夕学レポート
2005年07月12日
分析ツールを使いこなす力 水越豊さん 「BCG戦略コンセプト」
水越さんの名刺には名古屋事務所の住所が一番上に記載されています。聞けばBCG名古屋事務所開設の責任者でもあったそうです。水越さんによると、コンサルティングファームは顔のわかる人数が理想とのこと。社歴やポジションに関係なく率直な意見交換が出来ることが組織の必須要件なのに、規模大きくなるとどうしてもヒエラルキー意識が発生してしまい、フランクな組織風土が硬直化してしまいます。その弊害を避けるためにブランチを増やして事務所の絶対人数を調整したのだそうです。「コラボレイティブな組織は顔の分かる範囲が限度」という基準は、難しくはないけれど経験に基づいた説得力のあるルールですよね。きょうの主題である「ツールやフレームワークを使いこなす」ということもまったく同じで、実践に裏付けられた経験知が重要だということでしょうか。
講演は、「コンセプト」とは何かというお話からはじまりました。ここでいうのは、コンサルタントが使う分析ツールやフレームワークのことなのですが、水越さんはその目的を二つあげられました。一つは頭を整理するためのもの。つまり自分の考えを一歩進めるための気づきのツールだということです。もう一つは、複数の人々が同じ土俵で議論するための共有フォーマットだということです。一種の共通言語と言い換えてもいいかもしれません。いずれにしろ、問題をそこに投げ込むと答えが出来てくる自動計算装置の類ではないということを強調されました。これは夕学で多くの方々が強調されてきたことと一緒ですね。
更にコンセプトやフレームワークの使い方の具体例として、問題解決の第一段階である「現状認識」のためのツール「セグメンテーション」の使いこなし方に話を進めていただきました。私の整理では、ここでは大きく3つのポイントがありました。1.セグメンテーションは分類することに意味があるのではなく、次の打ち手が見えるかどうかが重要。2.実現可能性があるかどうかが重要。いくら美しくても「絵に描いた餅」で意味がない。3.論理だけではなく、生の現場を見て本質を掴むセンスや多様な意見を喚起する複眼思考が不可欠。の3つです。とはいえ「言うは易し、行うは難し」の世界だとつくづく思いますね。私も仕事でコンセプトやフレームワークを使って現状認識を試みることがありますが、二軸のマトリックス分析のようなベーシックなツールでも軸の切り方がスパッと決まると具体的な打ち手がありありと見えてくることがあります。ただし、どう切ってもスッキリしなくてモヤモヤ感が消えずにあきらめてしまうことが圧倒的に多いのも事実です。
分析ツールやフレームワークを使いこなす力というのは、一種の運用力のようなものなので、冒頭の逸話のような経験知やスポーツや伝統芸能にも通じる身体知感覚に近いような気がします。効能や方法を知識として知るだけではなく、何度も使って初めて身に付く力ではないでしょうか。以前夕学に来ていただいた斎藤孝さんによれば身体知を習得するには反復練習の絶対量が必要で、その臨界点は二万回とのこと。分析ツールやフレームワークを使いこなすには、気の遠くなるような経験が必要になってしまいます。終了後の控室では、そんな問題意識を背景に「ツールを使いこなす力というのは、誰もが経験を積めば身につけられる能力なのか、それともセンスのある人に委ねた方が効率的なのか」という愚問をぶつけてみました。水越さんの答えは、向き不向きはあるにせよ、ある一定レベルの知的能力があれば誰でも鍛えられるものだとのこと。続いて「とはいえ、全ての人が分析のプロになることが企業組織にとって最善の選択ではないはずです。むしろ優秀な人こそラインで稼ぐことに注力する方が企業にとっては意味があるのではないでしょうか。だからこそ我々コンサルタントがいるのですから…」けだし名言でした。
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2024年7月19日(金)18:30-20:30
不易流行の経営学を目指して
~稲盛経営哲学を出発点として~
劉 慶紅
慶應義塾大学大学院経営管理研究科 教授
日本経営倫理学会常任理事
稲盛経営哲学に学びながら、人間性を尊重し、利潤追求と社会貢献の統合をめざす経営学理論を構築する、新論が真論となり、不易流行の経営学として結実することを目指して。
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2024年7月23日(火)18:30-20:30
『VIVANT』とテレビ局社員
福澤 克雄
(株)TBSテレビ コンテンツ制作局ドラマ制作部、演出家・映画監督
私にとっての道は、TBSにありました。『VIVANT』は、同じような夢を持つ若者たちの道標になってほしい、そんな思いも込めてチャレンジした作品です。日本のドラマ界、映画界を目指す皆様、夢はあるけど方法がわからない皆様の一助になればと願っております。
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