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慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2007年07月03日

「日本サッカーを語る」 金子達仁さん・戸塚啓さん

金子達仁さんと戸塚啓さんは、法政二高サッカー部の先輩・後輩の間柄です。
学年は三つ違うので、高校では重なる時期はなかったそうですが、金子さんが法政大学時代、法政二高サッカー部出身者で作るサッカーチームの助っ人に、当時高校三年で部活を引退していた戸塚さんを引き入れて以来20年近い付き合いになるとのこと。
高校、大学、サッカー専門誌記者、フリーのスポーツライターと奇しくも同じ道を歩き、いまは「二人だけの会社」の社長と専務の関係です。
相手が、何を見て、どう考えているのかを熟知している二人の対談は、プロ同士の着眼点と思考の発展を競い合うように、不思議なリズムで進んでいきました。
戸塚さんの投げかける質問に対して、金子さんは、あえて予定調和的な返答をせずに、まったく逆の視点を提示する。
戸塚さんは、予期せぬ返しに戸惑いつつも、自分なりの視点を加えて、話を発展させていく。
日本サッカーへの疑問と期待の間を入ったり来たりしながら、少しずつ本質に迫っていく。
そんな対談だったと思います。


戸塚さんは、「U20W杯一次リーグ」「オリンピック予選」「アジア杯」という、進行中もしくは開幕寸前に迫った三つの国際大会の展望を順番に投げかけながら、三つの日本代表をどうみるかと金子さんに問いかけていきました。
まずは、「U20W杯一次リーグ」では、スコットランド戦快勝の心地よさもあって、金子さんは久々に爽快な感覚を持ったと感想を述べました。
特に、試合前にゴール後のパフォーマンス練習をしていたという記事をとりあげ、
「あの発想は、アトランタオリンピックのチームにはなかった。雰囲気すら存在しなかった」
「日本のサッカーは10年経って、ようやくここまで来たか」
という感慨を憶えたそうです。
かつての日本代表は、大きな試合の前には、試合そのものに意識が集中し、ゴールパフォーマンスを考える余裕などなかったし、周囲もそれを当然のものと考えていた。
しかし、ゴール後のパフォーマンスを考えているのは、「世界で勝つレベル」のチームでは当たり前のこと。
「日本もようやく、ひとつ上のレイアーに上がってきた」
その感覚を自分の眼で確かめるべく、金子さんは、カナダへ向かうそうです。
「オリンピック予選」は厳しい。
それがお二人の共通した感想でした。選手個々の能力、チームとしてのまとまり、組み合わせの運、すべての面で不安要素の方が大きいようです。
しかし、金子さんは、ここでも思考の切り替えをして、「負けるのもいいかもしれない」と言いました。
「負けることが許されない試合に負けることで、得られることもある」と考えているからです。
気持ちがひとつになれないと勝てないと痛感するような修羅場経験や、きつい負荷をかけられる体験によって得られる「精神の強靱さ」を養う機会だと捉えられるからだとのこと。
金子さん、戸塚さんが共著で書いた『敗因と』を読むと、早くから将来を嘱望されてきた、小野、高原、稲本等の「黄金世代」が、唯一持っていなかったのが、「精神の強靱さ」「チームをひとつにすることへ渇望感」で、それがドイツW杯惨敗の大きな要因だったと二人は考えていることがよくわかります。
同様の思いは、7日からベトナムで「アジア杯」を戦う日本代表チームについてもあるようです。
「どうせなら、韓国やオーストラリアと早いうちにあたって、強烈なプレッシャーを受けながら勝ち抜いて欲しかった」金子さんはそう言います。
お二人の中には、日本サッカーは、全ての点でまだ成長段階で、日本人らしい選手、日本らしい戦い方、日本らしい組織づくりとリーダシップを模索している途上だという意識があります。
代表監督の選定方法やバックアップ体制に一貫性がないのは仕方ないが、自分たちの選択の結果を検証・分析し、次に活かす戦略的な発想を持って欲しい。
二人は日本サッカー界にそう望んでいます。

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