KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2008年06月09日

クリエイティブマネジメントの本質 佐藤悦子さん

「なんでもデザインで解決できるはずだ!」
5年程前に、佐藤可士和さんが、とあるトークショーで熱く語っていた言葉です。
「身の回りの何気ない小さなもの全てをデザインし、それが結果として、全体を変えることができる」
ひところ流行った複雑系で言うところの「フラクタル理論」を彷彿させる言葉ですが、佐藤可士和さんは、当時から(もっと前から)、ことある毎に同様の主旨の強い意思を表明していたそうです。
「デザインで世界を変える」「デザインで新しい価値を提供する」「時代のアイコンになりたい」etc。
デザインの力を信じ切る自信に満ちたこれらの宣言は、佐藤可士和さんが、「普通の人ではない」ことを物語る逸話です。
彼のそんなビジョンを、「アートディレクター」という新しい役割を社会に認知させる活動を通して、形にしていくお手伝いをしているのが、奥様であり、マネジャーである佐藤悦子さんです。


アートディレクター 佐藤可士和のブランディングを目指す悦子さんのポリシーは、「普通のことができる、普通でない人」。
才能が豊かな人は、とかく才能に甘えて、社会の規範やビジネスの常識を軽視する傾向があります。自分のわがままを通すことがステイタスになると勘違いをする人もいます。
悦子さんは、可士和さんが持つ「普通ではない」才能を十二分に活かすためにこそ、「普通なことができる」ことにマネジメントの基軸を置いています。
もちろん「普通なことができる」ことを優先して、「普通ではない」部分が犠牲になっては意味がありませんから、「普通」と「普通でない」二項対立を統合することがマネジメントの本質ということでしょうか。
時には、嫌がるダンナさんをなんとか説き伏せて、重要な何かにアジャストしなければいけないこともあるわけで、奥様でなければ出来ない力技も必要になるかもしれません。
夫を妻がマネジメントする関係では、司馬遼太郎氏と福田みどりさんの関係を想起します。
しかし、司馬夫妻の場合は、妻がやりたいことを犠牲にして、夫を支えた夫唱婦随型のマネジメント関係だったのかもしれません。
佐藤悦子さんの場合は、「アートディレクター 佐藤可士和のブランディング」という仕事が、ご自身のやりたいことそのものでもあり、夫婦が互いに自分のやりたいことをやることで実は相互に支え合うという理想的な夫婦関係になっている点が多くの方の共感を得るのでしょう。
佐藤悦子さんのクリエイティブマネジメントの基本は3つだそうです。
ビジョンの共有
冒頭の「デザインで社会を変える」という可士和さんとビジョンを共有できるクライアントを選定すること、可士和さんのビジョンを世の中に知らしめるためのメディア戦略に気を配ること。
最上の環境のアレンジ
可士和さんが最高のパフォーマンスをだせるように、時に可士和さんの頭の中のスケジュールや空き具合にまで考慮して予定を組むこと。
また、クライアントとの信頼関係を維持し続けること。
クオリティの保証
時には、クライアントの目線から可士和さんに対して要求や意見を具申することで、顧客が期待する以上の成果を提供できるようにすること。
世の中には、天才と呼ばれる人が何人かいます。そして天才の創造主は神だけです。しかし天才が天才で有り続けるためには、「普通の感覚」を持って天才を支えるマネジメントが必要なのだとあらためて思う次第です。

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