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夕学レポート

2012年04月12日

マクドナルド、7つの 「えっ、そうなんだ」  原田泳幸さん

photo_instructor_604.jpg原田さんの夕学は、3月1日10時の予約開始から1時間半で、満席マークが灯った。ここまで早かったのは、ホリエモン登壇の時以来ではないだろうか。会場には、マックで育ったであろう30代のビジネスパースンの姿も目立った。
さて、原田さんの話については、『勝ち続ける経営』という講演録が出版されたばかりである。この本は細かい言葉の言い回し以外は、ほぼ忠実に講演内容を文字化しているとのことで、原田さんも感心していた。
従って、講演の内容紹介は、この本に譲るとして、きょうのブログは、控室でお聞きした事実も含めて、「えっ!そうなんだ」と思った7つの新発見を紹介することで、原田さんの経営を側面から考察してみたい。
1.コーヒー販売量は日本一
ハンバーガーの販売量なら当然だろうが、実は、コーヒー販売量もダントツの一位なのだという。ドトールやスターバックスを凌ぐ。調べたところ、ドトール1421店舗、スタバ912店舗であるのに対して、マックは3278店舗(上記書籍による)なので、そのスケールメリットが効いているということだろう。
マックにとって、コーヒーはあくまでもコモディティ商品であって、「らしさ」を象徴するものではない。しかし味と価格を総合した価値には絶対の自信を持っているとのこと。しかも、基幹商品であるハンバーガーを買ってもらうためのオープンドアツールとして重要な意味を持つ。
100円のコーヒーを飲んでくれた人に、ビッグマックやメガマックを買ってもらえるようにするためにはどうしたらよいか。そのための戦略と仕組みにこそ、本当のノウハウが凝縮されている。
2.8年で6回も値上げしている
原田さんがトップに就任された2004年以降、デフレ真っ盛りの日本にあって、マックがそれほど値上げをしていたのは驚きであった。
値上げは、マックの企業広報にとって、その腕が試される見せ場らしい。
値上げの事実と理由を、マスコミにつまびらかに公開し、尚且つ「なるほど」と納得させることが出来るかどうか、コーポレートコミュニケーションの巧拙が表出するイベントだという。
「原材料の高騰のため」「人件費アップのため」「為替の影響もあって」という文切り型の理由では、マスコミも消費者もけっして納得しない。価格の値上げ以上に価値が上がることを合理と感情で納得してもらう必要がある。
当然ながらマックの成長は、値上げの広報戦略が上手くいった証左である。


3.マックのカロリーは高くはない!!
クォーターパウンダーのダブル(通常のビーフパテの5倍)でも800カロリー、ラーメンやカツ丼より圧倒的に低い。「マックのカロリーが高い」というのは神話に過ぎない。
お腹周りを気にするお父さんも安心して大丈夫。
「なんでもそうだが、同じものを食べ続けるとよくないということですよ」というのが、原田さんの弁である。
4.ES(従業員満足)と業績は連動する
これがなぜ「えっ!そうなんだ」に入るのか?と思われる方もいるかもしれないが、経営学では、「社員の職務満足と企業業績は連動しない」というのが、多くのデータで検証された強固な定説となっている。
もちろん不満だらけでも構わないということではなく、社員満足度よりも重要な要素(例えばリーダーのマネジメント)があるということだが、マックでは、ES(従業員満足)こそが最も重要な指標になっている。
クルーの満足が高まれば、仕事の質(QSC)が上がる。QSCの向上に伴って、CSも向上する。CSは店舗の売上に直結する、ということが実証されているとのこと。
理論が全ての場合にあてはまるわけではないという典型的な例であろう。
5.コストを減らすということは投資をすること
原田さんが就任する以前のマックは、7年連続のマイナス成長が続いていた。
売り上げ不振が人員削減につながり、クルー(アルバイトスタッフ)の不足がQSCの低下と店長の過剰労働を招く、という悪い循環に陥っていた。
原田さんは、当時13万人だったクルーを17万人にまで増やしている。一方で残業手当の出なかった店長にも手当を支給することにした。
その結果、人員が充足し、戦略的な店舗のスクラップ&ビルドもあって、1店舗あたりの売上高は1.25倍にまで増えた。店長の残業も減って、トータルコストで10億円以上削減されたという。
人材への投資が、仕事の質(QSC)を向上させ、売上が上がり、コストが下がる。8年前とは逆の好循環が回り始めたということだろう。
6.決定する前に実行せよ 
講演前半で紹介された原田語録のひとつ。
「はてな?」と思わせる言い回しだが、本意はスピードにある。商品開発にせよ、経営改革施策にせよ、新たなアイデアを発案してから実行するまでのトータル時間のうちで、「考える時間」(正確に言えば、意思決定のために準備に費やす時間)が一番長い。考える時間こそが最大のコストなのだ、という意識を持てというメッセージである。
確かに企画や計画は、いくら時間をかけてもキリがない。
7.東北地域の回復率が一番高い
マックでも、3.11による売上へのインパクトは日本中の店舗に発生した。
大きく落ち込んだ東北地域、自粛により少し落ちた関東、軽微な影響だった関西以西、の三つの地域に分類し、地震から半年経過以降の売上回復状況を見てみると、東北地域のスピードと回復率が一番高いという。
復興は遅々として進まない(環境は改善されない) が、人々(店舗スタッフ)の危機意識がよい効果をもたらしていると原田さんは見ている。
「ビジネスは気合いです」とのこと。
「これまで8年間の改革は、その前に7年連続マイナスだった分を挽回しただけ。これから本当の経営改革が出来る」と語る原田さん。
やるべき事、やりたい事はいくらでもあるという思いの強さが何よりも魅力である。
この講演に寄せられた「明日へ一言」がこちらです。
http://sekigaku.jimdo.com/みんなの-明日への一言-ギャラリー/4月12日-原田-泳幸/

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