夕学レポート
2007年10月29日
「問題は喜ぶべきものである」 柴田昌治さん
この夏から秋にかけて、老舗と呼ばれるいくつかの会社で、賞味期限や食材に関わる虚偽表示事件が続けて起こりました。
多くの場合、発覚のきっかけとなったのは社員による内部告発だったと言われています。
社員が自社の不利益を外部に通報するには、相当の心理的葛藤があるはずです。止むにやまれぬ最後の手段として、決意をもった行動であったろうと推測されます。
そこまで思い詰める社員がいたのなら、もし組織内に、彼らのかすかな声、つぶやきを拾い上げる場がありさえすれば、もっと早くに浄化機能が働いていたのでないか。
柴田さんの話をお聞きしながら、そう思いました。
「社会的ジレンマ」
柴田さんは、社会心理学で用いられる用語をつかって、多くの企業に潜んでいる危険性を説明してくれました。
皆が行動を起こせばよくなると、誰もがわかっているのに、自分ひとりが損をするのではないかという思いから行動に移せない。
ひとり一人は健全なのに、他者を信じ切れないばかりに、全体が益々悪くなる。
それが「社会的ジレンマ」と呼ばれる現象です。
柴田さんによれば、「社会的ジレンマ」を脱却する鍵が、「スポンサーシップ」にあります。
「スパンサーシップ」とは、
「誰かが必ずサポートしてくれる」という安心感
上司に対する信頼感 仲間に対する信頼感
を醸成する考え方を意味します。
柴田さんのお話を聞くと、「スポンサーシップ」というのはスキルレベルの話ではなく、他者を信じ、自分を信じる思想変革運動に近いものであることがわかります。
また、その根底には、もうひとつ、「問題」に対する基本的なスタンスを変えることもあるようです。
「問題とは、本来、喜ぶべきものではないか」
柴田さんは、そう言います。
問題は、あってはならないもの、起こしてはならないもの=「悪」ではない。
問題は、その解決を通じて人間が成長し、進化を促す「基」になりうるものである。
問題を「悪」と認識してしまうから、隠蔽が起きたり、気づかぬふりをしようという意識が働いてしまう。
問題の存在を喜べば、次々と問題が指摘され、解決行動が発生し、組織は進化していく。
そんな自律機能が働いていくはずということです。
柴田さんは、「スポンサーシップ」文化の醸成は、上司の責務だとしたうえで、気をつけるべき二つの事柄を指摘してくれました。
ひとつは、「ダブルスタンダード」です。
悪い意味での本音と建て前の使い分けです。
立場としては、きれい事を謳うが、実際のマネジメントは、まったく別のロジックで動いているというのは、多くの企業で散見される事象だそうです。
社員は、上司の「ダブルスタンダード」を感じた途端に考えることを放棄し、面従腹背が始まるとのこと。
柴田さんの経験によれば、「お客様本位」という言葉は典型的な要注意ワードだそうです。
もうひとつは、「うるさい社員を大切」にしろということです。
会社のここが問題だと声をあげる社員がおり、その意見が本質を突いている場合に、組織は、それをことさらに無視したり、問題視扱いして圧殺しようとしがちです。
しかし、これも柴田さんの経験によれば「そういう社員ほどガラっと変わる」とのこと。
多くの改革は、そういう「うるさ型社員」が核になって起こるものだそうです。
優秀ではあっても、言われたことしかしない「貨車型社員」より、文句たれであっても、自ら動くことができる「機関車型社員」を大切にせよ。そんなメッセージでした。
前回夕学に来ていただいた4年前に比べて、スコラ流の風土改革・組織変革アプローチは、多くの企業に広がっているようです。
「日本人にしかできない、日本流の変革を目指しているのです」
そう話す柴田さんの姿に、強い信念を感じました。
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不易流行の経営学を目指して
~稲盛経営哲学を出発点として~
劉 慶紅
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
日本経営倫理学会常任理事
稲盛経営哲学に学びながら、人間性を尊重し、利潤追求と社会貢献の統合をめざす経営学理論を構築する、新論が真論となり、不易流行の経営学として結実することを目指して。
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『VIVANT』とテレビ局社員
福澤 克雄
(株)TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部、演出家・映画監督
私にとっての道は、TBSにありました。『VIVANT』は、同じような夢を持つ若者たちの道標になってほしい、そんな思いも込めてチャレンジした作品です。日本のドラマ界、映画界を目指す皆様、夢はあるけど方法がわからない皆様の一助になればと願っております。
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