夕学レポート
2008年05月29日
感情ルネサンスへの挑戦〜豊かな組織感情を求めて〜 野田 稔さん
「その時、どんなお気持ちでしたか?」
NHK 『プロジェクトX』の司会者、国井雅比古アナウンサーは、番組の主役にあたるプロジェクト当事者が登場すると、必ずこう問いかけるそうです。
野田先生は、この問い掛けに、きょうのテーマ「感情のマネジメント」における最大のキーワード“配慮”のエッセンスが込められていると言います。
この世の全ての営みが、生身の人間が行う社会的活動である以上、およそ全ての思考と行動の裏側には、感情の問題が蠢いているはずです。
プロジェクトXのような大きな成果ではないにしても、人間誰しも、一生のうちに一度や二度は、「俺はこれやった!」と自負できるような達成感を味わえる体験を積んでいるかと思います。
それは、部活動かもしれないし、文化祭発表の準備かもしれない、彼女を口説き落としたことかもしれません。
いずれにしろ、大きな何かを成し遂げるにあたっては、内側から沸き起こる感情発露のエネルギーを感じたに違いありません。
国井アナの問い掛けは、そのエネルギーこそが、大きな成果の原動力であり、また逆から言えば、成果達成を妨げる障壁にもなりうるという「感情問題」の本質に迫っているものかもしれません。
仕事環境が厳しくなったと言うけれど、厳しさは昔からあった。しかしそれを補う感情の安全弁も社会にあった。疲れていれば癒し、恐れていれば励まし、怒っていればなだめ、傲慢であれば戒める。そんな調整機能が職場や地域、家庭にあって、調整機能を果たしてきた。しかし、その安全弁がなくなっている。
それが野田先生の問題意識です。
90年代以降の環境変化を大別すれば、グローバル化の進展とIT化に集約されます。
グローバル社会の到来は、あらゆる競争の質とスピードを劇的に変えました。
IT化は、コミュニケーションのあり方をこれまた劇的に変えました。
この環境変化に適応するために、我々が取り組んできたことが、知らずのうちに、社会の安全弁を破壊することに繋がり、新たな環境不適合を起こしつつあります。
であるならば、我々もいま一度、この不適合への対処をしなければなりません。
それが「感情のマネジメント」に組織をあげて取り組むことだ、というのが野田先生の主張です。
野田先生は、「感情のマネジメント」を3つのアプローチで実践しようと考えているそうです。
ミドル力を高めること
ミドルがお互いに学び合い、支援し合う関係に変える
・職場力を高めること協力し合える、活力ある職場に変える
・会社づくり力を高めること理念やビジョンを語り合い共感の連鎖を起こす
・感情力を開発すること
感じる力、感情を表現する力を高める。
そのいずれにも具体的な研修プログラムを開発しているそうですので、ご関心がある方は、ジェイ・フィールのサイトをご覧になってみてください。
私は、サプライズゲストとして登場された金井先生が、質疑応答の中でお話されたことが印象に残りました。
「感情の意味」とでも言えばいいでしょうか。
例えば、恐れや不安といった感情は、良くないものと思いがちですが、実は、危険に対して行動を制御して身を守ろうとする本能でもあります。
また、友情や信頼といった他者と繋がろうとする感情は、社会を構成したいと願う人間の基本的欲求の発露でもあります。
「その時、どんなお気持ちでしたか?」
という問い掛けが、どんな人、どんな状況にも普遍的な感情への配慮であるならば、もう一歩進めて、「なぜ、そう感じるのか」という背後の状況に思いを寄せて、解決できる問題であれば共に解決し、一人で立ち向かうべき試練であれば、温かく見守り、受け入れなければいけない宿命であるならば共に涙する。それが「感情のマネジメント」なのかもしれません。
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