KEIO MCC

慶應丸の内シティキャンパス慶應MCCは慶應義塾の社会人教育機関です

夕学レポート

2009年08月27日

いまのあなたにしか書けないことがある

あなたには書く力がある。
いまのあなたにしか書けないことがある。
あなたが書くものを待つ人がいる。

秋のagoraとして、山田ズーニーさんに文章表現ワークショップをお願いした際に、ズーニーさんが提案してくれた企画案の冒頭三行に記された短い言葉の中に、この講座のコンセプトが的確に表されていました。
どこかで聞いたことのあるような理屈を、あれこれとこねくり回すことを一切せずに、ストレートに、しかも相手のこころに響く表現で伝える。
“言葉の産婆”を自称する文章表現のプロならではの技を見せていただいたように思います。
「山田ズーニーさんとワークショップ【伝わる・揺さぶる!文章を書く】」
さて、この講座、コンセプトはすんなりと共鳴したのですが、進め方については、少しばかり議論をすることになりました。
進研ゼミの小論文編集長として文章表現の世界に入った山田ズーニーさんは、独立後、有名になった「ほぼ日刊イトイ新聞」の連載をはじめとする文筆活動の一方で、大学生(慶應大、九州大など)を対象としたライティング技法講座や、企業研修のコミュニケーション研修も数多く手がけられています。
その経験から、100人近い大人数を対象とした講座の方がよい、という考え方を持っていました。
同質化しがちな集団の場合、ある程度の人数を対象とすることで異質性を取り込むチャンスを増やすことができるという経験則に基づいたものでした。
「自分にしか書けないもの」を見つける作業というのは、ひとりで行う孤独な作業ではなく、他者との会話の中で発見・醸成されるものだという信念をお持ちだということもあります。
私達は、その有効性は理解できるものの、「agora」は年齢も、職業も、置かれた環境も異なる受講生が集う異質な集団であることから、少人数での関係性にこだわりました。
ズーニーさんと受講者個人が、そして受講者同士が、顔の見える関係性の中で、「自分にしか書けないもの」を紡ぎ出すプロセスを大切にしたいと主張しました。
結果的には、ズーニーさんも私達の主旨に賛同してくれ、24名定員のワークショップになりました。
毎回の各自の文章作成課題に目を通していただくので、ズーニーさんには随分と手間のかかる仕事になってしまうかもしれません。
その分、皆さんに提供できる価値は上がると信じております。
ズーニーさんは、「自分にしか書けないもの」を探す行為を「深層心理の海に潜る」と表現されます。
自分の内面に広がる、深くて暗い海に、何度も繰り返しダイビングをして、岩の陰や砂地の下に潜んでいる「自分の想い」を掴みだし、言葉に変換する行為。そんな深層心理との交信作業のことを、「考える」と言うのではないか。ズーニーさんはそう言います。
「考える」ための道具が、「問い」であり、繰り返し潜るということは、何度も自分に問いかける「自己問答」に他なりません。
文章が上手くなりたいと思う人は多いでしょう。
文章が上手くなるためのスキルやコツを説く解説書も巷に多く存在しています。
しかし、人を感動させる、人を動かす文章というのは、単なるテクニックではなく、自分でも気づかずにいる「内なる何か」を、熱いパッションと冷静な表現で伝えることです。
4時間×6回のダイビングを通して、深層心理の海の中から、キラリと光る何かを見つけ出してもらえたらと思います。

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