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夕学レポート

2008年07月16日

「緑の東京へ一丸で」 猪瀬直樹さん

18:30東京着の新幹線を降り、駆けつけるように会場入りした猪瀬さん。
額には大粒の汗、夏カゼで鼻もぐずつかせながら、「何から話しましょうか」とつぶやいて、早速マイクに向かいました。
講演は、都庁で開催中の夕張観光物産展の話題から始まりました。市価の約半額というお買得感もあって、夕張メロンが1日に400個売れるほどの盛況イベントだそうです。切り盛りしているのは、都庁から夕張市の応援派遣されている二人の職員です。
財政破綻した夕張市の苦境は深刻だそうです。人口はピークの十分の一の12,000人、借金総額350億円、市役所職員も次々と辞め、行政も滞りがち、東京、北海道はじめ全国から10名近い応援職員を受け入れ、なんとか苦難を乗り越えようとしているとか。


猪瀬さんは、昨年春の夕張市長選の結果に、夕張が抱える問題の本質を見たと言います。
再建を旗印に当選した民間人出身の現市長の選挙戦は、実は300票差の僅差での勝利でした。
次点は、戦国武将と同姓同名を名乗る某氏。話題の選挙ではおなじみのパフォーマーです。いつもの選挙では、泡沫候補でしかない彼がなぜそこまで肉薄できたか。
「当選すれば、俺は100億円を持ってくる」 彼が言ったという、そのひと言が理由です。
甘言にフラっと流される依頼心が市民の心に根付いてしまった。そこにバラマキ政治の恐ろしさがある。
猪瀬さんは、そう喝破します。
猪瀬さんが用意した「夕張市の施設整備事業の状況」なる資料には、よくもこれだけ作ったものだとあきれるほどにハコモノ施設が列挙されています。
「世界の動物館」「ロボット館」「シネマバラード」「めろん城」「夕張鹿鳴館」「石炭の歴史公園」etc、夕張ゆかりのものから、何の脈略もないものまで、わずか20年の間に30近い補助金付のハコモノ施設が作られ、結果的に市の財政を破綻に追いやると同時に、市政に自律と自己責任の欠如を蔓延させてしまいました。
猪瀬さんは、地方分権改革推進委員として、改革に取り組んでいます。
昨年一年間で49回の会合が開かれ、官僚機構との戦いが続いているそうです。
例えば夕張のような場合、廃れたハコモノ施設の有効活用のための用途転換は誰もが考える選択肢でしょう。あるいは廃校になった学校を特養老人施設に転用したいとアイデアが浮かぶのも当然でしょう。
しかし、そのような場合、「国の基準と合わない」というストップが官庁から入ることがほとんどだそうです。強引に転用しようとすれば、補助金の返還や中止を迫られてしまいます。
お金がなければ、おさがりや仕立て直しを着ることは、伝統的な庶民の美徳だったはず、地方行政も同じです。ところが、一律基準で地方を縛る現在の行政システムが、ただでさえ少ない地方の選択肢までも奪っている。
「地方分権は、霞ヶ関の解体に他ならない」と猪瀬さんが主張する所以がここにあるそうです。
切っても、切ってもあらわれる「官僚印」の金太郎飴と、あえて戦い続ける猪瀬さんを、石原知事が補佐役として迎え入れたのは一年前でした。ここでも戦いの日々が続いているそうです。羽田空港国際化、参議員宿舎建設問題etc、猪瀬さんが「ちょっと待った」をかける場面は少なくありません。
官僚や議会との対立を辞さない猪瀬さんの姿に、強面でなる石原知事さえ「猪瀬は、俺より短気だ」と苦笑することも度々とのこと。
そんな猪瀬さんですが、副知事就任1年を迎え、これからの東京そして国のゆくえについて、何を考えているのか。講演の後半はそこに収束されていきました。
猪瀬さんの描くこれからのビジョンは「緑の東京」をつくることだそうです。
オリンピックを、そのためのエポックメーキングにするべきだと猪瀬さんは主張します。
インフラ整備と国威発揚を目的とした発展途上国型五輪は2008年の北京で最後とし、2016年東京五輪は、地球温暖化に対する都市のあり方を問う問題提起型のオリンピックとすべきだということです。
既に、東京湾の埋立地に樹木を植林し、巨大な「海の中の森」を作ろうという「海の森」構想がスタートしています。他にも、50万本の街路並木を100万本に増やそうという計画や小中学校の校庭を全て芝生化しようという計画が立案されています。
緑の風溢れる新生都市「TOKYO」を全世界に見てもらうこと、それが東京五輪になるという大構想です。
成熟国家の都市モデル、そこでの生き方を世界に提示すること、それは閉塞感に包まれた現代という時代でもがく若者に将来のビジョンを示すことにもなるはずです。

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