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夕学レポート

2011年10月07日

「戦略とキャリアのシフト論」 石倉洋子先生

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「きょう、このタイミングで、この話題に触れないわけにはいきませんね」
石倉洋子先生は、まずスティーブ・ジョブスの話から始めた。
彼の人生年表を見て、誰もが気づくことは、ジョブスの56年の生涯は「戦略とキャリアをシフトする」人生であったということだろう。
アップルを創設し、内紛で放逸され、再び復帰した。
PC、携帯音楽プレイヤー、携帯電話、タブロイド端末…いずれもそれまでの概念を大きく変える商品を作り出した。
ジョブスが創造した商品とともに、アップルという会社の戦略も変わってきた。
石倉先生の「戦略とキャリアのシフト論」のイメージを伝えるに相応しい人物だったのかもしれない。
さて、本題。
石倉先生のグローバル時代認識は、「不安定」「不確定」な世界であるということである。中心なき世界では、権力の逆転や秩序の大転換があっという間に起きる。人もお金も情報もオープンに世界を動き回る。
人類の歴史を振り返れば、混乱の時代、乱世は何度かあった。
しかし、混乱はやがて安定し、乱世は統一に向かうのが歴史の必然でもあった。
ところが、今回はそれがあてはまらないようだ。「不安定」「不確定」は当分の間続く、それが多くの人の一致した見解であるという。
「何が起きるか、先はどうなるのかは誰も分からない」
この認識が当たり前になることを受け入れなければならない。
先の見えない混迷な時代に、明日に向かって生きる希望はあるのだろうか。
石倉先生は、「毎日が戦いの場である」と言った。
茂木健一郎氏の言葉を借りれば「不確実性を楽しむ」鷲田清一先生に言わせれば「わからんことに囲まれていても、なんとか切り抜けていく」ことと同じ意味として理解させていただいた。
つまりは、考えようによっては、可能性がいくらでも開かれている、面白い時代が到来したということである。


ベストではなく、「ユニーク」を求めること。
可能性を拓くために、企業&私たちに求められていることを、石倉先生はこう言う。
石倉先生の主張する「ユニーク」という概念には、重層的な意味が込められている。
ひとつは、自社・自分がユニークであること。他者にはない「強み」を明確にすること、もうひとつは、その「ユニーク」さを、今までにない新しい組み合わせで発揮することである。
新しい組み合わせには、自分の「強み」と他の「強み」を組み合わせこともあれば、自分の「強み」を、従来とは異なるフィールド・顧客を相手に発揮することも含まれる。市場を変えるor創ることも「ユニーク」なことなのだ。
グローバリズムの本質は、「押しつけ」や「型はめ」ではない。(そう言えば、最近はグローバルスタンダードという言葉も聞かなくなった)
相手を理解し、必要としていること、解決したいと願っている問題に対応したモノ・サービス、ビジネスモデルを提供することである。
そう考えれば、グローバリズムに臆病になる必要はないだろう。世界で一番うるさい日本の市場で、真摯に顧客に向き合い、現場発想で取り組んできた仕事のやり方と原理は同じはずだ。ただ、フィールドと相手が違うというだけのことだ。
英語は必要であろうが全てではない。むしろ、見知らぬ土地を知ろう、はじめての人を理解しよう、異なる文化や習俗を受け入れようという姿勢が最も大切なことであろう。
だからこそ、
「まずはやってみる。試してみる。ダメだったら変えてみる」
腰が軽く、フットワークよく、ポジティブに向き合うことが重要だと石倉先生は言う。
「環境に適応するために、自分の意識と行動を永続的に変えること」
これは学習理論が教えてくれる「学び(learning)」の定義である。
「戦略とキャリアのシフト論」とは、ラーニングそのものだと改めて認識させてもらった。
石倉先生は、自らも戦略とキャリアをシフトしてきた人だ。7年から10年毎にキャリアチェンジをしてきた。
コンサルタントからアカデミックな世界へ、日本人学生に向けたMBAからインターナショナルな学生を集めたMBAへ、そして今春テクノロジーとデザイン、ビジネスの融合を志向する慶應メディアデザイン研究科へとシフトをされた。
「戦略とキャリアのシフト論」は、石倉先生自身の人生論でもあるようだ。
11月4日には、MCCのメインキャンパスでメディアデザイン研究科の入学説明会が予定されている。石倉先生がメインで登壇されるとのことなので、是非お越しください!!
http://www.kmd.keio.ac.jp/jp/news/2011/10/1041830.php
この講演に寄せられた「明日への一言」はこちらです。
http://sekigaku.jimdo.com/みんなの-明日への一言-ギャラリー/10月6日-石倉-洋子/

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