートせよ
交渉とは、合意することではなく、問題を解決すること。
ミッションとは、何が本質的な問題なのかを吟味し、考え抜くことからはじまる。
2.リスクマネジメントをせよ
リスクは相手に押しつける(回避)するものではなく、最小化(管理)するものである。
だからこそ、プロの交渉者はメリットと同時にリスクの存在を共有化し、どうすれば小さくできるかを話題にする。
3.交渉相手を過大評価しない
攻撃的にのぞんでくる交渉相手を恐れるな。
逃げず、戦わず、が原則。あくまでも冷静に、紳士的に対処するが、守るべき一線では絶対に譲歩しないこと。
.Agenda管理が鉄則
Agenda管理とは、3つのマネジメントをすること
a)時間のマネジメント デッドラインに気をつけること
b)内容のマネジメント 議事録は必ずとる
c)協議事項のマネジメント 交渉の前に、何を交渉するのかを交渉すること。
きょうは、いままでにない長文のブログになってしまいました。
まだまだ書ききれないことはたくさんありますが、ご関心がある方は田村先生の著書「交渉の戦略」を是非お読みになってください。
もちろん、慶應MCCの「戦略的交渉力」もおすすめです。

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