夕学レポート
2008年11月25日
「夢があれば道理は引っ込む」 三浦雄一郎さん
「ゴツ、ゴツ」と登山靴の音を廊下に響かせながら、会場に現れた三浦雄一郎さん。
日焼け跡が残る精悍な顔に白い眉が印象的です。広い肩幅、分厚い胸板、太い首周り、いかにも頑健そうな身体は、75歳の今もなお現役冒険スキーヤーであることを納得させるに十分なオーラに包まれていました。
三浦雄一郎さんは、今年の5月に、自身二度目のエベレスト登頂に成功しました。
北京オリンピックとチベット暴動の影響もあり、当初のチベットルートを急遽変更し、ネパールルートを取ることを余儀なくされました。
インド大陸がユーラシア大陸にぶつかることで誕生したヒマラヤ山脈は、南のネパール側の方が隆起が激しく、断崖やクレバス越えなどに時間の掛かる難ルートとされているそうです。
「結果的には、これが効を奏したかもしれない」
三浦さんはそう言います。アタックまでに時間を掛かったことが身体の高度順応にはプラスの影響を与えることになりました。
エベレスト登山は、一直線に頂上を目指すのではなく、登ったり降ったりを交互に繰り返しながら、少しずつ高度を上げていくものだそうです。
8000m付近の酸素濃度は6%、通常の三分の一程度の薄さです。
「同じ量の酸素を取り込むためには、心臓を三倍動かさないといけない。寝ている時も心臓はフルスロットで働いていることになる」とのこと。
ちなみに酸素濃度6%という環境にいきなり放り込まれると、人間は3分で卒倒し、5分で死に至るそうです。
少しずつ身体を高度に順応させながら、いわば人間が生存することを拒絶する環境に突入しようというのが、エベレスト登山と言えるのかもしれません。
今回の挑戦では、三浦さんのサポート役として同伴した次男の豪太さんが8200m付近で高山病にかかり、下山を余儀なくされるなど過酷な状況でした。
しかも三浦さんは、持病の不整脈を抱え、医師の遠隔サポートを受けながらの登山です。
文字に書いてしまえば陳腐な表現ですが「命がけの挑戦」という以外の表現が見あたらないチャレンジだったのでしょう。
75歳にして見事に二度目のエベレスト登頂に成功した三浦さんですが、60代の頃は、冒険の世界から身を引いたリタイヤ人生を送っていました。
とはいえ、食生活の習慣だけは現役時代と変わらず、酒も食事も豪快なものだったそうです。
挙げ句の果てには、高血圧、糖尿病等の生活習慣病に加えて、不整脈も出て、満身創痍の状態になっていたとのこと。
一方で、父上の三浦敬三さんは、100歳を越えてなお壮健で、シーズンになると八甲田や立山に籠もり山スキーを楽しむ現役スキーヤーでした。
三浦さんのエベレスト挑戦は、父上への対抗心と、冒険家三浦雄一郎の復活をかけた、一念発起のチャレンジだったそうです。
メタボ生活にどっぷりつかっていた三浦さんですが、決断してからのトレーニングは「日常生活をトレーニングに変える」ことから始めました。
スニーカーをオモリ付の登山靴に変え、5キロ~10キロの荷物を背負って、都内を歩く日々。都庁ビルをエベレストの絶壁に見立ててイメージトレーニングを繰り返しました。
地道なトレーニングを経て、登山靴のオモリが8キロ、背中の荷物の重量が30キロを越えた頃には、三浦さんの骨密度は20代に戻っていました。
「年を取ったら無理をするな」というけれど、私にとっては、それは間違い。
「年を取っても無理をする」でないと冒険は出来ない。
夢中にさえなれれば道理も引っ込む
三浦さんは、そう言います。
1964年、スキー滑降で世界最速記録を更新してから44年。
富士山直滑降、エベレスト直滑降、世界七大陸最高峰のスキー滑降と、次々と「夢中になれること」を見つけ出し、「道理」を越えた挑戦に成功してきた三浦さん。
次の目標は、5年後、80歳で三度目のエベレスト登頂と定まっています。
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慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
日本経営倫理学会常任理事
稲盛経営哲学に学びながら、人間性を尊重し、利潤追求と社会貢献の統合をめざす経営学理論を構築する、新論が真論となり、不易流行の経営学として結実することを目指して。
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(株)TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部、演出家・映画監督
私にとっての道は、TBSにありました。『VIVANT』は、同じような夢を持つ若者たちの道標になってほしい、そんな思いも込めてチャレンジした作品です。日本のドラマ界、映画界を目指す皆様、夢はあるけど方法がわからない皆様の一助になればと願っております。
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